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異世界山行  作者: 石化
第4章:神闘会

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本戦 一戦め

どうせだし、続けて出しますね。元気になってくれるといいのですが⋯⋯ 。

 画面に映し出される風景は、僕たちの転移したあの風光明媚な南国の砂浜⋯⋯ ではなかった。

 溶岩で埋め立てられた見るも無残な災害跡地。

 僕たちの戦闘結果というか、副産物というか、何度見ても申し訳なくなる。

 誰の迷惑にもならない場所で戦うようにしようという決意を新たにした。



 未だにグツグツの煮立ち、地獄の湯釜とも言えそうな海。赤黒く光る溶岩。

 その上、溶岩台地に、二人の神が立つ。かたや無表情。

 白の兎耳を巻いて茶のツインテールが肩まで落ちる。かたやいつも通りの表情。

 白の髪は南国の陽に照らされてダイヤのように輝く。




 予選の時とは打って変わって、両者の距離はそこまで離れているわけではない。

 会敵が重要だった予選とは全く別の戦いになりそうだ。


 二人は睨み合う。神様は色々な戦闘スタイルをとることができる。

 武器を呼び出して、それで戦ってもいいし、山としての力で力押しにしてもいい。

 力のある神ならば、その戦い方の選択肢も無限にあるだろう。

 シロが同じやり方で戦ってるとこ見たことないぞ。


「少しやりにくいのう。こちらで行くか。」


 シロの雰囲気が変わる。一度だけ見たことのある炎形態だ

 。氷の中に炎を閉じ込めたかのように、白い肌が赤い輝きを帯びる。

 虹彩まで白い瞳に、炎の色が宿る。軽く振った手に握られるはふた振りの刀。

 サクラの刀形態と同様に炎を纏い、熱で刀身が揺らめいて見える。




「あれがあるからあいつは反則なのよ。」


 隣でサクラがそう評した。南国という場所には氷は向いていない。

 だからこそ、氷を武器にする山は戦力減を免れない。だが、シロはどちらの力も当然のように操れる。

 タイセツと同じだ。そして、使い分けに迷いがない。どちらでも勝てると信じているのだろう。

 ⋯⋯ おそらくそれは正しい。三山と呼ばれているのは伊達じゃない。

 僕らだって、シロに勝てるとは思えないし。



「さすがシロね。キタはどう思う? 」


「現実世界なら私が勝つ。」


「⋯⋯ あなたの自信もすごいわね。」


「北神と呼んでくれても構わないよ。」


「どこかの二番煎じの匂いがするからダメ。」


「無慈悲だ⋯⋯ 。」


 司会席では解説とは名ばかりの漫才が繰り広げられていた。キタって人、ポテンシャルすごいな

 。いや、この前のヤクシの時も漫才みたいになったし、これはヤーンがすごいという方が可能性が高い。

 漫才師としての能力値の高い主神。⋯⋯ いらないなその能力。




「そちらがそのつもりなら。」

 ヒウチも刀を呼び出す。こちらは炎をあまり付加していないようで、純粋な鋼に近い。

 少しだけ炎の色が漏れるだけだ。互いの距離は近いと言えるけれども、その間合いはかなり離れている。

 剣道の試合場でいうと三つぶんほど。切り合えるような距離ではない。距離と間合いは別物だ。


 スタスタとゆっくり距離を詰める両者。あまり気負わずにいるのは強者の証か。

 下手なちょっかいは無意味と知っているのだろう。どちらも変化を起こすことなく、剣の間合いへ。

 剣客の立会いのような光景だ。隣でユウキが興奮している。

 憧れだったのか観戦するだけなのに楽しそうだ。





 呼吸が整う。どちらが動いてもおかしくない。先をとるか後の先をとるか。

 難しいところだ。だが、今までの試合から考えて、動くのはこっちだろう。


 彼女は先手必勝をたっとぶ傾向にあるから。




 シロが二刀を横薙ぎにした。ごうと応えた風は炎風となってヒウチを襲う。

 シロは踏み込んではいない。ただその風圧がヒウチを攻撃しただけだ。

 とらえどころがないが故に受けきることの難しいその攻撃に、ヒウチは、踏み込むことで応えた。

 炎風は致命傷とはなり得ない。その前に、シロを殺せばいい。合理的な判断だ。




 ヒウチの一閃が走る。ブレない足腰は一撃の速度を速めるとともに安定させる。

 なんで神様たち剣についてこんなに修めているんだ。ツルギが訓練でもしたのかしらん。


 だが、シロは慌てずに二刀で受け止める。刃と刃がぶつかり合う。互角だ。

 剣と剣が摩擦し、火花が散る。



 くるり。シロは二刀を返す。ヒウチの刀を体の外へ送り出すように。

 そして自由になった二刀で横に、胴狙いの一撃を薙いだ。いちいち鮮やかで腹たつ。

 心強くもあるけれどさ。



 ヒウチの刀はシロの外側を滑っていく。

 刀の刃渡りが長いほど、取り回しがよくないというのは仕方がないことである。

 だが、今回は取り回しの悪さが本当に悪い方に回ってしまいそうだ。

 彼女の体はその刀につられてまさにシロの振るう刀の方に吸われていくように動いていく。



 ヒウチの選択は手にもつ刀を手放して大きく後ろに飛び下がることだった。

 その思い切りの良さが功を奏したらしい。シロの刀は、ヒウチにわずかに届かない。




「ちい。」


 シロの舌打ちはレアだ。決まると思ったのだろう。

 僕も決まると思ったし、ヒウチの思い切りが良すぎたのだ。



 しかし、決めの一撃を躱されてなおシロの体は崩れない。そのまま殺到する。全くもって隙がない。


 ヒウチは炎弾を手のひらから発射する。牽制だ。だが、シロはそれを問題なく避ける。

 なんであんな高速機動ができるのか。白いからではないだろう。

 なんでも白いことに結びつけちゃいけません。


 白と言う概念を司る神って言われても結局何をしてるかよくわからないし。








立会いだよ。近接戦だよ。4章は一応戦いの章だよ。

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