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異世界山行  作者: 石化
5章:冥界と現世

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勇者と復讐者

⋯⋯改稿が激しすぎてブクマが減ると言うこの現象。まあ、よく考えたら割と普通ですね。読んでる途中で色々変わったら萎えます。そう言う方は、もう一度前から読んで見たりしてくれてもいいんですよ。(厚かましさの化身)

 

 全ての人間にはそれぞれの旅路がある。別世界からこの世界に来たような、常人とは異なる運命を持つものは、それに導かれるように、旅を続けざるおえない。


 風が吹く。乾いた空気を伴って、道ゆく人に冷気を送り込んだ。車二台がすれ違える程度の少し広い道だ。目をこらすと建物が見える。この先に街があるらしい。


「今日はこの街にする。」

 勇者は同乗者に、そう声をかける。


「わかったわ。」

 頷いた彼女は、妖精の姿ではない。剣との一件以来、ヤヌスは本体を勇者の側に置くことが多くなった。今日も白いトーガを風に遊ばせ、その上にマントを羽織って勇者の席の後ろにくっついて座っている。本拠地の方では、妖精ヤヌスが対応に当たっているが、そう言うこともあるのだろうと言うことで、信者たちは納得している。




 検問を抜けて二人が入って行ったのは、そこそこ栄えた宿場町だった。明確な特産品はないが、交通の要衝なので発達した街である。城壁もなくてひらけていて、街の外からでもその賑わいがわかるほどだ。



 荷馬車に積んだ荷物をとりあえず売りさばいた勇者は、宿を決めた。ヤヌスが妖精だった頃の名残で、わざわざ二つぶんの部屋をとることはしない。半ば同衾している。最初勇者は床で寝ようとしたのだが、ヤヌスがそれを許すはずもなく、色々押し問答があった末、二人とも同じベッドで寝ることとなった。口には出さないが、二人とも好き合っているのは確かなので、一線を超えるのも時間の問題だと思われる。神と人との関係のモデルケースになると思うので頑張って欲しい。





  二人の泊まる宿場町で一人の男が待ち合わせをしていた。どこにでもいるような平凡な痩せぎすの商人のような格好をした男だ。それ自体は全然不思議でもなんでもないのだが、この男の場合、辿って来た道が問題だ。勇者の行く道のあとをつけるように、全く同じルートを辿っている。勇者は少々鈍いところがあるため、まだ気づいてはいないが、ヤヌスはそろそろ怪しみ始めている。


 だが、男の任務もそろそろ終わりだ。



 かつかつと機敏な足取りで、もう一人男が来る。狩猟に用いられるハウンチング帽を目深に被って、目立つ紫髮を隠している。


 二人は二言三言ふたことみこと言葉を交わして別れた。人通りの少ない道で、見ていても、ただの世間話程度としか思えなかっただろう。



 商人風の男と別れた、紫髮の男は、口の端を釣り上げた。ようやく裏が取れたのだ。ヤヌスの本拠地での噂話を集めることで見えて来たそれは、明らかにこの星の神が無防備に出歩いていることを示すものだった。


 彼の目的のために不可欠だったのは情報蒐集だ。だが、一人を除いて神の所在は確認できなかった。その一人の情報も要領を得ないもので、別空間に鎮座しているのか現実世界に体を持っているのかすらよくわからない。ヤヌスの神殿の警備は厳しく、忍び込むこともままならない。星の運行を操作している存在の話など、とんと出てこない。


 八方塞がりだった。だが、密偵の一人が気になる情報を持って来た。唯一存在する神殿の神と同じ名前の小さな生き物が勇者と呼ばれる存在と共に旅をしていると。マンテセにはすぐにピンと来た。彼の世界でもあの底意地の悪い神は、勇者と呼ばれる存在を作り出して、争いを広げ、面白がっていた。それと同じだろう。つまり、その二人に接触すれば、神と交信ができるはずだ。組織を大きくする傍ら、マンテセはその二人の所在を絶えず把握していた。




 彼らの移動は不規則で、すぐに向かっても、かなりの大回りを強いられただろう。マンテセは焦ることなく地盤固めをし、アジトを作って、タイミングを見計らった。おおよその準備を整えて、満を持しての接触だ。





 尾行していた男からの情報ですでに二人の泊まる場所はわかっている。マンテセはためらうことなくそこに足を向けた。神を相手取るのならマンテセはどこまでも強くなれると自負している。



 従業員に鼻薬程度に金を握らせて、マンテセは宿に入り込んだ。


 現役だった頃からかなりの時が経ったというのに、その動きは微塵も衰えていない。俊敏に二階に上がり、ドアをノックする。蹴破るのはリスクが大きい。神が旅をしている目的も不明なのに、そのようなリスクは置かせなかった。


「はい。」

 男の声がして、扉が開く。警戒心の薄い勇者だ。まあ、荒事が時々起こるにせよ、そこまで人心の荒廃しているしている世界ではない。勇者が特別抜けているわけではないはずだ。



 だが、開けたのは失敗だったと言わざるおえない。体を素早く侵入させたマンテセは、奥にいたヤヌスのいる場所へあっという間に距離を詰め、銃を突きつけた。


「なに? 」

 凶器を浮きつけられながらヤヌスは一歩も引かない。神様にふさわしいビリビリとしたプレッシャーを放っていた。だが、それで気押されるほどマンテセはやわではない。


「聞きたいことがある。」


「オッケー。いいわ。」

 ヤヌスはマンテセの言葉に頷いた。


 勇者は最初の反応こそ遅れたが、すぐに腰のクリスタルを抜き、マンテセを攻撃しようとした。


「動かないで、勇者。」

 ヤヌスはそれを止める。神である彼女にとっても、マンテセの放つ雰囲気は油断を許さないものだった。下手な動きはできない。


「それで、何が聞きたいの。」

 こめかみに銃を当てられながら、ヤヌスは平然と問うた。


「この星の話だ。この星の宇宙運行を遅らせている奴がいる。それは、あんたか。」

 勇者の剣が自分を狙っているのを理解してなお、マンテセも落ち着いていた。


「⋯⋯ なるほど、ヤーンのお客さんか。全くあいつは。せっかく主神の座を私から持って行って置いて迷惑をかけるなんて。信じられない。」

 ヤヌスはため息をはいた。


「ヤヌス。そのヤーンとかいう奴はどこにいる。」


「知らないわ。随分昔に喧嘩別れをしてから一度も連絡を取っていないもの。」


「お前を殺せば、現れるか。」

「神様を殺そうだなんて、随分と自信があるのね。」


 今にも飛び出さんばかりの勇者を目で抑えて、ヤヌスは軽くからかう。


「御託はいい。どうなんだ。」


「無理でしょうね。ヤーンは自分の気に入らないところには決して行かない。私の仇うちなんてするほど合理性に欠けてはいないわ。」


「なら。」



「私があなたに言えるのはもう一人の神を探せってこと。彼女なら、ヤーンと連絡を取れるでしょう。ドール山に行きなさい。そこに、冥神ドールがいるわ。今は⋯⋯ 冥界の方にいるのかしら? 私に頼むのは筋違いよ。」


「わかった。だが、お前を生かしておく理由はないぞ。」


「まあ、そうなるわよね。でも、準備はできたわ。」


 ぽんと音がして、ヤヌスの体は小さくなる。妖精モードのヤヌスはマンテセの突きつけた銃口を外れた位置に体を縮めて飛んでいた。


 一瞬の動揺。マンテセの動きが止まった。


「うおおおー!」

 勇者はその隙を見逃さない。切れ味抜群のその剣をマンテセ目掛けて振り下ろした。



 紫髪の復讐者は間一髪でそれを躱し、窓を背にする。相対するのは、ヤヌスを後ろにかばって我流に構えた勇者の姿。気迫と闘志の充満したそれは、あまたの戦闘経験をもつ彼でも、手を焼くことになることが明らかだった。


「仕方ない。」

 窓枠に足をかけてマンテセは外に飛び出す。綺麗な跳躍で街路に降りたった彼は振り返ることなく、夜の街に消えて行った。




「ヤヌス。怪我はないか?」

「ええ。」

「なんだったんだあいつ。」

「あれは、あいつはあの手段しか取れないわよ。」

 短い相対の間に、ヤヌスはマンテセの濃密な体験を読み取っていた。神様の心を読む能力の原典たる彼女にはたやすいことで、彼の正義も信条も、全てを理解した。


「もうあいつが戻って来ることはないわ。あいつのことは旅の慰みに教えてあげる。」

 勇者は不思議そうな表情をした。


「まあ、ヤヌスが無事でよかった。」

 万感の思いを込めた言葉で、ヤヌスは思わず赤面を隠せなかった。


「ふん。嬉しくもなんともないわ。」

 そんなツンデレの王道みたいなことを口走ってしまうほどに動揺するヤヌス。



 二人の異世界からの来訪者の道は、こうして交わり、また離れて行った。




















ド「わしの章ね!」

石「多分ね」

ド「なんで確定してないわけ? 」

石「他の話がどれだけ伸びるかによるの。君の話はそこまで長いわけではないから。」

ド「長くしてもいいのよ。」

石「ちょっと考えてるとこ。」

ド「期待してるわ。」


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