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日々15「こんなお花見」

桜の花吹雪が見ごろの4月、

富宝家の所有地のお花見専用の山も桜で満開である。

「しょうくん!こっちすごいきれいだよ!!」

由貴が走りながら大きな桜の木を見上げて言う。

「ほぉ、立派じゃねぇか」

しょうも遅れながら由貴に追いつき満開の桜を見る。

「こんなところに来て何するんだよ?花は見たからもう帰ろうぜ?」

「あら、悪魔様、今日はお花見といって、日本の伝統行事を行うのです、春の訪れである桜の開花にあわせて、桜の下で家族や友人とお食事をするのですよ」

「へ〜、外でメシを食べるのか」

悪魔もエリーも由貴の後を歩きながら話している。

「やはり富宝家の所有地は格別ね、桜の手入れが行き届いているわ」

「着眼点がずれてますよルリさん、桜を見に来たのですからもっと自然について感想を言ってください」

蓮が呆れながら言う。

「去年はフランスで春を過ごしましたから桜を見るのは久しぶりですわ、一本枝を折っていこうかしら?」

「お姉さま、そんなはしたない事は止めてください、それに、大切な自然なんですから粗末に扱ってはいけません」

「相変わらず堅いわね蓮は、私の妹でありながらどうしてこうも厳しいのかしら」

「そうよ蓮、少しはシャンを見習ってバカになりなさい」

「そうそう・・・え?ルリ、今なんて言いました?」

「え?ですから、シャンお姉様のように優雅な気品を持てと」

「あぁ、そうですか、そうですわね、蓮、あなたも私を見習って」

二人が蓮のいた場所に目を向けると、

既に蓮は先へ行ってしまっていた。

「ま、待って蓮〜、私が悪かったから〜」

慌てて追いかけるシャン、

「全く、仲のいい兄弟ね」

ルリが微笑みながら言っていると、後ろから池波が走ってきた。

「おいていくなんてツレナイじゃナイカ〜」

「池波君、あなた会う度に片言が増えている気がするけど?」

「キノセイキノセイ」

「せめて片言は語尾だけにして、聞き取りづらいわ」

「わ、わかりましタ」

二人も由貴達の後を追うのであった。


「大きな桜の木〜」

由貴が無邪気に見上げながら言った。

「ほんとだな、どれぐらいの樹齢だろう?」

しょうがそれとなく言う。

「ジュレイ?それフランス語?」

「あら?そんなフランス語聞いたことありませんね?」

「お姉さま、樹齢ですよ」

「木の表面を傷付けると出てきて昆虫のエサとなる液のことでしょ?」

「それは樹液ダゼ?」

「樹齢ってのは木の年齢のことだ!」

しょうがイライラしながら説明をする。

「そうですね、この木は樹齢500年程と聞きました」

「すげー、人間界でもそれだけ生きる奴っているんだな」

悪魔がエリーの話を聞きながら感心する。


「さぁ、早速ご飯にしましょう」

エリーが言うとどこからか出てきたサングラスにスーツの男達が大きなテーブルとイスをセットして去っていった。

「・・・どっから沸いてきた」

しょうが静かにツッコム。

「ほら、みんなイスについて!今日は私達がお料理して来ました〜」

そう言うとルリとシャンと蓮が持っていたリュックから重箱を取り出す。

「まずはトップバッター鷹世ルリ!一生懸命作りました〜」

ルリが蓋を取って作った料理を並べる。

「これは特製『フォアグラのパスタ トリュフ添え』、こっちは『サーモンとキャビア』そして『ツバメの巣のスープ』、更に『ビーフステーキ ルリアレンジソースがけ』!さぁ、召し上がれ!」

(絶対これはシェフに頼んで作ってもらったものだ)

しょうが心の中でそう呟く。

「ねぇルリ〜、これシェフに頼んでもらったダロ?」

空気を読まずに率直に言ってしまった池波。

「ダンッ!」

池波の目の前にナイフが突き刺さる。

「だ・ま・れ」

目が光っているルリ。

「いただきまーす」

血の気の引いた顔で笑いながら食べる池波だった。


「次は私ですわね、シャンの手作りお料理!今日のテーマは[和]ですわ」

笑顔で料理を並べるシャン。

「こちらは『おはぎ』という日本伝統の和菓子で、こっちはお餅で作った『ワラベ』・・・だと思います、そして『御饅頭』私の手作りです」

箱の中には正直得体の知れない物体が詰められている。

(う、うそだろ!?たかがお菓子作りでここまで失敗するか!?)

しょうが心の中で叫ぶ。

(あ、ありえないわ、本当に自分で作ったの!?)

ルリがズレた見方をする。

(・・・ルリのはおいしかったけど、シャンのは不味そうだ・・・)

悪魔が静かに呟く、

(・・・今度お菓子作りの教室でも開きましょう)

エリーがそう心に決める。

(・・・・お姉さま・・・)

蓮は心の中で泣いた。

「無理、こんなの食べれるわけないダロ!」

一人ぶっちゃけるバカ。

「え〜、い、一生懸命、がんばったのに〜」

今にも泣きそうなシャン、

瞬時にしょう達は目で合図しながら池波を睨みつける。

「ばかやろう!折角シャンが一生懸命作ったんだ!ちゃんと食べろ池波!」

「そうよ!食べれないなんて失礼よ!しっかりいただきなさい!」

「ほら!口開けろ!」

「レディーに失礼な方は許しません!」

4人が協力し合って池波の口にありったけのシャンの料理を入れる。

「ぐぁあがおいぐほががが!!」

そして無理やり飲み込ませる。

「どう?」

シャンが涙を拭きながら訊く。

「おいしいよ!」

池波の代わりに由貴が最高の笑顔で答える。

池波はそのまま失神した。


「さて、最後は私ですね、私は普通にちらし寿司を作ってきました」

蓮が色とりどりな美しいちらし寿司を並べる。

「おお!おいしそう!」

悪魔が喜んで一口食べる。

周りもその美味しそうな見栄えに喜んで一口食べる。


(ぐおっ!!)

(なにっ!!)

(うそ!!)

(そんなっ!!)

(くはっ!!)

次々と倒れる、そして、悠然と食べていられたのは由貴一人だった。

「おいしいよ蓮!」

「・・・もっと勉強します・・」

桜の花びらがきれいに舞っていた。


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