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異世界山行  作者: 石化
第4章:神闘会

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宿屋7

まあ、サクラだけにアピールはさせないよねって

 「もう。デレデレして。こっちをみてよ。」

 永遠に止まるかと思えた時を動かしたのはユウキだった。恥ずかしさも忘れたように僕の体の方向を自分の方へ向ける。


 とはいえ、僕の方はやっぱり気恥ずかしい。サクラのことは透明な目線で評価することができるけれど、ユウキに対してはどうしてもよこしまな欲望とともに見てしまうから、そう言う感情を良しとしない僕としては、できるだけ見ないようにしたいのであって。

 なんと言うかそう言う交わりは聖なるものとして別の次元においておきたいのだ。例えば童貞特有の交合に対しての潔癖とでも言うのだろうか。そんな感情が存在している。だから、こういうところでユウキの裸を見るのはひどく恥ずかしい。


 けど見ないわけにはいかない。ユウキだって恥ずかしいだろうに、自分から見せようとしてくれているんだ。その思いには答えなくてはならない。⋯⋯ それになんのかんの言ったって、明るい場所で見て見たいと言う気持ちだって無いとはいえないから。


 ユウキも髪を下ろしている。髪型は色々変えるユウキだけど、結ばない姿は自然な感じで好きだ。⋯⋯ 全てのユウキの髪型は好ましいけれど。



 そうして、恥ずかしそうに腕を組んで、でも、胸を隠さず少し意識して強調するポーズをとっているユウキの姿を僕の目に捉える。


 ユウキの体はかなり引き締まっている。剣の訓練と山登りと言う全身運動のおかげだろう。僕だって、見苦しく無い程度には筋肉がついてきたように感じるし、そう言うことだ。


 でも、やっぱり、女性的な柔らかみはあって、優美な姿だ。

 サクラより少し小ぶりの胸が、本当に綺麗な色をしていると、そう思った。


「どう? 」

 ユウキの問いかけ。⋯⋯ どうしてみんな自分の裸を評価してもらおうとするんだよ。僕にはそんな勇気ないぞ。




「綺麗だよ。」

 僕は幾分照れながら、でも見たままにシンプルに口にした。美辞麗句を弄する必要はないと思ったから。


「うーん。なんか、サクラと比べて弱いなあ。」

 ユウキは何一つ纏わぬ姿で唇を尖らせる。時々見る表情だけれど、こんな状況下ではさすがに初めてだ。


「好き。」


「その一言で済まそうとするのはずるいと思うよ。」

 そんな不満を言いながら、ユウキの口元はだらしなく緩む。よかった。正解だったみたいだ。



「⋯⋯ 私には決して好きって言わないのね。」

 サクラは気落ちしたように言う。


「私が正妻だから。」

 少しだけ勝ち誇るユウキ。



 いや、ほんとこの状況どうすればいいんだよ。誰か教えてください。いつ斬られ、燃やされるか気が気でないです。







 いたたまれなくなって、僕は一人、浴場へ向かった。⋯⋯ 後続の神様たちがやってきた足音がしたと言うのもあるけれど。








 風呂場は昨日よりもさらに幾らか広がったようだった。ほんとあの人無駄なところに惜しげも無く空間改変能力を使うな。




 とりあえず、体を流して足から浸かる。


 脱衣場の方ではユウキとサクラの争う声が聞こえてきて、どうしようもない。僕は現実から逃避する意味も込めて、露天風呂の方へお湯の中を移動していった。





 相変わらず雄大な山の風景が広がっている。夕焼けが空を橙に染める。灰色の雲が波のようにさかまき、波濤の頂きだけが明るく染まる。夕暮れというものはどれだけ見ても一つとして同じ風景はないと断言できる。


 強い風が吹く。山の上特有の地上では考えられない風速を持つ激しい突風。肌を冷やして去っていく。慌てて肩まで浸かることにした。



 ここからは神闘会の会場や屋台は一つも見えない。ただただ雄大な自然が広がる。そういえば山の上だったのに、今日一日ほとんど周りの風景を見なかったなと、遅い感慨を抱いた。



 夕日はこの建物の後ろから差しているようで、壮麗な火の玉の沈降を見守ることはできない。ただ、橙に焼けた雲の橙の位置がかわっていくことでそれを知るのみだ。やはり戦いもいいが、風景が一番だ。落ち着くし、心躍る。







 あと、やっぱりお風呂はいい。こうして浸かっているだけで幸せな気持ちになれる。色々あった今日一日の疲れが全て溶け出していくかのようだ。薬効成分があるとかなんとかいうのは正直眉唾ものだとは思うが、温かいお湯の中で全身を弛緩させたいという欲望は人類普遍のものだと思う。⋯⋯ 日本とローマだけじゃないと信じたい。




 ガヤガヤと話し声がして、神様たちが入ってきたようだ。都合よく湯煙に隠されているからこちらが近づいてみようとしない限りは見てしまうということはないだろう。正直興味がないとは言わないが、さっきの二人でお腹いっぱい感がある。これ以上をすると運営に睨まれる気がする。


 というわけで、僕は、できるだけ声を出さないように黙ってぼんやりと浸かったままの状態になった。ぼんやりしていれば神様たちに気づかれるような心の声を漏らしてしまうこともないはずだから。






 ⋯⋯ でも、現実がそれを許すはずもなかった。一人の水音がまっすぐにこちらに近づいてきた。

















誰でしょうか。(これを当てられたらすごいけれど、ヒントも何もないし、普通は無理

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