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異世界山行  作者: 石化
第4章:神闘会

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二回戦3

 上空から迫る槍の群れ。誰の目にもその激突は回避不可能なものに見えた。当事者たる修験連合のものたちも、その運命を受け入れたように目を閉じた。







 だが、諦めていないものたちもいた。僕たちが知り合った。オオミネ、ヒコ、ホウミツの三人だ。彼女たちは、しっかりと、迫り来る槍の方角。おそらく一部分が黒く槍で塗り固められているであろう空を見上げていた。


「あなたたち。上は私たちでなんとかします。向こうへの牽制砲撃を続けてくださいな。」

そんな風にオオミネは、おっとりした指示を出す。だが、オオミネの人徳だろう。それを聞いた神様たちは上空から迫ってくる死の恐怖を忘れてしまったのかのように。攻撃を再開した。これによって、再び、尾根越しの魔導合戦は均衡に持ち込まれた。一瞬だけ抵抗が緩んで気を良くしていた向こうの三人の神にとっては、青天の霹靂と言ってしまってもいい現象だったに違いない。少しだけ弾道に乱れが見られる。押しているだけに不可解だった。


「さて、後は頼んだよ。みんな。」

黄色のツインテールをひゅっと回して覚悟を決めたように上を睨むヒコは、ゆっくりと呟いた。いつもは元気一杯の彼女だが、今にも刺さらんとする槍の雨の迫力はその陽気な口をも重くしたようだった。

 だが、その目の光は微塵も失われてはいない。一人、浮き上がり槍群を向かい打たんとす。





「天を閉じ 天は暗く 日はまさに沈まんとす 翳り 翳り 日を喰め 一切を飲み込むはここなる岩

 天の岩戸! 」

詠唱と共に現われ出でるはあまりに巨大な岩。修験組の頭上を覆うように、巨大な一枚岩が、圧倒的な質量を持って現れる。


「さあ、こい!」

ヒコは勇ましく、煽った。

加速のついた槍が次々と、落ちてくる。単なる自由落下でも、穂先の鋭さが、位置エネルギーによって水増しされて、一撃必殺と呼んで差し支えないだろう威力だ。


その槍が岩に突き刺さる。耐えきるつもりだろう。だが、後から後から槍は降ってくる。どんどん穂先が潜り込む。大岩は今にも貫かれそうだ。


「流石にそこまで甘くはないね。」

ヒコは自嘲するように少しだけ笑みを浮かべた。


「開け 天の岩戸 我と共に 一切を飲み込め 」

追加で呪文を唱えるヒコ。悲壮な決意が見て取れるような静かな詠唱だった。



ごごごごご。重々しい音がして、岩が開く。生まれ出ずるのは暗く深い深淵。ヤーンの異空間の中にさらにもう一つの異空間が顕現した。





 岩に刺さるはずだった槍は全て、その深淵の中に飲み込まれていく。地上に串刺しの山を築くはずだった大量の槍は一つ残らず、消えていった。


「勝ってね。」

だが、槍を防いだ功労者として勲一等を授けられてもおかしくはないほどの働きをしたヒコは、その言葉を残して、同じように岩の中、暗闇の中へ消えていった。そういう技だったのだろう。発動したが最後、術者を飲み込むまでは止まらない無限吸引装置。天の岩戸の伝承を考え合わせて、僕はそういう結論に達した。

ヒコの最後の表情は穏やかなものだったので、その働きには満足しているんだろうけれど。

 

 岩は開いたときと同じように重々しく閉じて、一瞬のうちに消えてしまった。



⋯⋯ そういえば、異空間みたいだったけど、終わった後帰ってこれるのだろうか。ヤーンの世界と別の理が働いているのであれば、無理かもしれない。終わった後に誰かが裸踊りでもしない限りは。ウヅメ山なんて山あったっけな。


「あー。ちょっとヒコ回収してくるから、空間の維持はお願いね。」

「無茶振りやめようか!」


ヤーンとヤクシの愉快な会話が何らかのスピーカーを通してはっきり聞こえてきたから大丈夫そうだ。ヤクシも割と自由な神様だったはずなのに、ヤーンに振り回されている。あの人がトップで大丈夫なんだろうか。まあ、ちゃんと助けに行ってるから、ちゃんと主神してるなとは思うけれど。



 


 











ヘル爆弾たのしー(死んだ目


古戦場やめません?

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