ララとロロ
私の名前はララ。誇り高いエルフ族だ。⋯⋯ 誇り高いってどんな風な人を言うんだろう。まあ、それはいいんだ。今日は私たちの出立の日。アンナさんが戻ってきて、かなりの時が経った。私たちも成長して、ついに、世界見聞の旅に出ることが可能になったのだ。やったー! 毎日頑張って魔法訓練と地図読み訓練やってたおかげだ。座学のことは聞かないでくれると嬉しい。それに私にはロロがいるから。
私の双子の妹のロロはちょっと魔法の才能は私より劣ってたけど、それを補って余りある頭脳の持ち主だ。村一番の天才の呼び名も高い。前、ロロの勉強していた本をちょっと覗いてみたけど、難しすぎてないを言っているのかさっぱりわからなかった。多分前提知識がたっぷり必要なんだと思う。でも、ロロはその本をまるで童話か何かのようにすいっと読んでしまう。私とは頭の出来が違うんだろう。その分私が守ってあげるんだから。拳を握りしめ、決意を新たにする。
「ララ、ロロ。外の世界は危険がいっぱいです。でも、あなたたちなら大丈夫。私たちは信じてます。あなたたちの無事の帰りを。」
あれから随分と族長らしくなったアンナさんが椅子から立って、私たちの手を握る。あの地震の日からしばらくたって、アンナさんは正式に族長を継いだ。元族長は随分と心配そうだったけど、アンナさんはきちんと族長としての責務を果たしていた。⋯⋯ すんなりとはいってないようだったけど。でも彼女の熱意はみんなわかっていて、協力して彼女を盛り立てて村はきちんと回っている。⋯⋯ 私たちに外の世界のことを教えるとき自分も行きたそうにムズムズしていたのは気づいてないので心配しないでね。
「はい!」
私は元気一杯に。
「必ず戻ります。」
ロロは冷静にアンナさんの言葉に答えた。
「本当は私も行きたいのですけど⋯⋯ 」
「大丈夫です族長。みんな知ってます。」
「えっ、ララでさえも知っていたですって。」
アンナさんはショックを受けたようだったが、私の方がショックだ。何がララでさえよ。私だってわかるわ。そんなこと。
そのもはや定番と化した、でもこれで最後かと思うと寂しい掛け合いを終えて、私たちは外の世界へと旅立った。
里を抜けて一気に街道まで駆け抜け降りる。危険もあるけど、道がはっきりしている街道の方がどう考えても歩きやすいし、迷わない。エルフだとバレる危険を冒しても歩く価値が街道にはある。
私たちは頭にフードをかぶり、髪にもちょっとした小細工を施して正体を巧妙に隠した。ロロがフード取られても大丈夫な魔法をと開発してくれた偽装魔法。多量の髪で耳を隠し、その不自然さを減じるもの。地味っていうなし。里のみんなから人間と間違え恐れられたほどには完璧な魔法だ。⋯⋯ 待って。里のみんなって人間見たことある人ほとんどいないよね。ダメな気がしてきた。フード取られないようにしよう。
運良く牛車が通りかかることもなく、私たちの旅は続いた。足はどちらにしても遅いけど牛車は少なくとも疲れないから乗りたかったんだけどな。知識では知ってるけど見たことないし。その意味でも乗ってみたかった。
毎日狩りと、野宿の繰り返し。どうせなんだからいつもと違うご飯が食べたい。街に着いたら、腹一杯食べるんだ。
そんなことをロロに話したら、呆れられた。
「あのね。私たちお金持ってないのよ。それに支配的な国もないから、どの都市でもそれぞれの通貨が使われてて、これさえあればどこでも通じるなんてことあるわけないの。両替商には普通にぼったくられるでしょうしね。それでもアンナさんが昔のお金を持って帰っていればまだやりようもあったのにあの人ったら無一文で帰ってくるんだもん。ばっかじゃないの。」
「ロロ落ち着いて。」
興奮して唸るロロをなんとかなだめた。成長して女らしくなったロロはかなりの毒舌になってしまった。女らしくなったのはいいんだけど。
「ありがとう姉さん。もう大丈夫。あんな人だけど尊敬はしてるから。」
「良かった〜。」
「で、食事処の話だけど、たぶん物々交換でお金を手に入れるしかないんじゃないかしら。狩った獲物をその街の通貨と交換してもらうの。」
「つまり?」
私は先を促した。ロロは私をしょうがないなあ姉さんはという目で見たけど、話を続けた。
「このままの生活を続けていくしかないってこと。まだ、地図にある街は先だし。」
「そんなー。」
「あきらめなさい。時にはそれも重要よ。」
私は渋々頷いた。
この前の剣はオスカーのとこの通貨を普通に使ってましたが、あれは、彼のせいであの街の流通通貨の価値が高騰し、どこでも使われるようになったからです。ララとロロはそのことは知りません。エルフにとっては最新の情報ですらアンナさんが帰ってきてからのことですからね。仕方ない。剣たちも知りませんでしたが、さすがは主人公補正。いい感じに働いてますね。




