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異世界山行  作者: 石化
第4章:神闘会

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予選終了

 「お疲れ様。これで予選は全て終わりね。」

 ヤーンの労わるような言葉が拡声魔法みたいな反響を伴って聞こえてきた。それあるんだったら開会式の時にみんなを集める必要なかったんじゃないだろうか。まあ、儀式っていうのは深い意味があるから考えてはいけない。なんの意味があるのかと思っていた卒業式のPTA会長挨拶だって、PTAが保護者代表ということを知ってしまうと、納得するしかないものだったわけだし。




「結構遅い時間だし、移動が疲れるって人のために温泉旅館を用意しておいたから、泊まりたい人は、訪ねて来ること。でも、そんなに部屋があるわけじゃないから、希望者が多すぎた場合は抽選にするわ。」

 最後に温泉の宣伝をしてヤーンの放送は終わった。⋯⋯ あれは旅館だったのか。なら昨日のうちに泊めてくれてもよかったのに。まあ、好意的に解釈するなら、戦いの舞台作りみたいな諸々の準備に忙殺されていたと考えることもできなくはないけど。



 とりあえず、仲間たちの顔を見てみる。ユウキ、シロ、サクラ、イチフサ。開会式前は色々あったけど、結局この5人で落ち着いたってことを考えると、居心地がいいんだなって改めて実感した。


「どうする? 僕としては、別にアサマのところに引き続き泊まってみてもいいと思ったけど。」

 意見を募ろう。これぞ民主主義の真骨頂。幸い、今回は時間があるから民主主義最大の弱点であるところのなかなか決められないという問題は無視していい。


「私は賛成。アサマの料理美味しかったし。」

 ユウキはその味を思い出したように頰を緩めて言った。うん。わかる。何回だって食べてみたい味だから。


「私は嫌よ。」


「私も嫌です。」

 サクラとイチフサは一致して反対のようだ。その嫌そうな顔は本気で嫌がっていることがわかる表情をしているけれど、どうしてだろう。別に、嫌がる要素なんてなかった気がするんだけど。



「言っとくけど、あなたたちのせいだからね! 」

 サクラの気炎は猛々しい。その横でイチフサもウンウンとうなづいている。


 ⋯⋯ イチフサがなぜ同意しているのかわからないけど、これもしかしてあれか、ユウキとあれをやっちゃったのがトラウマというか嫌な印象を植え付けてしまったのか? 


「その通りよ! 」

 そこは認めるんですね。こちらにビシリと人差し指を突きつけたサクラは、いつも通りに自信あふれる胸を張ったポーズをしていて、後ろめたさなどみじんも感じていないようだった。


「私たちの気づかないところでしてください! 」

 イチフサも同じように反対を主張する。まあ、イチフサは普通に恥ずかしいのだろう。なんだか目の輝きが尋常じゃない必死さを映し出しているので、他にも意味がある気がするけれど。もしかしてイチフサも僕に惚れてる? ⋯⋯いや、ないな。どこにもそれらしいイベントなかったもん。僕の魅力値はそれほど高くないので。いや、それはそれでサクラとユウキに失礼だけど。


 ⋯⋯ なんで二人とも僕を受け入れて好きだといってくれたんだろう。嬉しいと同時に不思議だ。



 サクラが目に見えて不機嫌になったのを遮るように、イチフサは念を押す。

「気づかないところで、ですよ。いいですね! 」

 いや、神様が気づかない場所ってないんじゃないだろうか。無理ゲーじゃん。そして、サクラが不機嫌になっているのは⋯⋯ 。


「ええそうよ。あなたの自分への過小評価が気に入らないの。」

 腕を組んで横を向いてふんと鼻息を鳴らして彼女は不満をぶつけた。

「私たちが気に入ったのは、ありのままのあなた。心が読めるんだから、いやでもそのままの姿が見えてしまう。その落ち着きのない思考も含めて、私は、あなたが好きなの。」

 そのあとに続いた言葉はなぜだか好意をストレートにぶつけてくるものだった。⋯⋯ 照れる。


「えっ、どういうこと?! いつの間にそんなこと言えるような仲になったの? 」

 ユウキが食いついた。

「えっと、そのあの。」

 サクラはなんと言ったものか、かなり迷っているようで言葉を濁す。



「私は、ユウキさんが好きですからね! 」

 イチフサも対抗意識を燃やしたのかこっちに向けて宣言してきた。えっ、ちょっと待って、初耳なんだけど。⋯⋯ それなら、確かに僕とユウキの夜の営みには反対するか。しかしいつのまに僕らの関係はこんなことになってしまったのだろう。かなり複雑と言ってしまって間違いない。



「わしだけ蚊帳の外で寂しいのじゃが。」

 ここまでセリフのなかったシロがウズウズし始めた。やめて。蚊帳の中に入ってこないで。これ以上人間関係をややこしくしないで。




「いいじゃろうが、入れてくれたって。わしのキャラが弱くなっておると、昨日の夜から主張しておるからの! 」

「いや、だからって恋愛に絡むのは⋯⋯  」

「⋯⋯ 無理じゃの。」

 我に返ったらしい。助かった。ここでシロ参戦ということになったら本格的に収拾がつかなくなるところだった。


「じゃあ、わしは小姑ポジションで行くからの。お主ら、わしがいるところで恋愛の話はせぬように。」

 全員をひと睨みして、シロは満足したらしく少々あくびをした。


「というより、宿の話じゃったじゃろう。枝葉にこだわらず、早く決めぬか。」




 少しだけ疲れたらしい。ならご要望に答えるとするか。






















五人でいると落ち着くなあ。

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