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異世界山行  作者: 石化
第4章:神闘会

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4回戦裏

 4回戦が始まった。僕らは、初めて仲間全員で観戦することができた。⋯⋯ 戦いの順番うまい具合に別れてたからな。大人の事情ってやつだろう。



 青い空。白い雲。黒い画面。⋯⋯ こうして見ても画面の不自然感が半端ないな。


 太陽の光線はかなり弱まってきていて午後も遅くなったことを教えてくれる。開始時間も遅れたし、妥当なところだろう。


 4回戦ともなるとさすがに疲れてきたのか、座り込んで画面を見上げる神様も多い。やっぱり浮ける神様は少数みたいだ。



 ようやく準備が整ったようで、画面に光が灯った。


 正方形の会場はただっぴろくて、なんらかのギミックがあるような気配もない。⋯⋯ 三回戦で僕らの世界の街をモデリングしたりなんかするから、リソースが足りなくなったのだろう。



 神様たちがだいたい等間隔くらいに並んでいる。あれじゃどこ向いていいかわからないだろうに。


 ⋯⋯ いや、なぜか神様たちが向いている方向に規則性がある気がする。ほとんどの神様はある一点をみている。そこには一人の神様がいた。でも、なんだかビクビクしていて、自信満々の人が多い神様の中で別の意味で目立っている子だった。美しい黒髪が肩にかかり、他とは一風変わった巫女服を着ている。あれは⋯⋯ 白拍子の服装だ。多分。水干と袴。貴族の男性ものの服装を巫女の色にしてみた服と聞いたけれど、色が変わるだけでこんなに可愛くなるのだなあと面白い。



「それでは、4回戦。はじめ。」

 ヤーンの声がどんどん確かさを増していっている気がする。なんだろう。時が経つにつれて主神として成長しているということかな。いや、成長早すぎるか。⋯⋯ なら、昔の自分を思い出している感じなんだろうか。何その銀さんみたいな人。


 さて、開始と同時に神様たちがその子に向かって殺到する。まるで弱いものいじめだ。その子が黒髪で目を隠すように俯いているのもその雰囲気を助長させる。大丈夫だろうか。誠に勝手ながら、僕はその子に感情移入してしまった。判官贔屓は日本人の性だから。



 しかし、それから僕は別の意味で再び目を見張ることとなる。苛烈な神様たちの攻撃。引っ込み思案を思わせるような態度のまま、彼女はその全てを回避したのだ。無駄のない最小限の動き。戦いを知らぬ少女には絶対にできないだろう動きだ。実は彼女は只者ではないのではないだろうか。それはもちろん神様としてあの場にいるんだから侮ってはならないのは知っているけれども。



 また、新たな山神がその子に向けて突撃していった。宙を走る短くまとめてポニーテールにした白銀の髪が風になびく。鈍く光る無骨な武具、そして、その腕を守るようにたゆたう羽衣。それは、ともすれば荒々しく見える彼女の装束を優美なものへと変える神々しいものだった。特別な力でも働いているのか、かなりスピードを出していると言うのに羽衣が後ろへ飛んで行く様子はない。



 手に持つ、白銀しろがね色の見事な剣を力任せに、女の子に向けてその神様は横薙ぎした。⋯⋯ いや、しようとした。できなかった。


 僕らがその白銀の神に少しの間目を奪われているうちに、その女の子がいた場所には不敵に笑う燃えるような赤髪のつり上がった目をした少女がいた。服も髪も赤く染まっている。



「あんたたち。よくも嬲ってくれたわね。シンプルに食らいなさい、大噴火っ!」


 口の動きが激しい言葉を形作る。


 彼女の上空からおびただしい数の燃え盛る岩が発射された。それは、出現したと同時に周囲へ飛び出し、近くにいた神様たちを吹き飛ばし、その勢いを失いことなく射線上にいた神様たちをも巻き込んで場外へ転がって行く。しかも、一回だけではない。後から後から、炎をその中に宿す大岩がこの戦場全てを圧倒する。もちろん何人かの神様は空へ飛び上がり避難した。だが、それもまた噴石の餌食。上空へ発射された岩石は狙いあやまつことなく全て神様へと着弾した。三回戦でユウキを追い込んだソアの攻撃の方が威力は上だが、その速度は圧倒的だ。しかも、彼女はそこまで取り繕った詠唱をしていなかった。それの意味するところは、彼女にとっては、この程度の攻撃など、普段のありふれた動作と同じようにそれこそ息を吸うようにできてしまうと言うことだ。

 なんだこの化け物。勝てるわけない。


「まあ、わしらの中で最強という扱いになっているのは一応あのフジじゃからのう。」

 シロの解説が入る。なるほど。富士山か。なら納得⋯⋯ 。したくないな、なんだよあの理不尽な力。殿堂入りみたいな感じで戦いに参加しないという選択肢はなかったんですかねえ。


「あやつとしても万能というわけではないわい。ほれみろ。」

 シロの指差す先には、炎の大岩が押し進めようとして、それでもなおビクともしない壁があった。それを当然という表情で目の前に張っているのは、タテだ。なろほど。あのクラスの守りができれば問題ないと。


「そういうことじゃの。」


「いや、無理だよねえ! どうして通常技を切り抜けるのに守りに特化した人の守護が必須なんですか。攻撃値高すぎでしょ。」


「⋯⋯ そういえばお主らも本戦ではあやつと当たる可能性があるのじゃったのう。まあ、頑張るのじゃ。」

「ちょっと他にアドバイスあってもよくない?! 」


「勝てると思うか? 」

 シロは逆に問うた。


「むr」

「いけるわ。」

 僕の諦めの声を遮ったのはサクラだった。サクラは少しも自分の言ったことを疑っていないような素敵な笑顔を僕に向けて、言葉を作った。



「私と剣は最強だもんね。」

 無条件の信頼と、最上級の愛情がそこにはあって、僕の顔は赤くなる。



 そうだな。戦う前から諦めるのはカッコ悪い。サクラの信頼に応えるためにも、絶対に負けないってくらいの気構えが必要なんだ。



「だからね、剣。」

 今度はサクラの顔が赤くなった。



「今度は私と合体しようね、ユウキみたいに。」


「サクラー? 何言っているのかな? 」

 笑ってない笑顔のユウキが怖すぎる。


「えっ、戦いの話だけど。」

 サクラは戸惑ったようにユウキに答えた。やましいことなど一つもないようなその姿勢。それは、僕とユウキの中に一つの可能性を浮かび上がらせる。



「もう、紛らわしい言い方しないでください。融合ですよね。私とユウキさんの時みたいに。」


 見かねたのかイチフサがとりなしを買って出た。


「もちろんそうよ。⋯⋯ まさか、夜のことを想像してたとかじゃないわよね。」


「いや、別に⋯⋯ 。」

 首をふりふりごまかしにかかる。


「ま、追及はしないわ。⋯⋯ 私もやってもらいたいってのは事実だし。」

 後の言葉は風が吹きさらってよく聞こえなかった。だめだなあ。これじゃあ、えっなんだっけ系の主人公じゃないか。一言一句聞き漏らさないのをモットーにしよう。小鷹君みたいにこじれた人間関係はまっぴらだ。僕は決意を新たにした。







「そこまで、勝者、フジ並びにタテ。」


 ようやく逃げ隠れていた神様たちをフジの噴石が掃討したのだろう。ついに4回戦が終わった。


 戦いばっかりで疲れたな。僕は一回しか戦っていないけれど、その経験はあまりに濃密で、今夜は興奮して眠れないかもしれないと思ってしまった。











ようやく予選終了です。全部で3回くらい噴火を使ってますけれど、全員違うなあと感慨深いですね。⋯⋯ 主な攻撃手段が噴火なので書き分けていきたいです。

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