グダグダの極みの開会式4
新キャラに見せかけた既存キャラです
僕らが二つ目をぱくついていると、その美味しそうな匂いにつられたのか、行列めいたものができ始めた。行列効果でどんどん人が集まってくる。捌ききるまで辛いけれど、捌ききったら行列効果までも消えてしまうという矛盾。わざと行列を作るために、定員を少なく抑える店もあるとかないとか⋯⋯ 。
僕らは、さすがにもう一つなんてことは言えずに、挨拶して、その場を離れた。
「美味しかったねー。」
隣でユウキが満足仕切った声をだす。満ち足りて柔らかだ。
僕も同意を示す返事をする。なんというか、なにも考えずに美味しい食事を食べられて、とっても幸せだ。
そのまま僕らは又してもぶらぶらする。なかなか開会式が始まらない。どうしたんだろうか。外周の方には、芝生のような草原のままに残された一角があって、食べ物を手に入れた神様たちが、思い思いにくつろいでいる。
なかなか考えられた配置だ。どこかの公園か? ⋯⋯ というか、このスペースがあるのなら、昨日アサマのうちに泊まる必要なかったのではないだろうか。なんだか悪巧みの香りがするぞ。
「あら、久しぶり。」
そんな場所で、僕らは再び声をかけられた。このちょっと腰が引けてしまう声の主は⋯⋯ 。
「失礼ね。そんなにひどいことした覚えはないのだけれど。」
呆れ混じりに、しかし、少し寂しそうなタテが佇んでいた。いつも通りのタキシード。ただ、色は、黒ではなく、純白だった。黒いえりが覗く胸元は、神様の中では特異的と言っていいほど発達している。⋯⋯ 本当になんで、胸の大きさは普通な神様が多いんだろうか。誰かの趣味だろうか。
変なことを考えていた僕には、訝しげなタテの目線が突き刺さった。
しかし、僕は無言で後退る。僕は、悪意に敏感なんだ!
「被害妄想すぎるでしょう。」
今度は完璧に呆れ返った勢いで、タテは首を振る。
「いやだ。いじめっ子怖い。」
「剣⋯⋯ 。格好悪いよ。」
ユウキの好感度に飛び火してしまった。
「で、どうしたのさ、タテ。」
何事もなかったように、僕は問いかける。
「ここまでくるといっそ清々しいわね⋯⋯ 。」
言葉尻に変な感情が見えた気がするけれど、これは褒めてくれてるってことだよね。わーい。
僕ではなくユウキに向けて、タテはお疲れ様とでも言うように、優しげな表情を作る。
こらユウキ。我が意を得たりというように頷くんじゃないぞ!
「へえ。この子たちが、そうなのか。」
タテの後ろから別の神様が現れた。綺麗な黒髪を長く伸ばした和風美人だ。格好は、真っ白な巫女服を肩やら腰やらで大胆に切って露出が多い服装。端的に言ってエロい。そして、何よりも腰に差した長大な剣が目を引いた。僕も剣士の端くれだからよくわかる。下手したら、サクラの剣形態よりも結構な業物かもしれない。剣というものに特化した見事な一振りだ。
「ふむ。存外良いものだな。自分の強みを褒められるということは。私には、お前をこちらに送る原因となったという負い目があるが、それを差っ引いても嬉しい。」
開いた口から流れる言葉は、少しだけ男っぽかったが、それがかえって彼女の魅力となっている気がした。って、何か、変な情報が流れなかったか? ツルギが僕たちがこちらに来る原因となったとかなんとか。
「あの、それはどういうことですか? 」
ユウキも同じく疑問を覚えたようで、その人へ質問を投げかけた。
「言い遅れた。私の名前はツルギ。ヤーンの言うことには、私と同じ名前の子がいたから召喚したと言うことらしいぞ。」
なかなかに衝撃の事実がぶちまけられた。そんな言葉遊びみたいな理由で、召喚されたのか、僕。うん? でもそれならなんでユウキも一緒に召喚されたんだろう。
「二人の絆が並はずれたものだったとかなんとか⋯⋯ 。」
ツルギも詳しくは教えてもらっていないようで、その程度のあやふやな情報しか得られなかった。でも、それが事実なら嬉しいかも。ユウキとは、あちらの世界においてもちゃんと確かな絆があったんだなってことがわかったから。
「ふへへ。」
ユウキは幸せそうに相好を崩した。
「剣と私はちゃんと愛し合っていたんだね、あの時も。」
そんなことをその浮かぶようなふわふわした表情で、言う。
「そう言うことに、なるのか。」
僕も感慨深い。ただ、幼馴染としてなんとなく一緒にいただけだったように思っていたけれど、本当は、すでにお互いに思い合っていたと言うことになるから。
「まあ、ともかく、お前たちは、あの、ほぼ全ての神が動けなくなった最悪の事態を解決してくれた。同じ名を持つものとして、誇りに思う。」
そう言って、ツルギは握手を求めるように左手を差し出した。断る理由もない。こちらに連れてこられたことへの怨恨は全て乗り越えた。僕らは、固く握手を交わした。
⋯⋯ 右手を出そうとして慌てて左手に変える一幕もあったけど。みんな右利きだと思ってはいけません。
あと、テスト一つ!




