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異世界山行  作者: 石化
5章:冥界と現世

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ドール

 

 広い広い大広間。天井も高く、まるで宮殿のようだ。装飾の目立つ円柱が大きく天へ聳え立ち、左右に並んでいる。空気は淀み、地の底のようにわだかまる。



 明かりは最小限で、どうしても暗いと言う印象が先行してしまう。


 なるほど。冥神の居城と言うのは伊達ではないようだ。体の芯から冷えていくような錯覚に陥ってくる。



 重々しい足音が聞こえて来た。

 扉が開く。両開きに、ゆっくりと。


 中から、女性が歩んで来た。黒の衣装は彼女の身を包み、肌を隠す。


 そのまま大きな玉座まで、お付きの女官に支えられて歩を進める彼女。


 椅子に座り、こちらを睥睨する。見下ろされると言う圧力はこの世界の中で初めて味わう支配者のものだった。これは確かに冥界の神だ。僕は頭を下げながら密かに納得した。


「さて、シロ並びに、その他四人。ようこそわしの館に。」

 その姿にふさわしい。重々しい低い声だった。


 僕らはその威厳に圧倒されるように、順次自己紹介をする。さすがは為政者といったところだろうか。幾たびか言葉を咀嚼したのちには、まるで十年来の知己のように名を自由自在に使い始めた。⋯⋯ 彼女が為政者なのかと言うのは、冥界の形態にもよる気がするけれど。それを質問していいのかは悩む。

 気軽に聞ける雰囲気ではない。


「ふむ。そこな人間。剣と言ったか、それを答えるのにはやぶさかではない。お前がわしの容姿に会えて触れぬ努力をしておったのは、嬉しいしの。」

 爺言葉がシロと被っていると言うのはいいとして、そこを指摘されるか。確かに僕は彼女の容姿について意識的に直接的な表現を避けていた。


「わしは太っておる。これは、厳然たる事実じゃ。」

 言いにくいこと、しかも自分のことであるのに、ドールはあっさりと言い捨てた。


「良い良い。気遣ってくれたのはさっきも言ったが嬉しいことじゃった。」

 ドールは優しげに、こちらを見下ろす。


 黒の衣装が身を包むと言うのも、重い足音と言うのも、つまりはそう言うことだ。彼女にドレスは似合わないだろうし、軽やかに歩くこともできないだろう。神様は皆人間離れした美貌を持つと言う法則に彼女は真っ向から反した存在だった。


 そう。言うなればビッグマムのような堂々たる体躯の持ち主。それが、冥神ドールであった。


「⋯⋯ 改めて言われると腹が立って来たのじゃが。」

 理不尽な怒りを込めた目線が僕を射抜く。理不尽だ。許可が出たと思ったから、描写に乗り出したと言うのに。

「そこは、乙女心というやつを察してじゃな。」

 ⋯⋯ まあ、悪く言われるのを面白く思う人などいるわけもないか。僕の配慮が足りなかったとするべきだろう。


「ごめんなさい。」

 素直に口に出して謝ることで解決することもたくさんある。


「そうじゃの。少なくともわしは許そう。」

 その笑みは、不細工な顔の造作を超越して綺麗だった。



 その後、ドールとオソレは簡単に冥界の解説をしてくれた。


 なんでも、冥界と言うのは、死者の魂の行き場らしい。この世で死んだ魂たちが吸い込まれていくところ。地の底に存在するとも別の空間に存在するとも明言はされなかったが、地上とは別のところであると言うのは確からしい。


 基本的には冥界のドールの館の近くに居住する魂たちだが、たまに無頼を気取る者がいて、別の場所を拠点としようと離れていく。



「わしの館から離れると魂が変質して生者への憎しみがつのるようになり、転生させることもできなくなってしまうんじゃがの。」

 少し悲しそうな表情を見せるドール。


 僕らが死んだら、絶対にドールの館のそばをはなれないようにしようと心に誓った。



「何はともあれ、ここはわしの現世の館じゃ。ゆるりと逗留なせ。」

 結局歓迎はしてくれるみたいで、僕らは一室に通された。ベッドは5つ。⋯⋯ 一人別部屋だったらそれはそれでさみしいけれど、僕が男だと言うのはもうちょっと主張しておいたほうがいいんじゃないかと不安になってくる。


「文句を言うでない。この複雑な人間関係において、誰と誰をペアにするかは大きな問題じゃ。わしだけ仲間外れは許さぬからの。」

 このようにめんどくさいシロの言葉もあって、結局どうしようもないから、全員別の部屋か、全員同室かの二択を強いられることが多い。




 何はともあれ、一室で泊まることとなったのである。五人一気に寝れる5つのベッドがあるほどの大きな部屋があるとはさすがは神の居城だ。⋯⋯まあ、あの選択を強いられることがなくてよかったと言うべきだろうか。




 山道を登りつめての眠りだ。深くなるのは仕方のないこと。ぐっすりだ。


 ただ一人を除いて。


石「割とあとがきの方で匂わせていたけど、このキャラ(表)なのを予想できた人はいるのかな。」

アウラ「いや、この前言ってたじゃない。描写してたじゃない。」

石「いや、湯婆婆を知らなかった人にはわからないはず。」

アウラ「千と千尋見てない人なら仕方ないね。」

石「ところで君の知識にあるのはなんで?」

アウラ「あとがき空間だからと言うのは建前でほんとのところは不朽の名作だからってところですね。」

石「めちゃくちゃ伏線っぽい? あと、デスマス口調なのか普通の口調なのかはっきりして。」

アウラ「不定期に変わります。」

石「めんどくさいな。」

アウラ「多分もともとは普通の口調なんだけど、憑依してるのが丁寧だから、それに引きずられてるんだと思われ。」

石「まー、君がエルフの間で神として祀られてるのを合わせると、色々わかるね。」

アウラ「ララが言ってましたもんね。」

石「なんかめちゃくちゃ伏線を回収してる気がするけど、あくまであとがきはあとがきだから。気にしなくてもいいよ、うん。」

アウラ「先輩、人気出るんでしょうか?」

石「あの子は不確定だからねえ。まだよくわからないし。」

アウラ「出番もあんまりないし。」

石「今の所一番出番ないのは君なんだけど。」

アウラ「私は一番美味しいところを持って行くからいいんです。」




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