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異世界山行  作者: 石化
第4章:神闘会

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宿屋12

文化祭が近くて⋯⋯ 。

  ヤーンの合図と同時に枕が飛び交う。ポイント制。すなわち、先に当てに行くほうが勝つ。防御無視。特攻だ。ガードの枕も二弾目として飛ばし、集中砲火を浴びる僕。


「いや、バカなの?!」

 サクラが叫び声でつっこみを入れる。⋯⋯ バカじゃないもん。


 慌ててシロがカバーに入る。あちらはタテが、枕二枚構えて文字通り盾としての役割を果たす。堅い。固すぎる。突破できる気がしない。全て防がれる気がする。足を狙うと、向こうから飛んでくる枕への警戒がおろそかになるし、難しい。


 安全地帯を求めて、どちらも盾役の後ろに一列に並ぶこととなった。こちらはシロ、あちらはタテだ。しかし、シロも善戦しているとはいえ、小さいという致命的な欠点がある。


 対してタテは本職だ。これ勝てないんじゃ⋯⋯ 。



「防御は各自に任せるわい。」


 そう言って、シロは守りの体制を解いた。放たれるは二つの枕。弧を描いてタテを回避したそれは狙い過たず後ろの方に命中した。⋯⋯ どっちかといえば攻撃型の神だもんなシロは。うん。盾勝負に持ち込んだらこっちが負けることは明白だ。散開して各自で戦おう。




 横側から狙いをつけるとさすがのタテも全てをカバーすることなどできはしなかった。むしろ固まっている分、いい的だ。



 中でもシロの操る枕の動きが一歩先んじていて、どこからでも当ててくる。そのぶん被弾も多いようだが、さすがシロだ。



「私は、フジを守る役割に専念するわ。あとは自分で。」


 タテもこれは分が悪いと作戦を変更した。一斉に頷く敵側チーム。あっちはあっちで意思疎通取れてるな。商品が魅力的だからだろうか。


 タテは宣言通りフジの前に構える。

「私がいる限り、後ろには通さないわ。フジ、やっちゃって。」


「りょーかい。」

 フジの髪色はすでに燃えるような赤だった。人格移行スムーズだな。


 タテの後ろから噴石のように何個も枕が飛び出す。フジの手による威力重視の一撃が何度も何度も繰り出される。当たったらただじゃ済まない。そんなに投げて残玉は大丈夫かと言いたいが、こっそりヒウチが手渡してる。⋯⋯ あの子、油断がならないにもほどがあるだろう。


 ついでにユウキとイチフサも二人組でぐるぐる枕を融通しあっており、隙がない。ワンマンプレーなこちらとは対照的だ。





「私に任せろ。」

 頼もしい声が敵陣近くから響いた。そこにいたのは、枕を刀のように構えた、ツルギだ。


「私が全て切り落とす。フジの枕は心配しなくて良い。」



 そのまま、枕を隙のない動きで縦横無尽に振る。フジの投げた枕は全て、勢いを失って地に落ちた。


「さすが。」

 僕は歓声をあげる。剣の山は伊達じゃない。


「えー、ツルギ、失格で。枕自体を切ってどうするの。」

 ヤーンの呆れたような声がした。見ると、確かにシーツがぱっくりと避けて中綿の飛び出た枕だらけ。⋯⋯ いや、枕で枕を切ったのすごくない? 剣士のレベルを飛び越えてない?




 僕らは逆らったけれど、どうすることもできずにツルギはヤーンのところまで連行されてしまった。



 そのあとも試合はあちら側有利なまま進み、僕らは負けた。⋯⋯ 一人少なかったのによくやったようん。


「申し訳ない⋯⋯ 。」


 ツルギは目を伏せる。


「お主の力を振るわねば皆が危なかったのじゃから、あの判断は的確じゃ。あとは加減を学ぶのじゃ。」

 シロの励ましとアドアイス。⋯⋯ シロ、山神最長齢説濃厚だな。ツルギも経験ない方じゃないだろうけれど、それでも、親と子ほども差を感じてしまう。



「僕らも有効な手が打てなかったわけだし、仕方ないよ。タテさんがいるってだけでほぼ反則なんだし。」

 アサマも気を落とさないようにと元気付ける。うん。タテのところに飛ばした枕は一つの例外もなく防御された。堅いなんてそんなチャチなものじゃない。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。


「剣、何言ってるの。」

 サクラは半目で突っ込んだ。でも、サクラだってあんまり活躍してなかったよね。フジくらいの活躍を期待してたんだけど。



「それは、あなたが危なっかし過ぎて、投げるのに集中できなか⋯⋯ なに言わせるのよ、このばか! 」


 張手をくらう。久しぶりにサクラの理不尽なツンデレが発揮された。ちょっと懐かしいけど、でもやっぱり痛いのでやめてね。


「あっ、ごめん。」

 サクラは顔を赤くして俯く。

 ここで素直に謝ってくれるようになったのは、成長だと思う。


「ところで、なんで顔赤いの?」

「それは、剣の顔に久しぶりに触ったなと⋯⋯ なんでもない! 」


 がっつり言ってる気がするけれど、聞こえなかったふりをしておこう。そう、僕は鈍感系主人公。自らに暗示をかけていくスタイルだ。ずっと言っていれば、女の子の告白にえっ、なんだってと返せるようになるはずだから。⋯⋯ 嫌だなそんなやつ。なりたくない。こうして、僕は鈍感系主人公になることを諦めたのであった。


「相変わらず、自己完結してるわね。」

 サクラの声に本物の呆れの色が混じり始めた気がするが、それは気のせいだ。



「じゃあ、勝った人たちは、明日を楽しみにね。負けた子たちは頑張って。⋯⋯ フィールド効果変えようかしら。」

 最後に不穏な言葉を残して、掻き乱したいだけかき乱した主神は障子の向こうへ消えた。


 どうせなら三回戦でもヤクシばりの潰しが入ってくれるのなら良いのだが。どう考えても、タテとかフジとかが復活ありじゃ勝てないよね無理だよね。大人しく棄権した方がよさそう。



「二回勝てばいいんでしょ。楽勝よ。」

 サクラは勝つ未来しか見据えていないんだなということがよくわかった。


 ⋯⋯ まあ、腐っていても仕方ない。足掻いてみよう。














枕投げで何話かけるかなと楽しみにしていたんですが、さすがにこんな遊びで水増しするのも悪いかと思い直しました。大丈夫。一応全員の行動に触れてるから。

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