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魔法少女のプロローグ(前編)

人が本当の意味で絶望するときというのはいつだろうか。


取り返しのつかない失敗を犯した時だろうか?

誰かに裏切られてしまった時だろうか?

誰からも期待されず、捨てられてしまった時だろうか?

この世界に生きるということを諦めてしまった時だろうか?

友人や家族が目の前にして死んでしまった時だろうか?


・・・・・・どれもこれも違う。


人が本当の意味で絶望するとき。

それはきっと・・・・・・自分の()を自覚した時だ。


どれほど他者を思っていたとしても、

きっとその人ですらも、自分自身の死を一番に絶望するだろう。


そしてそれは・・・・・・・・・・




月の見えない新月の夜。

ただでさえ光のない暗い夜の路地裏。

そこにはただただ必死に逃げ続ける一人の男の姿が見えた。


「・・・・・・はぁ、はぁ、はぁ」


男は肩で息をするかのように。

必死に生きるために走る。

まだ・・・・・・まだ男は”希望”を持っているのだろう。


「・・・・・・ま・・・いた、か?」


先ほどまで騒がしいとさえ感じていた足音は一切聞こえなくなっていた。


男は安堵する。

ただ生きたいという思いを一心にしてここまで逃げてきたのだから。

それゆえにだろう。

その”油断”が一瞬の隙につながってしまった。


パァーン


・・・・・・そんな音がその静かな路地裏に反響する。


「う、がっ、あぁぁぁぁぁ」


どこからともなく聞こえてきた”銃声”に男の腕は撃ち抜かれていた。

感じたこともない痛みに、血が大量に抜けていく感覚に。

男は叫び声をあげて、その場に倒れこむ。


「ちっ、暗いせいで狙いがそれちまったか?」


いくつもの足音が痛みに苦しむ男のもとへと近づいてくる。

黒い服装で固められた現れた男たちの手には拳銃が握られていた。

誰が見ても、その黒ずくめの男たちの誰かが男を撃ったことは丸わかりだった。


「ゆ、るして・・・・・・くれ、俺は・・・まだ、死にたく・・・・・・ない」


今にも死にそうな様子で男は絞り出すようにしてそう命乞いをする。

まだ男は希望を捨てない。

まだ男は絶望というものを知ろうとしない。


ただそんな命乞いを聞くような連中ではなかった。


「俺たちはなぁ?そんなことを聞きたくてお前を追い回してたわけじゃねぇんだよ・・・・・・わかるか?もうお前は死ぬしかないんだ」


それはあまりにも非情で無常な余命宣告であった。

男はその言葉を聞いてやっと自分には希望が残されていないということを知った。

知ってしまった。


「あ、あぁ・・・・・・なんで、こんな・・・・・・ことに」


もう希望なんて男には残されていなかった。

当たり前だった。

逃げても追いつかれ、命乞いをしても無駄で、助けを求めようにも来るはずがない。


目をつぶる、もう生きることができないのなら、

せめて潔く死にたいと思ったから。


銃口が向けられる。

今度は確実に人間の急所へ向けられて。


「じゃあな、ひも男」


そして・・・そして・・・・そして・・・・・


「悪人はっけーん」


・・・・・・それはこの薄暗く血生臭い路地裏に似つかわしくない女性の声だった。

その声とともに、何かが肉をえぐるような音が聞こえてくる。

目を開けてもよかった。

ただ・・・・・・目を開けてはいけないように感じてしまった。

だからこそ、その”音”が止まるまで、男は目を開けることはなかった。


女性の声が聞こえてから数十秒・・・・・・いやもしかしたら一分は経っているだろうか。

気が付くとその音はすでに収まっていた。


「あのー、お兄さん大丈夫そうですかぁ?」


再び静寂が訪れたその場に先ほどと同じように緊迫感のない一人の女性の声が響く。

恐る恐る男は目を開ける。

真っ先に目に入ってきたのは一人の少女だった。

どこかで見たことのあるような魔法少女のようなコスプレのような恰好をした少女。

状況を全く理解できない男の目に次に飛び込んできたのはその少女の背後の光景だった。


「・・・・・・うっ」


そこにはどう表現していいのかわからなくなるほどに、

辛うじて()()()()()()()()と認識ができる『塊』があった。

薄暗い路地裏がただただ惨い赤色に染まっていた。


あまりの光景に男は吐いてしまう。

人殺し、あるいは殺人鬼でさえ、この光景は悲惨であると考えるだろう。

殺されそうになっていた自分自身でさえ、少しばかりの同情を覚えてしまう。


「あー、大丈夫ですか?ごめんなさい、こんな光景を見せちゃって」


この惨状を生み出した張本人であろう女性は悪びれた様子は一切なかった。

それどころかどこか機嫌が良さそうにニコニコと笑っている。

その少女に男は狂気を覚えながらも言葉を絞り出す。


「・・・・・・き、みは?誰、だ?」


「あれあれ?この服装でわからないんですか?ふふん!まぁ良いでしょう!私はですねー!」


と、その少女は一拍を置いて、その言葉を口にする。


「悪人を裁く魔法少女ですかね」


その瞬間のことだった。

男の頭上に突如として”影”が現れる。

夜の暗い路地裏。

本来であれば現れるはずがないであろう”影”はその一瞬にして男の全体を覆って・・・・・・・




暗い暗い新月の夜。

あまり長居したくないとさえ思えてしまう薄汚い路地裏で、

私はその『モノ』を眺めていた。


「・・・・・・これで浮気を常習的に行ってた悪人に裁きは下せたかな」


そのついでとしてよくわからない悪人たちのことも殺すことができた。

拳銃を持っていたことからしてそれなりに大きい組織か何かに属していると考えられる。

そうなると、このクズ男を数日かけて追っていて結果オーライというものだろう。


と、目の前に転がっている肉塊を見てそう考えることにする。


「今日のところはまぁいっか、最近は徹夜続きだったからなぁ・・・・・・眠たいし、帰って寝よっと」


そう言葉をこぼし、少女は大きくあくびをするとそのまま()()()()()()()()()であろう身体能力で建物で囲われた路地裏から出ると、建物の上を経由しながら我が家へと帰っていくのだった・・・・・・




*****

ちょっとしたおまけ

物語の中、追いかけられていた男は少し語られていたようにかなりやばい男で何人も女性をはべらせては金を巻き上げると、それから使い物ににならなくなったら捨てるという生活を繰り返していました、そしてそんな生活をしている最中にとある組織の頭の娘に手を出したことから組織の者から追われる立場となりました。

ちなみに男は自身のやってきた行いに対して最後の最後まで特に言及もしていないため、特に悪びれていないです。

なんなら主人公の少女に殺される直前には主人公に迫ろうとしていたぐらいです。

最終的には物語の通り、主人公によってむごたらしく殺されました。



ものすごく中途半端および変な終わり方をして申し訳ありません。

話を作っていく内にこのまま続きを書いてしまったらかなり長くなりそうだったので一旦ここで切り上げることにしました。

プロローグとしては前編と後編で分けることにします。

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