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異世界山行  作者: 石化
5章:冥界と現世

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200/251

ララとロロ2

 そうして私たちは狩りを繰り返してある街の前にたどり着いた。圧迫感のある風化した建物。往時は賑わっていたであろう通り。⋯⋯ 。

「廃墟ね。」

「うん。」

 泣きたくなった。



 それでも雨露をしのぐ場所としては野宿よりはるかにマシである。もともと定食屋だったらしい食べ物の絵が描かれた看板を掲げる店のドアをこじ開け休むことにした。

「⋯⋯ 姉さん、食べ物への未練はかっこ悪いわよ。」

 わかってらい!

「少しは保存食糧が残ってるかと思ったの。」

「なるほど。」

 ロロは感心したようだった。ふふーん。もっとお姉ちゃんを尊敬してくれてもいいのよ?


「でも、どうかしらね」

 あたりを見回すロロに習って私も観察してみる。


 埃の積もったその内装は噂に聞くレストランと寸分たがわず、開いていたらどんなに美味しい食事が食べられただろうと思うと悔やんでも悔やみきれない。


 カウンターの裏へ回って、おそらく調理室であっただろう場所を念入りに調べてみる。香辛料とかはないだろうけれど、他に何かあっていてもおかしくないはず。


 何一つ見つからなかった。

「そんな⋯⋯ 」

「仕方ないわ姉さん。それにあったとしてもそんなに美味しいものじゃないでしょう。諦めが肝心よ。」

 気落ちする私にロロは追い打ちをかける。


「美味しい料理⋯⋯ 。」

「気持ちはわかるけどね。⋯⋯ 私までお腹空いてきたわ。」

 ロロがお腹を抑えて切なそうな顔をした。


 妹に辛い思いをさせるなんてお姉ちゃん失格だ。私は思考を切り替えた。


「行こう。ロロ。」

 私は妹の手を取った。まだお腹は空いてるけど、そんなことはおくびにも出さない。なんてったって私は頼れるお姉ちゃんなんだから。




 街を出て歩き始めて結構経った時、私は美味しそうな匂いを嗅いだ。ロロも気づいたようでしきりにあたりを見渡す。



 どうもその匂いは山の上の方から漂って来ているようだ。

「どう思うロロ?」

 こういうことの判断は妹の方がちゃんとできる。適材適所ってやつね。


「⋯⋯よくわからない。でも、そうね。行ってみるくらいはやってもいいと思う。だって、すっごく美味しそうな匂いだもん。」

 なんか最後のロロ、私みたいだった。なんてったって姉妹だもん。似てるよね。





 樹林の中を抜けて、岩石地帯も抜けていく。どんどん美味しそうな匂いは強くなってきて、私たちのお腹も減っていく。これで、なにも食べられなかったら、私、死んじゃいそうだ。なんでもするから食べさせてほしい。ん? 今なんでもするって⋯⋯。



 お腹が空きすぎて、思考が変になってきたみたいだ。匂いの元にはまだ着かないのかな。待ちきれない。






 たどり着いたのは山の上には不釣り合いな家だった。蔦の絡まった大きな建物で、豪華な建築様式で建てられたのがすぐにわかる。匂いは、その中から漂っているようだった。



「待って、姉さん。」

 私は躊躇なく扉を開けたかったのだけど、ロロに止められた。

「こんなところにこんな家があるなんて、不自然よ。何かの罠という可能性が高いわ。」


 妹がいう言葉はもっともだった。怪しいのは確かだ。山の上に家が立っているなんて聞いたことないし。


「どうしよう。」

 私は弱った。まだ美味しそうな匂いはするし、お腹は空いたままだけど、危ないかもしれないなら話は別だ。さすがに命には変えられない。



 でも逡巡の果てに自分の好奇心に勝てなかった。こんなところにある館だ。もしかしたら隠れた名店みたいなものかもしれない。フラフラと私はドアノブを回した。



 キュルっと音を立てて内側に扉を開く。光を抑えた部屋で、待ち構えてた風な二人が立っていた。


「⋯⋯いらっしゃい。」

「そんなに迷わなくてもよかったのに。ご飯でしょ。僕のご飯は絶品だよ。」


 左に立っていて、最初に口を開いた少女は髪を上の方で二つ結んで、そのすぐ横からうさぎの耳が突き出している。緑がかった白のワンピースを着て不思議な印象だった。獣付きって言うんだっけ。


 右の女の子は黒白のヒラヒラした洋服でとっても可愛い。私もあんな洋服着てみたいなあ。こっちの子は普通の黒髪で、左の子のような特徴的なところはなさそうだ。



 テーブルの上に湯気がたっていて、スープの美味しそうな匂いが漂っていた。私たちは顔を見合わせた。この二人がどう言う人なのかわからない。


 でも、まあいいや。考えるのもめんどくさいし、ここに美味しそうな料理があるって方が大事だもん。


「じゃあ、遠慮しないでいただきます。」


「えっ、ちょっと姉さん。」

 ロロは戸惑った風に私を制止しようとしたけど、私は止まらなかった。勘だけど、この二人は信用してもいいんじゃないかなって思うんだ。


「⋯⋯姉さんが言うなら。」

 ロロは渋々ながら私に続いた。お姉ちゃんを信じなさい。


 テーブルの上の食事は豪勢で、見たことがないほどだった。私はもちろん、ロロも途中からは夢中になって食べていた。





 その様子をなぜだか二人は満足そうに見ていたけど、その理由を気にすることもなく、私は料理の味に没頭した。











久しぶりの登場です。しかしまあ、神様しか出てこないですね。

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