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異世界山行  作者: 石化
第4章:神闘会

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三回戦2

「もう始めてる子もいるみたいだけど⋯⋯ 。まあ、いいわ。三回戦。試合開始!」

 ヤーンさんの果断な声が降ってきました。ぼんやりしていないとは、眠気は冷めたのでしょうか。


 私とユウキさんは並び立ってとりあえず静観することにします。このフィールドがどれだけ広いかわからない以上、下手に動き回って体力を消耗するのは悪手でしょう。幸いなことに、周りに他の神様はいないようです。転移した場所が良かったのでしょう。



 そのままジリジリと待ちます。なかなか相手が現れません。道の真ん中に陣取っては真上から降ってくる日の光が強すぎるので、私たちは近くの家の軒下に避難しました。見ようによってはただの夏の一風景。⋯⋯ 季節を夏に設定する意味はあるのでしょうか。ただ暑くて戦いづらくなるだけのような気がしますが。



 ようやく、どこからか戦いの音が聞こえてきました。派手な爆発音が断続的に響いてきます。そこかしこで会敵と戦闘が始まったようです。爆発ということは炎を使ったんでしょうか。この暑いさなかに頭おかしいんじゃないでしょうか。爆発音は止まる気配がありません。ひょっとすると家屋に燃え広がってしまった可能性もあります。神の炎は消えにくいのですから。



 メラメラという炎の燃え広がる音は消える気配すらありません。黒灰が空に立ち上り、爆撃された町のような地獄絵図を想像させます。ただでさえ暑いというのに、さらに熱気がましてきました。


「イチフサ。とりあえず、この辺りの家を壊して。」

 ユウキさんの指示にしたがって片腕を犬に変形させて、圧壊します。ユウキさんの心を読んだところ、火事の時はこのようにして燃え広がるのを防ぐとのことでした。なるほど。燃えるものが残っていなければ燃え広がることはありませんもんね。合理的です。



 そのような目立つ行動をとっていたにもかかわらず、私たちの前に神は一人も相変わらず姿を現しません。運がいいんだか悪いんだか。まあ、私は歓迎します。ユウキさんも私も最初から最後まで戦うという体力は持ってないですし。⋯⋯ 足腰は強いので、やろうと思えばいけるかもしれませんけれど。山登りのおかげですね。いや、私の中の剣さんが親指を立てて夕日の中に消えていったのでこの話は終わりにしましょう。



 あれほど響いていた戦闘音も一つ減り二つ減り。気づけば、時々響いてくるだけになりました。いえ、これはむしろ一つだけといっても過言じゃないんでしょうか。⋯⋯ まあ、こんな大火事の中戦い続けていたらいくら神様とはいえ火傷とダメージで少なからぬ打撃を受けてしまうでしょうから淘汰されるのもむしろ当然かもしれません。



 その最後の一つが、こちらの方へ近づいてきます。私はユウキさんを伴って、そちらへ歩を進めました。そーっと軒先から覗くと二人の神が激しく争っている様子が伺えます。一方はうさ耳にツインテール。ヒウチさんです。さすがです。もう一方は赤い髪をひとつにまとめ、健康的な肌に、腕を露出させ、脚は長いジーンズで覆いすらっとして見える人。均整の取れた体型が非常に魅力的で羨ましいです。あの人は確か、ソアさんです。火の山神として非常に高名な方です。私の近所にいらっしゃるみたいだったのでいつかは挨拶に伺いたかったのですが、私がためらっているうちにこの日が来てしまいました。



 二人の戦いは見ようによっては大変シンプルです。共に火炎弾を相手に向かって発射するだけ。まあ、其の速度と数が尋常じゃないんですが。呆れるほどの速射性に炎の速度も合わさって、一度でも受けたら敗北必須の炎の塊が飛び交います。それを両者ともにいなして、合間に打つ打つ打つ。いつ終わるともしれぬ攻防はしかし、ソアさんの優勢のようでした。彼女の放つ炎の方が大きいのです。それに加えて速度も申し分ない。ヒウチさんは徐々に押されていきます。


 二人とも、これまで火に巻かれながら何度も戦って来たのでしょう。顔にはひどい火傷があり、体も同じくらい。どちらも満身創痍と言った方がいいのではないかと言う有様でした。しかし、二人の動きはそれを感じさせません。私から見ても早い動きで攻防を重ねていきます。



「ユウキさん。」

 私はユウキさんに耳を貸すように言いました。


「私が岩を放って動きを止めて変身します。あとは斬り伏せてください。」

 説明不足だと言うことは大いに自覚していますが今はこう言うことしか思いつきませんでした。


「わかった。まかせるよ。」

 ユウキさんは私を信頼仕切ったように頷きます。一片の曇りもない其の眼差しは私への信頼にあふれていて、尻尾が踊り出してしまいそうです。



「では、やります。」

 私は息を吸い込んだ。これをやるのは何度目だろか。体に負担がかかるので本来ならばあまりやりたくない技だ。でも、ユウキさんのために、私はやる。迷わない。

「壊れゆく山肌 崩壊の序章は来たれり 我が絶対なる山の力 この地勢を持って命ずる さあ全てを終わらせよう ダイホウラク! 」































ド「そういえば、この話長くない? まあ、戦闘をようやく書く気になったのは評価するけど、これでまだ、本戦も残ってるんでしょ? 筋に関係なくない? 」

石「それはそうなんだけど、この話の筋って、山に登ることが大半を占めてるから、たまにはこういう時期もあっていいと思うんだ。」

オソ「私と主人の出番が永遠にこないじゃないですか。」


石「⋯⋯ まあ、主人公が絡まない対戦に描写価値はあるのかというのは難しいところだ。」


ド「削る勇気も大切だと思うの。」


石「⋯⋯ まあ、まだ明日に関しては一文字も書けていないので、早く書かないとな。」


ド「執筆ペースは重要よ。だからあれほど1日一話と口を酸っぱくしたのに。」


石「いや、それ僕の目標だったから。自分で取り下げるのは問題ないから。」


ド「言い訳は見苦しいわ。早く進めなさい。」


石「了解です⋯⋯ 。」


オソ「⋯⋯ この石、私より下に見られてる気がするんですが。」

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