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異世界山行  作者: 石化
6章 最後の戦いと、それから

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開戦

 下草の生えていない森だった。手入れが行き届いていて、見通しがいい。


「さて。」

 ヤーンは周りを見回した。

 神様たちがくるりと取り囲んでいる。正直なところこの過剰戦力で負けるとは思えない。あちらの様子が探れなくなっているのは不気味だが、大丈夫だろう。絶対にフジを助け出す。ここにいる全員の思いは一つになっている。


 ヤーンはこの状況を予測していた節があるが、勤めて真剣な表情をしていて、それに気づくものはいない。


「とりあえず、タテとヤクシはみんなに支援をかけて置いてね。万一ということもあるから。」


「了解したわ。」

「わかったよ。」


 二人とも頷いて、祝詞を唱える。タテの力は絶対防御。全員の体に付与する。ヤクシの力は自動復活。こちらも同じく全員に。二人の戦闘力はかなり落ちるが、全体の継戦能力が格段に向上する。神様軍団が、ほぼ全ての攻撃を防ぐ上に、死んでも生き返る。⋯⋯うん。やっぱり無理じゃないかな。マンテセ、今から逃げるべきだと思うよ。



「フジを返して欲しくば、ヤーン一人で、ルネの草原まで来い、か。」

 銀髪鎧少女、キタがこっそり呟いた。突然神様全員に響いて来た謎の男の声が言っていた内容だ。慌ててフジに連絡を取ろうと試みる者もいたが、繋がらない。


 

 いまだに気持ちよく眠っていたヤーンを叩き起こして、山神様たちは兎にも角にもその場所に近づこうと集まっていた。神様たちは仲間意識が強い。人質に取られて黙っている神はいなかった。



「じゃあ、行きましょうか。」

 彼女たちは林の外へ、足を踏み出した。


 今回集った神様は神闘会よりもさらに数多い。もはや一個の軍団と称しても違和感が無い。神様の軍団⋯⋯。勝てる気がしない。やっぱり今から謝ったほうがいいんじゃないかな。マンテセくん。


 神の力でもルネの草原部分の様子はわからなかった。なんらかの防御が施されているらしい。神に喧嘩を売ろうというやつらのことだ、流石に抜かりはない。

 一人で来いとは言われていたが、罠であることは明白だ。無視してまっすぐに奪還しにいくべきだろう。示し合わせずとも神様の思惑は一致していた。⋯⋯おそらく神闘会のせいで思考が戦いの方にしか向いていないのだろう。ヤーンがここまで考えて神闘会を主催していたのだとしたら恐ろしいような気もする。全て彼女の掌の上。⋯⋯ありえないわけでは無い。なんてったって主神だから。主神やべえ。




  さて、神様たちの進軍が始まる。堂々たるものだ。先程までの見られたら処分するという慎重な行動は影を潜めている。トルネさんのことをもっと考えてあげて。流石にかわいそう。


 

  転移は使わない。あれも一応力を消費してしまうものだ。それに、こんな大人数が一斉に転移を使うと混線が発生してしまう。同じ座標に転移してしまうと、フュージョン的なことになってしまう可能性もある。このようにして合体してしまった山も珍しく無いとか。それでいいのか個人の人格は。というか、あれだ。全員でフージョンして、一個の巨大な山神になれば誰にでも勝てるのでは無いだろうか。ワンチャンあるな。対抗するのは時間停止と冥界と神殺しと、心を操る人か。⋯⋯いや、やっぱり無理そうだな。山神様以外も意味がわからないくらい強くないですか? いつの間にそんなインフレが起こってしまったんだろうか。そして地の文と言う名の語り手の印象で物事を語っていいんだろうか。これほぼ一人称なのでは。いや、気のせいだ。そんなことはない。ありえない。



 

 待ち構えるはマンテセ率いる人間たち。地下組織並びに魔法協会連合である。


  オスカーがことば巧みに誑かしたフジが全員に彼女の力を具現化した武器を与えている。分け御霊は力が減るものという常識はあるけれど、フジはもともと規格外な力を持っているのだ。全てが通常の炎神レベルの武器となっている。⋯⋯いやあ、オスカー凄いなあ。まあ、そのくらいしないと無理だとは思う。よく頑張った。



 

  神様軍の進む先に大穴が開いた。落とし穴だ。⋯⋯まあ、罠を張っていないわけはないよね。知ってた。だが、この程度で神様の進軍を止められるわけはない。


  落ちた神は転移を行い穴の先へ、進軍の勢いが落ち着いたところで火山の山神が埋め立てた。強い。さすが神様。


  だが、効果がなかったわけじゃない。とっさの転移で先程までの陣形が崩れている。


  そこに、喚声を上げたマンテセ軍が襲いかかった。マンテセの扇動スキルにより、この戦いが正しいことだと信じている彼らは容赦なぞしない。剣が火を吹き、杖も火を吹き、槍も火を吹く。⋯⋯だめだ、全て赤フジから派生した武器だこれ。代わり映えがしない。ただ炎を出すだけだ。いや、十分すごいけどね。殺傷力は半端ない。だが、タテがあらかじめ張っていた盾が全てを弾いていく。やっぱり最強の守護の神だ。三名山の一人なだけはある。



  自分が傷つかないことに気づいた神様たちは防御を捨てて攻撃に転じた。炎に氷、さらには岩雪崩が人間たちを襲う。災害が意思を持っているかのように、荒れ狂う。





  しゅん。神様たちの攻撃は人体に達する前、何もない空間で打ち消された。届いていない。


  その効果の元はあの指輪である。神防の力を持つ、オスカーの虎の子。それを彼はマンテセ軍全員に配っていた。


 さあ、どちらの攻撃も派手に尽きるが、何一つ互いに影響を及ぼさない。そんなグダグダ極まる最終決戦の開演だ。



⋯⋯これ勝負つかないのでは?(不安)

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