日々17「こんな池波恋物語後編」
「おい、いくら持ってる?」
カバンはもう荒らされて中身をぶちまけられていた。
財布がないことがわかった男子は早く出すようにせかす。
「も、持ってないです」
本当だった、財布は家に忘れてきてしまった。
だが相手は聞く耳を持っていない、
「うそついてんじゃねぇよ!」
お腹を蹴られる、痛い、苦しい、涙が出る。
「おい、服を脱がせろ」
絶望的な台詞が聞こえた。
「そ、そんな!」
「出さない方が悪いだろ?」
どっちが!・・・その台詞さえ、言う事ができなかった。
何人かの男子の手が伸びてくる、
「いや!!やめてよ!!」
手を押さえつけられる、
もう、私ダメなんだ・・・死にたい。
「い、いけな・・み、くん」
何でだろう、最後に、池波君を呼んでどうするのよ私、
でも、なんだか、池波君が、助けてくれるような気がした。
私の寂しい学校生活を、明るくしてくれたのは池波君だった。
私に初めて本当の笑顔を向けてくれたのは池波君だった。
笑えなかった私に、笑顔をくれたのは、池波君だった。
生きる勇気をくれたのは、池波君だった。
「おい、なにしてる」
その声は、よく知っている声だった。
「い、池波!?」
「何してんだ後藤?」
口調がいつもと違う、怒っている口調だ。
「お前、殺されたいのか?」
雰囲気すら変わるその台詞は、私に乗っかっていた男子全員を退かすには十分だった。
「・・・大丈夫かユミ?」
「・・・い、池波君」
「ちょっと待っててね」
脱がされた制服の上着を拾ってあげる池波、
そして男子たちを振り返る。
「・・・・死刑」
初めて池波君の怒るところを見た。
そして人を殴るところもはじめてみた。
止めようと思ったけど、それは一瞬で終わってしまった。
「ったく、破廉恥な変態ドモダゼ」
口調がいつもの調子になった。
「・・・ごめん、オレ本当来るの遅いみたいだな」
笑ってくれる池波君、
そして、私もやっと笑えるようになった。
「ありがとう」
足がすくんで立てない、そう言ったら池波はおぶってやると言った。
「じゃ、このままパーティーへ行くカ」
「う、うん」
ゆっくり歩いてくれる池波君、
私はなんとなく聞いてみた。
「どうして私が捕まっているのわかったの?」
「掃除に来なかったから」
「あ、そっか」
「・・・・ねぇ」
「ン?」
「・・・なんで私にそんなに優しいの?」
「・・・・ハイ?」
「私なんて、根暗で、クラスの異端児で、一緒にいても楽しくないでしょ?」
「・・・え?・・・いや、その」
「なんで、私に振り向いてくれたの?」
なんだか言いにくそうな池波君、
そっか、池波君は『優しいから声かけただけ』って言えないんだきっと。
「・・・本当、優しいね、池波君は」
「え?・・・アノ〜?勘違いしてませんか?」
「え?・・・どこが?」
真っ赤になる池波、だが、裕未は全く気づいてないようだ。
「・・・・ゆ、ゆみはさ、好きな人、いないんだよ・・・ね?」
「え!?・・・いや、そ、そんな何でまたいきなり!?」
「・・・オレは好きな人いるって、言ったよな」
「う、うん」
「その好きな子はさ・・・まぁ、おとなしい子なんだヨ」
「うんうん」
「それで、いつも寂しそうな顔をしてるんだヨ」
「うんうん」
「・・・でも、話しかけたら、やっぱりかわいい笑顔を返してくれるんだヨ」
「ふむふむ」
「それでいて・・・すっげー鈍感」
「ふむふむ」
「さて、オレの好きな人は誰でしょう」
「え〜、そんなのわからないよ」
笑って答える裕未、池波は大きな溜め息をつく。
「え?どうしたの?」
「オレの好きな人が鈍感すぎて困ってるの!」
「・・・・え?」
池波の告白に真っ赤になる裕未。
「え?・・え?」
「最初は、始めてみた時一目惚れ、そして、ずっと見ていたのに気づいてもらえず、やっとチャンスが来た時、初めて笑顔を見て、もっと好きになった」
「・・・え?」
「・・・オレの好きな人は、笑顔がかわいいのに、引っ込み思案な、佐原裕未、あなたです」
「・・・・・」
顔が赤いまま、裕未は固まってしまう。
ただ、裕未は一言だけ、言いたい事があった。
せめて気絶する前に言いたい事。
「わ、わたしも!」
≪池波君が、大好きです!≫
「ん?おう来たか池波」
「アァ、ショウカ、イマキタゼ」
「どうした?かたことが増えまくってるし顔赤いぞ?」
「・・・・・は、初めまして」
池波がおぶっている少女に気づくしょう。
「お、佐原さんじゃん」
「え?し、知ってるんですか?」
「おう、池波が大抵騒いでる時は佐原さんの話題だからな」
「ハハハ、殺すぞしょう」
「・・・おや〜?・・・二人とも顔赤いな〜」
ニヤニヤするしょう、
「イイから入れてくれ、ユミは疲れているんだヨ!」
「はいはい」
由貴のマンションの部屋に入る。
そこではいつものメンバーが顔をそろえていた。
「あぁ!裕未ちゃん?久しぶり〜!」
「あ、由貴ちゃん!久しぶり!」
「・・・エ?」
「な〜んだ、やっぱりしぇろうが言ってたの裕未ちゃんじゃん!」
「池波君由貴ちゃんと知り合いだったんだ〜」
なぜか小学校の時の友達だった二人、
「そ、ソウダッタノカ・・・ま、仲間が増えて結果オーライってことで」
一人で笑う池波、
裕未は明るく笑っていた。
「やっぱ、笑顔が一番だな」
本当は、オレが君から笑顔をもらっていたんだぜ?
池波は静かにそう心で呟いていた。
とりあえず、キャラ増えたな。byしょう