表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界山行  作者: 石化
5章:冥界と現世

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

192/251

感想と励ましはありがたすぎるやつなので更新します。

 


 僕は、最初のあの塔の街以外で、人の集まった都市に行ったことはない。せいぜい村か、家がポツポツ立ち並ぶあたりの山側をすり抜けて通って行ったくらいだ。




  ユウキの思いに応えたいと思って、結婚を申し込んだ。僕はここで生きて行くと決めたから。と同時に分かちがたいものとして、結婚指輪のことを思い浮かべた。大人がどうしてあんなただの装飾品を送ろうとするのかわからなかったけど、いざ当事者となってみると、贈りたい。自分の気持ちを彼女にものとして届けたい。論理的とは言えない感情が僕の心に芽生えて、止まらない。



 幸いオスカーに貰っているお金は結構ある。使わないから貯まる一方だし。貨幣体系がオスカーのいたところと違わなければ楽に買えるだろう。


 ただ、街に入ったことがあんまりないので指輪を売っている店があるかがよくわからない。最初の街には多分なかったと思う。あそこより大きな街じゃないと望み薄だ。


  後は冶金技術の発達の度合いとか指輪を贈る文化は存在するのかとか、不安要素はかなりある。黙ってたほうがよかったかもな。⋯⋯ でも、どうせ考えるだけで読み取られるんだし、ユウキのためにも先に宣言しておいたのはよかったはずだ。間違いない。




 まあ、とりあえず街に入ってから考えよう。僕は問題を先送りした。





  ホダカが言っていた通り、川を下っていくと徐々に人の生活圏に入ってきた。農村を過ぎたあたりからちゃんと道も引かれて、賑やかになっていく。


  僕らの格好が珍妙なものなので、チラチラと見られている気がする。オスカーが開発した服はまだこの辺りには流通していないようだ。


 

  だが、その視線も先に行くに従って減って来た。僕らじゃなくても奇妙な格好をした人が増えて来たからだ。都会が流行の最先端を行くのはどの世界でも変わらないのだろう。



  街の周りを壁が囲んでいて、城門から出入りする形になっていたらどうしよう。身分証明書なんて持ってないぞと危惧してたけれど、杞憂に終わったようだ。検問すらなくて、まっすぐ中心部らしきところまで道は続いている。




  城壁の存在は盗賊又は敵国の脅威によって説明できると言われているから、ここら辺は比較的安全なようだ。⋯⋯ 世界情勢なんて全然わからないしなんならここがなんて場所なのかもわからないと言う情弱っぷりだけど、山にしか行ってない時点で仕方のない話ではある。僕は悪くないはず。⋯⋯ いや、僕しか悪くないな。でも、大丈夫だ。自分たちに不利益が降りかからなければ問題はない。どうせあれだ。酒場とかで情報蒐集すれば見えてくるものがあるだろう。人間は怖いから聞き耳をたてるだけでなんとかなって欲しい。



「いつのまにか人間恐怖症を発症しておるとは、わしら相手なら平気じゃろうに。」

「シロたちはこっちの考えを読んで動いてくれるからやりやすいんだよ。知り合いでもなんでもないやつがどう振る舞うかなんて僕にわかるわけないじゃないか。」

「根が深そうじゃの。どうにかこうにか経験を積んで欲しいんじゃが。」

「頑張ります。」


 とりあえず、当たって砕ければいいと思うよ。うん。




 都市の周りはスラム街ということもなく、乱雑に建物が並んでいる。たまたまこの方角になかったのか、それともここはそれほど豊かな都市なのか。二つに一つだ。後者であることを願おう。治安が段違いだからな。まあ、シロが全部収納しているから、スリに合う危険はないと断言してもいいんだけど。



 徐々に建物が高くなっていく。中心部に超高層ビルが立ち並んでいるというほどではないが、五階建てくらいの建物が見えている。これなら、目的のものもありそうだ。




 とはいえ、こんな大都会だ。あてもなく探し回っても、アクセサリーショップにいき当たる可能性は低いだろう。そろそろ太陽の色が変わって来たし、宿を取るべきだろう。




 呼び込みしている店があるのならわかりやすかったが、そんな積極的な行動をする人はいないみたいで、どこに何があるかもよくわからない。もっと秩序立っててもいいと思うのだが、乱雑が極まってて、初見の僕には何が何だかわからない。


「しょうがないのう。まずは宿を見つけるんじゃろ。」

「できるの? 」

 一筋の光が差し込んで来た。


「わしを誰だと思っておる。神様にできぬことなどないわい。」

 自慢げに胸を張るシロ。何個か反例が頭をよぎったが、気のせいだと思うことにした。頼りになるのは事実だし。




 シロは片っ端から心の声を拾って行った。人が多いから、結構きつそうだった。イチフサとサクラも協力したけど、それでも難航した。都会は人が多すぎる。今俺はこの世界に来てすれ違った人間の数の記録を更新しまくったいるぞ。⋯⋯ なんとか俺も通行人に聞きに行きたいけれど、ここを歩いている人たちがここら辺の地理に精通しているのかと言われるとわからない。旅してここまで来たみたいな人もたくさんいるし、みんななんらかの目的を持って早足で歩いて行くので、呼び止めるのが申し訳なくなってくる。


 結局シロが宿の人の声を拾って、ようやく落ち着けた。神様チートを用いてもこのざまだ。都会怖い。やることやったら早く山に戻ろう。僕は固く決意した。


 







街に行くと剣、無能だな⋯⋯。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ