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異世界山行  作者: 石化
第4章:神闘会

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本戦 合間 2

お久しぶりです。お正月がこんなに書けないものだととは思ってもみませんでした。これからテストもあるので一月中は低速度で行きます。

 



 キタは頑張っていた。試合展開がスピーディ過ぎたとは言え解説する努力を惜しまなかった。だが、この試合は野球のように休みがあって、間があって、CMを流すために生まれてきたような、そんな代物しろものにはならなかった。

 一瞬で変化する斬り合いに誰がついていけるだろうか。三回戦のような噴火勝負ならまだ間はあったのだが。




 確かに最初の二人、いや、イチフサも入れたら三人か、ともかく両者が歩み寄るシーンは、幾分やりやすかったと思う。二人のプロフィールを説明すればいいからだ。⋯⋯ それに関してはヤーンの方が当然のように詳しかったので、やっぱりキタ要らない子だったわけだけど。




 僕らが見た試合は、ガキガキと刀同士が火花を散らしてぶつかり合う、真剣勝負。間合いの駆け引きがあって、刀の攻防があって、そのスピードは、類を見ないほどに速かった。

 二人がぶつかってから2分ほどしか経っていないだろう。だが、その濃密さは、少しだけ剣をかじっただけの僕にもよく理解できた。 





 目で追えないものをどう解説しろというのだ。それでも、キタはきちんと技を解説していた。⋯⋯ ほとんど誰も聞いていなくてもめげなかった。


 だから、最終的には、みんな彼女の頑張りに絆されることになったし、試合が終わってユウキ達が帰ってくる前から拍手が鳴り響いた。キタへの惜しみない賞賛の拍手だった。


 彼女は、みんなに見下ろされる解説席で、戸惑ったように辺りを見回していた。自分の解説がうまくいっていないのはわかっていただろうから、その戸惑いは理由無きものではない。


 でも、みんなが純粋に彼女のことを褒めていると、ある瞬間に理解して彼女は目頭を押さえた。




 ユウキとイチフサ、ツルギが転移して戻ってきたのは、そんな状況だった。三人とも狐に包まれたような顔をしている。


 間違いなく名勝負だった。剣と剣のみの戦いもいいなって、思った。⋯⋯ 最後、かなりグロかったけれど、気にしたら負けだ。




 だから、拍手はそのまま続いた。対象が一人から四人に増えただけだ。





 いつまでも拍手を続けさせるわけにもいかないので、ヤーンがよく通る声で、次の試合の組み合わせを発表した。




 サクラ対フジと。



 さすがに今すぐ始まるわけではないらしく、下から上がってきたユウキとイチフサを迎え入れた。


 会話は先ほどの4つの試合について。めいめいに、思うところを語る。



 でも、そんな過去のことよりも、目前に迫った対決の方が僕の心を占めていた。フジ。日本で一番高い山。この世界でも三山の一つ。この試合でもその実力を遺憾無く発揮している。さすがに生半可な戦いにはならないだろう。幸い、命のストックはアサマのおかげで消えている。⋯⋯ さすがに一試合ごとに一回命をもらえるとかいう話じゃないよね。それは無理ゲーです。



 まあ、もうヤクシの機嫌的に復活呪文を唱えさせることはできないだろうから、心配しなくても良さそうだ。かなり嫌そうだったもんな。わかる。




 僕らは、全員準決勝に進んだ。つまりは、これから当たるのは身内ばかり。フジを倒して、シロかユウキのどちらかに挑戦してやる。


 ⋯⋯ 二人とも、僕らより格上だってことは気にしたら負けだ。まだ融合を使って戦ったことはないから、絶対に負けるとは思っていないけれど。



「その意気ね。じゃあ、そろそろ行きましょうか。」

 僕のその他諸々の思考を一言の元に切り捨てて、サクラは僕の手を掴む。


「やるわよ、剣。」

 彼女の視線はまっすぐ僕の方を貫いて真剣だった。僕も、同じような表情で頷いた。これから戦うのは間違いなく強敵。それでも、サクラと一緒ならば、負ける気がしなかった。



「頑張るんじゃぞ。」


「決勝で会おうね。」


「それはわしを倒すということでいいのかの。」


「まあまあ。」

 後に残るユウキとシロの間で火花が散って仲裁に回るイチフサがかわいそうだった。




「いってきます。」


「待ってなさい。」


 二人で、それに返事して、僕らは下へと歩み出す。


 向かい側からフジが現れるものだとばかり思っていたけれど、フジもこっち側で観戦していたようで、途中で並んで下ることになった。



 彼女はやっぱり黒髪で、目を伏せて、おどおどとしていて引っ込み思案を連想させる弱そうな子にしか見えない。


「よろしくお願いします。」


 蚊の鳴くような声で、僕らに挨拶をする。挨拶を自分からしているのは、偉いと思う。家弁慶がひどかった時代の僕なんて、外では、何も喋らなかったまであるようなないような。挨拶運動にはきちんと挨拶くらい返してあげるべきだよね。上から目線の施しのようだけど、まあ、こんなものでしょう。


 あれを毎日続けていた生徒会の人たちはすごいの一言に尽きる。貴重な朝の時間を食いつぶしてまでやる意味がわからない。


 全然関係ない中学時代の思い出の話は置いておいて、挨拶を交わした後の軽い世間話みたいなのをやりながら降って行った。⋯⋯ どう考えても試合前にやるべきことじゃないし、気合が削がれてしまう。


 降り切った時にはヤーンもキタも、同じように呆れた表情をしていた。⋯⋯ 原因は明白なので何も言い訳はしないことにしよう。
















三山と二連続で当たる剣は泣いていいけど、自分からシリアスをぶち壊しに来たのでやっぱりダメ。

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