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異世界山行  作者: 石化
第4章:神闘会

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昼飯幕間

週一更新はしていきたいです。



 凄まじい試合だった。心残りがあるとすれば、最後の決着の時、よく見えなかったことだろうか。戻ってきた三人は当然のように盛大な拍手でむかえられた。派手だったからな。途中の氷塊崩落の間の攻防は、まさに見応え十分だった。



 決勝はシロ対フジとなった。やっぱり三山は強かったよ。⋯⋯ ごめん、タテに勝ってごめん。あれは彼女がつまずいたから勝てただけで、通常ならどうあがいても勝てなかったと思うんだ。



 ヤーンの手により、昼飯休憩が宣言された。⋯⋯ 手によりという表現ふさわしくないな。口によりがいいのかな。でもなんだか違和感あるな。まあいいや。最終的にまあいいやになる思考回路はどうにかしなくてはと思う。





帰ってきた三人は疲れ果てていた。仮想空間はこちらの世界に影響を及ぼさないとはいえ、記憶は残る。特にユウキ達とか殺されたんだし、それは精神的疲労も溜まろうというものだ。

僕らは、自分の炎に焼き殺されたからそこまで痛くなかったけれど、シロの殺し方は残酷なものだったのだろうなと想像できる。だって、イチフサがユウキの影に隠れてシロを思いっきり避けてるもの。もともと慕っていたはずなのにこれって、どれだけやばい殺し方をしたんだ。



「⋯⋯ 痛みはなかったはずじゃが。」


「目潰し痛かったんですけど!」


隠れながらもきゃんきゃん吠えるイチフサは、思っていたより元気そうで安心した。



「ああでもせぬと勝てなかったからのう。」

シロは悔しそうだった。何が行われたかは知らないけれど、本来のシロなら、使いたくもなかった技を使わされたらしい。


「私たち強かったですか? 」


「もちろんじゃ。正直なところ負けるのも覚悟しておった。」

イチフサの問いにシロは素直に答えた。少しばかり取り繕ったところがある彼女の素直な評価はかなり珍しい。


「嬉しいです。」

それを聞いて、イチフサは、素敵な笑顔を浮かべた。彼女の目標はシロだ。そのシロから認めてもらえるのは、彼女にとっては大きなことだったのだろう。



「押せてたとは思うんだけど、逃げ切られたし、やっぱりシロはすごいなと思ったけどね。」


「必死じゃったからの。保護者を自称しておいて、守るべきものに負けたとなるとお笑いぐさじゃ。」


シロの表情は真剣で、彼女の覚悟のほどが見えた気がした。


うん。シロが絶対的な支柱と君臨してこその旅だ。それは間違いない。シロの力の一端が見れてよかった。




「じゃあ、屋台に繰り出すとするかの。昼飯じゃ。」


僕らに見つめられるのが気恥ずかしくなったのか、シロは露骨に話題をそらした。地味に照れ屋なのである。可愛い。


広場に集まっていた神達も三々五々と屋台村の方へ向かっている。僕もお腹がすいてきた。

おりしも何かが焼けるような香ばしい匂いやら甘い匂いやら、祭り特有の食べ物の匂いが漂ってきて、期待感を掻き立ててくれる。




昨日も結構食べ歩いたけれど、それだけで食べ尽くせるはずもなく。まだまだ気になるお店はたくさんある。何とは言っても無料なのがいいよね。材料をどのようにして調達しているのかは謎だけど。

 タダでこれだけの食材を揃えるのは無理だろう。あれか? 神様への捧げものを使っているとか。ありえるな。家畜を神に捧げる風習は、昔の地球にもよくあったものだし。


あと、受注生産方式を取っている屋台が多い。注文が入ってから作り始める。こうすると無駄な在庫を抱える必要もなくなる。⋯⋯ いや、謎空間にいくらでも収納できるのだから、在庫は問題にはならないだろうけれど。どちらかといえば、ゴミが出ないと言う方が重要か。環境に優しいよ。さすが山神様。⋯⋯ どう考えてもそう言う理由ではないだろうけど。むしろ試合が行われている間は、店主も画面に見入るから、注文されてからと言う方式にした方が効率がいいと言うのがいちばんの理由なのかもしれない。なら、昼食休憩をとったヤーン有能と言うべきか。店の人間も食べる人間もどちらもそれに集中できる。人間というより神様と言った方が適当だが、いちいち様をつけるのが面倒になってしまったので、もう人でいいんじゃないだろうか。どう考えても本物の人間より神様の方が会ったことのある人数が多い人がここにいます。あんまりたくさんいらっしゃると神様という希少さが薄れてしまう感があるのでもう少し小出しで登場なされても良かったんじゃないでしょうか。⋯⋯ いや、前のことを考えると十分小出しではあるか。ホウミツと会うまではほぼ誰とも会わなかったもんな。


そのままぶらぶら屋台村を歩き出す。


「げっ。」

赤髪のかっこいい女の人がこちらを見つけて逃げるように立ち去ろうとした。



あんまりな反応をされた。悲しい。


「ソア、何逃げておるんじゃ。」

シロがいつもの呆れたような口ぶりで彼女に声をかける。


人混みに遮られて逃げられなかった彼女は、渋々こちらを向いた。



ポニーテールが慣性に従って揺れ動いて美しい。



「気まずいってのわかりなさいよ。」

開き直ったように、彼女は大きな声で文句を言った。


⋯⋯ まあ、ユウキとは殺しあった仲だしなあ。


「ソアさん。初めまして。私は東月ユウキです。予選では、対戦ありがとうございました。」

律儀に挨拶その他をこなして頭を下げるユウキ。


「⋯⋯ 文句の一つでも言ってやりたかったけど、さっきの試合は見事だったわ。」

嫌々ながらも素直に褒めるソア。自分を負けに追い込んだユウキには複雑な思いがあるだろうから、その葛藤はわかる。


「それはそうと、ソアさんは何か屋台やってないんですか。」

僕は、そんな雰囲気も嫌だとは思わないのだけれど、どちらかといえば食べ物が食べたい。阿蘇といえば食事が美味しいということで有名だったような気がするし、期待しても良いだろう。


「⋯⋯ あなた、なかなか厚かましいわね。」

呆れたようにソアは僕の方を見て溜息を吐いた。


「それは、剣のいつもの態度じゃ。気にしないのが吉じゃ。」

⋯⋯ なんか、僕、諦められてない? 厚かましい人だと思われてない?



「まあ、私の食べ歩きも終わったし、付いて来なさい。」


そう言って、ソアは僕らを先導するように歩き始めた。




































久しぶりに戦っていなくて新鮮。

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