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異世界山行  作者: 石化
6章 最後の戦いと、それから

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終結

「終わったわ。」

「ああ。」

「あなたはこれからどうするの? 」

「星に帰るさ。」

「⋯⋯やめてって言っても諦めるようなあなたじゃないわよね。なら、出血サービスをしてあげる。ヤヌス、空間を繋げるわよ。」

「貸しだから。」

「いいわよ。それくらい。じゃあ、頼むわ。 結び 広げ 繋ぎ 届け コネクシオ デゥ レスパク」

 ヤーンの前にモニターのような空間が現れた。神闘会で見せた技術の応用だろう。添えはしばらく小さく震えていたが、ジジッと音がして、映像が映し出された。


 そこにいたのは彫りの深い初老の男だった。マンテセとオスカーにとってはなんだか見覚えのある顔だ。だが、彼はもっと若かったはずだ。そこが違和感として残る。


「マンテセさん?!」

 でも、その初老の男はマンテセの顔を見分け、驚きをあらわにした。


「ああ。⋯⋯お前は、タツマか。」

 彼が星の未来を託した男だ。

「はい、そうです。あれから大変でした。しかし何年行ってるんですか。その上全然年をとってないし。」

 双子のパラドックスとか言うやつだ。光に近い速度で進む宇宙船に乗る人は星に残った観測者より年を取るのが遅くなる。ワープ走行でも同じことが起きたのだろう。なんでファンタジーなのに特殊相対性理論の話が出てくるんだ。まあ、気にしない。

「すまなかった。だが、目的は達成した。もう、不安に怯える必要はない。」

「さすがマンテセさん。で、いつごろ戻れるんですか?」

「ああ、そのことなんだが⋯⋯。」

 彼は一旦言葉を切ると、周りを見渡した。神との対決に協力してくれたたくさんの人々が心細そうな表情で彼を見ていた。

 彼らとの思い出が蘇ってくる。彼がこの星で過ごした年月は、確かに彼の中に蓄積されていた。


 向こう側で扉が開いて、何らかの指示を求めていると思しき声がした。それに自信を持って答えているタツマの姿を見て、マンテセは悟った。もう、俺の星に俺はいらないと。タツマのもとで、さらにいい場所になっていくはずだと。


「俺はそちらには戻らない。俺みたいな老害が今更戻っても混乱するだけだろう。こちらで余生を全うするさ。」

「そんな。」

「それがいいわ。この星で宙船を作るのは早すぎる。」

「あんたがそう言うのなら、従うさ。」


「僕としてはマンテセさんに戻ってきて欲しいと思ってるんですが⋯⋯。」

「組織は上が変わっていくことで若さを保つ。一度権力を握った男がもう一度ってのは興ざめだろう。お前も、次の後継者を考えておいたほうがいい。」

「わかりました。」

 そう言いながらもタツマの表情は納得がいっていなそうなふくれっ面だった。こいつはなかなか強情なところがあったよなと懐かしく思うマンテセだった。


「じゃあな。元気でやれよ。」

「マンテセさんも。」

 二人ともあっさりとした別れの言葉を言う。ぶつっと映像と音は途切れて元の空間が戻ってきた。


「ちょっと待て、マンテセ、俺のいないところで面白そうなことしてたよな。」

 離れたところにいたはずのオスカーがやってきて、マンテセをこづく。幸いと言うべきか不幸にもと言うべきか、故郷の星と繋がっていたと言うのには気づいていないようだ。


「いや、なんでもないさ。」

 マンテセはそう言って、笑ってごまかした。彼の笑顔は、張り詰めたものがすっかり消えて、とても素敵だった。





 マンテセとオスカー。二人の異世界人の目的はこれにて達成された。これより事後処理に移る。戦争の影響による死傷者はゼロ。ルネの草原の景観が完膚なきまでに変貌してしまったことと、山の近くが天変地異の嵐となって全然別の地域に被害をもたらしたことを除けば、滅多にない平和な戦いだったと言えるだろう。どちらも守りが素晴らしかった。痛いのは嫌なので防御力に極振りすればいいんだよ。


 マンテセオスカー共にお咎めなし。ヤーンが甘すぎる気がするけれど、彼女は一応時間の枝分岐を切り替える力があるので、やばすぎる事態にならない限り静観するだろう。いざとなれば別の世界線に移ればいいんだから。リーディングシュタイナーかな? 多分もうちょい自在だと思われるが。となるとやっぱりこの人最強すぎるでしょ。まあ、お咎めなしなのは死傷者なしとフジが無事って部分が一番大きい。死ぬ人が出ないように立ち回ったオスカーが一番の功労者だった可能性は高い。

 おい主人公、お前は何やってたんだよ。ただ上空で戦ってただけじゃないか。まあ、お前のキャラじゃないのはわかっているけど、見せ場ゼロってダメじゃない? 舞台が山じゃないから仕方ないか。それはそうだ。全くもって、特化キャラは楽じゃないな。


 山神様たちはフジの無事な姿を見て、一安心して帰っていった。この仲間意識の強さはヤーンのおかげなんだろうか。主神の働きが浮き彫りになった話だった気もする。まあ、ほぼネタキャラみたいになってたから見直しの動きは嬉しいです。



最後の戦い、終了です!

少なかったような多かったような。⋯⋯神闘会は長すぎましたね。ええ。


ついでにこの世界観のままに書いた百合短編を投稿したので、よろしければ見ていってください。僕のマイページから飛べます。

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