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異世界山行  作者: 石化
第4章:神闘会

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決勝2

 


 もうもうとした煙が晴れていく。いつもより消火が早かった気がするのじゃが、なぜじゃろうか。


 わしは少々首をひねる。⋯⋯ どう考えてもこの空間のせいなのは間違いないという結論は最初の最初から出ていたがのう。周りの気温を探って、納得を得る。これは地球ならとっくの昔に凍りついているくらいの温度じゃ。こんなもののの中に燃える溶岩を撃ったところで地上と同じ結果など発揮できるはずもない。フジ封じかの。そんなことせんでもわしなら勝てるのじゃが。




 まあ、慢心は良くないとよく剣も言っておることじゃしわしの炎が使えなくなるのは痛いのう。


 視界が良好になってフジの姿が再び見えた。じゃが、遠い。小さい。彼我の距離は先ほどの何倍かほどさえ開いている。⋯⋯ 遠ざかる要因などなかったはずじゃ。それでも結果が全て。確かにわしとフジの距離は広がっている。


 まだ移動方法もわからぬのに結果的に離れるとは。となると、先ほどの行動の中にこの空間を攻略するヒントがあるのじゃろう。わしがやったことといえば、フジの炎を相殺すべく同量の炎を放出したことだけじゃ。これじゃろう。これしかあるまいて。




 近づいているのではなく遠ざかっているというのは、炎を発射した方向と別の方向に向かう力が働いたということじゃろう。反作用とかなんとか言っておったような気がする。少々確かめてみるかのう。



 わしは肩のあたりから抑えた炎を後ろに放出してみた。手のひらからしか出せないというのは未熟な神の話だ。わしくらいになるとどこからでも出せる。⋯⋯ あんまり威張れることでもないような気もするのじゃが、気のせいじゃろ。




 距離のことを判断しうる材料がフジの場所しかない。惑星やら星やらは距離が遠すぎて、判断材料としては使えないからのう。



 とはいえ、近づいているかどうかの判断は可能だ。ほぼ無音の空間で、ボボボボと言う肩からの音が響く。放出している方向と反対に進んでいると言うのは違和感があるのじゃが、どうみてもフジの姿は大きくなってきている。


「炎よ。燃え上がれ。」

 迎撃するべくフジは手のひらをこちらに向けた。

 どうやら、わしの飛行を見てもフジの方はその意味するところを悟れなかったようじゃ。先ほどと同じように、わしへ向けて特大の炎を放つ。⋯⋯ 反作用あるんじゃぞ。そんな威力の力を行使すれば、後ろにすっ飛んで行くのは間違いないのじゃが。



 さすがにもう一度距離を開ける気にはなれなかったので、大きく左に炎を放つ。自由に動けるのは良いのう。空中と違って、力を消費している感じもないことじゃから、無限にどこまででもいけそうな気がする。


 フジの大火はさすがにこの空間すべてを覆うには足りないようで、右にそれたわしにはその爆風がちょこっと肌を撫でるくらいしか影響はなかった。


 後ろの爆風は常に吹かす。噴火を繰り返すほど消耗はしないが、それでも地味にわしの力を削っている。短期決戦が良さそうじゃの。




 こちらを視認してもう一度炎を放とうとしているフジにもう少し視界を広くもてと説教でもしてやりたくなったが、そんな余裕などない。フジの炎を避けなければ。左に右に、わしも炎を噴射する。


 もう面倒臭くなってきたことじゃし、フジが遠ざかるのなら遠ざかるママとしておこうかと言う思考が不意に頭をかすめたが、さすがに勝負がつかなくなりそうじゃからやめておくことにする。これどう考えてもこのようなフィールドを作り出したヤーンが悪いだろう。多分宇宙という言葉の響きに惹かれて適当に作り出したんじゃろ。全くもってもう少しテストプレイをするのじゃと忠告しておきたい。こんなんじゃ緊張感のある戦闘など夢のまた夢じゃ。まずほぼほぼ無音なのがいただけない。空気もないんじゃろ。わしらは別に酸素が必須というわけでもないが、もし剣やユウキが勝ち上がったらどうするつもりだったんじゃろうか。全くもってあの主神はやることなすこといちいちかんに触る。あやつしかできぬことをやっておるのは評価せざるをえまいが。


 攻撃を避けておるだけなのに、なぜだかわしがフジを追うような形となってしまった。普通逆じゃろこれ。


 このまま果てのないそらに咲く花火を避け続けて終わってしまいそうじゃ。普通なら弾切れという決着が用意されておるはずじゃが、フジはさすがじゃのう。全然撃ち終わる気配がないわい。さすがにわしの火力量はそれほど無尽蔵ではないのじゃから、節約しておくことにせねば。それを考えると今の状況は決して悪いものではなかろう。こちらからは攻撃できないとはいえ、残量差は開いて行く一方なのじゃから。何らかの変化がないとわしの勝ちじゃ。



 それをフジも気づいているのだろう。好戦的な表情は影を潜め、焦りを表すような汗がポタリと落ちるのを視認した。



 まあ、フジには悪いが、この場所の構造を見抜けなかった時点でわしの勝ちは揺るがぬわい。もともと負ける気もしなかったがの。


 ⋯⋯ フラグというやつについて剣が言っていた言葉を少々思い出してしまった。勝てたと思ったらピンチになるやつか。いや、良いじゃろ。この状況なら、何か別の事象が降って湧かない限り勝てるはずじゃし。




 無音の世界で、爆発音以外の音がした気がした。どっちじゃ。どこから聞こえてくる。⋯⋯。 下じゃ。

 ないはずの空気を揺るがして、火の玉のように燃えるもの、小惑星が突き上げてくる。ヤーンの仕込みかと疑ってしまったのはある種仕方ないところがあると思うのじゃけれど⋯⋯ 。あながち間違っておらぬ気がするからあやつは本当に厄介じゃわい。なぜ優勢を優勢のままとしてそのまま受け入れぬのじゃ。















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