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異世界山行  作者: 石化
第4章:神闘会

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試合の合間

久しぶりのシロが主役の回です

 いつの間にか僕とサクラは転移門のあった広場に立っていた。そこかしこで、同じようにキツネに包まれた顔の神様たちが顔を見合わせている。最初に言っていた通り、致命傷を負ったかに見えたものたちも、何一つ問題などなかったかのようにピンピンしている。さすがはヤクシといったところだろうか。健康と回復を司る神の本領発揮だ。



「じゃあ、時間もないことだし、二回戦に行きましょうか。」

 ヤーンの仕切りで大会は次のステージへ。⋯⋯ 時間がないのはひとえにヤーンが寝坊したせいだと思うけれど、触れないであげよう。疲れていそうだし。


「今度の出場者は、こんな感じよ。」

 同じように、画面上に大勢の神様の名前が表示された。読み取るのも一苦労だと思うけど、神様たちは何の苦労もなく読み取っているみたいで、入れ替わるように二回戦の神様たちが、会場入り口前に姿を現し始めた。僕らは離れる神様たちの波に混じり、その場所を後にする。先ほどまで本気で殺し合いとまではいかないけれど戦っていたのが嘘みたいな和やかな帰り道だ。娯楽に過ぎないのであろうことがよくわかる。競技剣道とかフェンシングなどと同じ感覚なのだろう。


「お疲れ様じゃ。」

 その途中で、片腕を空に掲げたシロに会った。笑顔で手を振るその姿はなんだか子供のようで少しばかりおかしくって笑みを誘った。バカにしているわけじゃない。彼女には、神の老成した落ち着き払った表情と並んで、時折見せるその子供のような動きが混在し、それこそが魅力である。なかなか見れないレアな表情なので、少しおかしくなっただけだ。見れて嬉しいのは紛れも無い僕の気持ちなわけだから。


「出迎えとは殊勝な心がけね。どう、シロ。勝ったわ。すごいでしょう。あんまり私をなめないでよね。」

 そんなことを言いながらも、サクラは褒めて欲しそうにチラチラと視線を送る。

 素直なのか素直じゃ無いのか。


「まあ、すごいと認めるにはやぶさかならぬと言ってみてもいいのじゃが。しかし、剣を危険に晒すような真似をしたのは、感心できんのう。」


「うっ。」

 サクラは言葉に詰まった。薄々自覚していたのかもしれない。⋯⋯ うん。死なないとはいえ、焼死してしまったら、割と嫌だな。2回くらい死にそうになったし、シロがサクラを責めるのもわかる。⋯⋯ 心配してくれていることがわかるから、嬉しくもあるけれども。


「まあ、過ぎたことじゃ。とやかくは言わぬ。じゃが、相棒と頼むのなら、少なくとも、神であろうと、誰であろうと、蹴散らせるように実力をつけるのじゃ。そうでなければ、わしが認めぬ。」

 シロのサクラを射抜く眼光は鋭かった。神の中でも重厚な経験を積んできたことをうかがわせる、隙のなく、強い目。だが、サクラはそれに対抗した。両手をぐっと握りしめ、シロへ負けないという想いを乗せて睨みをきかせる。


「私は、負けないわよ。あなたであろうと、誰であろうと。剣と一緒な限り私は絶対に負けない。」

 サクラの宣戦布告のような言葉は、烈火のごとく燃え盛るようだった。強い自負心と対抗心。そして、あの告白を聞いたからこそわかる、愛情のかけら。嬉しくないわけがない。サクラは文句なしに可愛らしい。お手本のようなツンデレ。白地に桃色が柔らかに色味を加えた髪はサラサラと流れるようだし、均整の取れた体は女神のよう。温泉での裸身のことが自然と思い起こされて僕は頭を振った。⋯⋯ というか、女神のようって、女神そのものか。まあ、いいや。


 でも、僕は、このサクラの気持ちにどう答えればいいのだろう。僕はユウキが大事だ。それは、絶対に変わらない。彼女のためにこの世界に来たし、彼女と一緒に旅をすることこそが幸せだった。僕の中のユウキの重みはとんでもなく大きい。サクラのことも好きだけれど、ユウキには比べられない。


「わかってるわよ。今の私じゃ、ユウキを越えられないって。でも、後ならわからないじゃない? 私は、諦めないわ。」

 サクラの情念を宿す瞳は、ひたすらにまっすぐに僕の目を射抜き、頭蓋に達した。目を通して、彼女の想いが、彼女の覚悟が、彼女の全てが、伝わって来た。

「⋯⋯ そうか。もうそこまで進めたのじゃな。」

 シロはサクラのことを思いやるような優しい口調でしみじみと言った。

「ならば、わしもお主のやりすぎを許そう。その程度のあがきは、当然してしかるべきじゃ。お主の思いは無下にできん。ユウキには悪いが、少しばかりお主を後援してもバチは当たらぬじゃろうて。」

 言い終えて、自分の言葉がおかしくなったのか、シロは呵々大笑した。

「かははは。心とは儘ならぬものじゃな。全くもって面白い。」



「バカに」

「してはおらぬよ。」

 サクラの勘違いをすぐさまに正すシロ。


「ただの一般論じゃ。お主も、どうしてそこまでの行為を持つに至ったのか、自分で説明することなどできまい? じゃから、心というものは面白いのじゃよ。心を読めても、それがなぜ、そのように流転していくのかなど、わしらにもわからぬのじゃからな。」

「なんだかよくわからないけれど、まあ、いいわ。」

 サクラは無理やり納得したようだった。


「なら良かったわい。わしもそろそろ行かねばならぬ。」

「二回戦にはシロが出るの?」

「その通りじゃ。お主らの守護神の強さ、存分に示してやるわい。刮目してみておると良いぞ。」

 シロはかっこよく保証して、去って行った。あの幼女、お母さん枠とおじいちゃん枠とイケメン枠を占有していないか。一人何役だよ。かっこいいけど。



明日から二泊三日で穂高に行って来ます。⋯⋯ 二年近く山に行っていないので不安ではありますが、楽しみです。 メモとろっと。

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