表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界山行  作者: 石化
5章:冥界と現世

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

203/251

暗い山

戻ります。

 

 その山はほの暗かった。昼日中だというのに、岩肌の黒が明かりを飲み込んでいるかのようだった。周囲には少しばかりの街。活気はなくまさにゴーストタウンといったような有様。昨日泊まった限りにおいては雰囲気がそう言うものってだけで、普通に人が生活しているみたいだったけれど。めちゃくちゃ好奇心旺盛な娘さんがいてこちらの恋愛事情を根掘り葉掘り聞いてきたのは軽くトラウマだ。シロがヤーンと気が合いそうじゃのと言う感想を漏らしていた。


 それはそれ。何はともあれ山登りだ。



 左右に大きく伸ばした山体は、ホットケーキのような扁平な形。ハワイのマウナロアみたいにバカみたいに大きいので、かなり高い山ではあるだろうが、いかんせん形が平すぎる。その大きさがわかりづらい。まあ、登るけどね。今まで見たことのない形だし。


「わしからは何も言わぬがここに登るのならそれ相応の覚悟をしておれとだけ言っておくわい。」


 その山をじっくりと眺めて、シロは大きなため息をつきながらそう言った。行くのは気が進まないが、行くと言うなら仕方がないとでもいうような表情だ。

 シロの意味深な言葉に不安を覚えつつも、僕らはその山に登り始めた。



 緩やかな道のりが続く。色々と特異な形の岩があったりもするが、基本的な道のりはそこまで障害らしい障害もない。こんな山は久しぶりだ。気を抜きながらのんびりと進んだ。サクラもイチフサも、この頃はめっきり山登りにも慣れ、危うげがなくなった。その成長に嬉しくなる。気分はすっかりベテラン登山家だ。ここでベテラン冒険者と言えないところに、僕の僕たる所以がありそう。


 道のりが穏やかなため、俄然おしゃべりも進む。雨水が削ったらしい谷の横を登りながら、この場所についてシロから情報を引き出そうと頑張ってみる。どう考えても何か知ってるよな。しかし頑固なことでは定評があるシロである。何も漏らさないどころか徐々に機嫌が悪くなってきたので諦めた。


 上は見えているのになかなかたどりつかない。これが大きな山の特権だ。いや、小さくてもそうだけれども。どんなに近く見えても、いや近くに見えるほど歩く距離としては遠くに感じるものなのだ。感じ方の問題な気もする。むしろ視界が開けていない方が心理的な負担は小さいのかもしれない。歩いても歩いても近づかないと言うのはなかなか心にくるものがあるからな。


 というわけで、道の途中で日が傾きはじめた。かなりの平らな土地があったため、家を作り出すことに支障はなかった。途中にある鞍部を宿り場とする。


 いつものルーティンに沿って食らい眠った。描写が少なくなるのは仕方ないね。日常だからね。



 翌朝。常として空が白み始める前に起き出した僕らは昨日作り置きしておいた飯を食べた。ゆっくりしてもよかったんだけど、この山の不気味さが僕らを駆り立てた。家をしまい、出発する。テント泊の時ほどは早くないけど、それでも十二分に早いと言える出発だ。



 昨日とほとんど代わり映えのしない景色が続く。変化といえば頂上に近づくにつれ少しばかり傾斜が急になったかな? という程度だ。後ろを振り向けば陰気な街が広がる。石によって構成された見てくれだけは西洋風の街だ。多分なかなか珍しいんじゃないだろうか。ずっと山ばっかり行ってたからこの世界の標準都市がどんなものかまったくわからないけど。ユウキの指輪のために行った都市だけをみて一般的な都市と断言することはやらない方がいいだろう。わずかなサンプルからではこの星の建築文化に対するきちんとした推論など述べられようはずもない。

  ⋯⋯山に対する推論だったら言えるけれど。ところどころ誤差はあるものの、概ね地球の同名の山よりも高く、大きくなっているようだ。地球の大人シロの成り立ちはよくわからないけれど、あちらは比較的近くの変動が大きかったからな。経験を積むのが遅れたんだろう。それにひきかえ、有史以前、どうも、生物誕生以前から存在しているらしきこちらの神様たちは、ずっとその力で自らの山を守ってきた。それは、大きくなっていくのも納得するしかあるまい。⋯⋯ 身近なことだと結構自信を持って言えるな。なんで現在の都市環境より有史以前の神話に詳しくなったのかについては考えたら負けだ。


 そんなこんなで頂上直下。なんか山行の描写が少ないのは、この頃作者が山に行けてないからではない。ないったらない。あ〜、行きたいな〜山。違う違う。これは別の石の頭の中の考えだ。変な思考に飲まれそうな己を叱咤し呼び戻す。




 頂上にそれはあった。全てを飲み込まんとする深淵のごとき門だ。装飾を廃した重厚な造り。それでいて異様な存在感を放っている。

「やはりのう。」

 シロが小さく呟いた気がした。不気味さをかつてないほどに感じて他三人と顔を見合わせるも選択肢は一つしかない。この中に入る、だ。ここまで登ってくるのに優に二日かかったんだぞ。こんな意味ありげなもの見せられておめおめ引き下がれるかってんだ。


「そう言うと思ったわい。まあ、お主らの目で確かめるんじゃの。」


 シロの言い方は突き放したような響きを帯びていた。


統計的に見て12時あたりの更新が一番良さそう何ですが、まあ、更新したくなったのでここら辺でいいでしょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ