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異世界山行  作者: 石化
第4章:神闘会

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三回戦6

三回戦5の続きです


 

 


  

 火砕流の勢いはとどまるところを知りません。ついに私の防壁が敗れました。目の前に迫る赤を前に私は、地面を思いっきり蹴りつけます。そして、そのまま空へと飛び出しました。マグマの顎門あぎとが私を飲まんと迫りますが、ギリギリのところで躱しきりました。


 なぜでしょうか。この姿、ユウキさんとの合一形態になってから神としての力が数倍になったような気がします。今なら空中浮遊すら可能かもしれません。私はいつもシロさんがしているように浮かぼうと念じました。



 結果。私は浮かぶことができました。万歳。嬉しいです。しかし、疲れます。シロさん。いっつもこんなことやっているのでしょうか。それにしては、全然大変そうじゃありませんでしたが。どれだけ練を積んだらそんなことになるんでしょうか。


 火砕流からは逃れました。下は、火の海です。マグマの海です。人の住んでいい環境じゃありません。住宅街などとうの昔に押し流されています。真っ赤です。下から火の熱が登って来て、宙に浮かぶ私たちの体さえ焦がします。ですが、ヒウチさんの方はなぜかその炎を茶色い土のようなものが押しとどめています。あれは、ヒウチさんの固有能力か何かでしょうか。少なくともまだ抵抗していることだけは確かなようです。ヤクシさんの方は反応がありません。⋯⋯ 生き返ったところをまた火砕流が襲ってしまったのでしょうか。御愁傷様です。私たちが粘ったおかげですね。


 しかしこの空の上も安全とは言えません。岩の中でも巨岩として崇められるレベルの岩がどんどん飛んできます。幸い狙いはつけられていないようですが、このままではいつか当たってしまうでしょう。そしたら、まず、脱落します。


「イチフサ。変わって!」

ユウキさんの声に反応して、体を明け渡します。必要ですから。


「剣よ。」

ユウキさんのために、右手に剣を生成します。シロさんのように、一部の力を剣として結実させることができるようになったのもこの姿になった影響でしょうか。ユウキさんは真っ正面に飛来してきた岩を見事に一刀両断しました。⋯⋯ すごいですね。いえ、惚けている場合ではありません。異分子を感知したのか、盲目的だった噴石が明らかにこちらを狙ったものに変わりました。


「イチフサ。」

呼びかけられるだけで十分です。私は、この体の飛行を操ります。そして、ソアさんの場所めがけて急降下します。密度を増す巨大な溶岩の弾幕は、全てユウキさんが一刀の元に切り捨てました。

赤熱したマグマの海に頭から突っ込みます。



 視認しました。ソアさんは、先ほどの大人の魅力のある姿から、小さな、少女の姿へ変わっていました。周囲の炎の暑さを考慮した半袖と、足を見せるホットパンツ。この全体攻撃技の影響でしょうか。さすがに、それくらいのデメリットがなければ反則だと思います。



 ギリと唇を噛んで、ソアさんは叫びます。

「なんで、あれで死なない。」

「私たちの力!」

二人の言葉が一つになった気がしました。



そのまま、私の、ユウキさんの刀で、ソアさんの心臓を貫きます。

「二対一は卑怯だよ。」

表情をどうするかわからずに困ったような顔をして、ソアさんはそれを受け入れました。多分、反動で身体能力が著しく落ちていたのでしょう。




「そこまで。三回戦、勝者は、イチフサとヒウチ。」

二回戦までとは別人のように威厳を取り戻した主神の声が響きます。まあ、私の中のあの人の評価は昨日の夜の時点で爆下がりしているので、この程度で心を許したりしません。覗きは犯罪です。⋯⋯ 私は止めようとしましたから。



「イチフサ。その話、ちょっと聞かせてもらうね。」

いやちがうんですこれはその。


「じゃ、じゃあ、会場を解くわね。」

慌てふためく主神により会場は解除されました。私たちの合体も解けてしまいました。危なかったです。グッジョブです。


「で? 」

こちらに詰め寄るユウキさん。ダメでした。これはもう伝えるべきなんじゃないでしょうか。



「ユウキー。お疲れ様。」

剣さん! ナイスタイミングです。いい具合にごまかせました。


「すごかったのう。」


シロさんも加わります。よし、これなら、三回戦トークで逃げることが可能ですね。よしよし。


しかしまあ、今回はひどい戦いでしたね。火山じゃないと、ほとんど、火災に巻き込まれて死んでました。⋯⋯ 二回戦で火の山が活躍しなかったからそのバランスを取るためでしょうか。しかし、火山でも、火災に巻かれていた人が多いような⋯⋯ 。まあ、気にしたら負けですね。






 「そろそろ、引き揚げるとしようかの。4回戦が始まるようじゃし。」


いつのまにか、画面上には、4回戦の参加者の名前が浮かび上がっていました。


「⋯⋯ しかし、三山を同一ブロックに入れるとは、荒れるのう。」

シロさんのつぶやきは、次の戦いの行く末を案じていて、私も少しだけ不安になりました。











ユウキとイチフサは近接に活路を見出すしかないので⋯⋯ 。

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