魔法少女8
「ほんとによかったの朱音?」
優君の魔力と記憶の封印処置を完了させたことを完全に確認した後、金髪ショートヘアーに黒い盗賊?のような少しボーイッシュな魔法少女服を着た天ちゃんが心配そうに私に声をかけてきた。
私そんなにひどい表情してるかな?
「大丈夫だよ、心配かけてごめんね?優君の封印処置は完璧にできたし、永久的に私のことを思い出すことはないよ絶対にね」
「そうじゃなくて…んーいや朱音が決めたことか…やっぱり何もない」
こういう時に天ちゃんは本当に空気というか人のことをよく考えて踏み込むラインを見極めてくれるので助かるなぁ、空ちゃんなら「私たちはまだあいつに負けるって決まったわけじゃないんだから記憶封じなくてもいいじゃん!!みんなで頑張って勝って楽しく生きようよ!死ぬことなんて考えたくないよ!」って泣きながら言うだろうなぁ…
でもしょうがない勝てる確率がバカみたいに低いんだ。普段なら天ちゃんのそんな言葉を聞いて確かにそうだ頑張ろうってなるけど今回ばかりは無理だ。
私だって負けるつもりはないけど、直感で分かる多分勝てないって、ていうかみんなわかってるんだ、風ちゃんも、天ちゃんも、涼ちゃんも…みんな言葉に出してないけどこそこそと死ぬ準備を始めてる。
涼ちゃんは勝てなかった場合あの化け物がいる境界を無理やり封印するための契約をヌイたちと進めてる。封印といっても本当に一時的なものだ10年持てばいい方で10年たったらまた境界が開いて町が滅ぶほんとに一時しのぎだが私たちが負けたらそうするしかない。
風ちゃん、天ちゃんは家族や友達と精一杯思い出を作ろうと全力で遊んでる。お小遣い全部使うんだーって言っておしゃれな服とかバッグとか化粧品を買ってる天ちゃん、モデル業でたくさん収入がある風ちゃんは家族と沖縄に旅行に行っていた。
まぁ、私も家族とたくさん思い出を作るために全力で甘えてるんだけどね。んーほんとは優君ともイチャイチャしたいよー
ただこの期間で私もいろいろ考えたんだ。ほんとに優君の記憶を消しちゃっていいのか?って、ずっと自問自答してけど、こないだ優君を部屋に招いて魔法少女のことをカミングアウトして記憶のことについて説明して、窓から脱出された時に答えが出たんだ。それまではほんとにこれでいいのかずっと考えてたんだよ?ほんとだよ?あの時の優君の目は絶対にあきらめないっていう目をしてたんだ。優君の彼女を一年もしてきたんだ。わかるんだ。
記憶を消してあげないと優君はずっと苦しむんだろうなぁ…ってこの人ほんっっっっつとうに私のことが大好きだから、世界から私の情報が消えたとしてもあきらめず私のことを探すんだろうなぁって。
そんなのはだめだ。正直そこまで愛されてるのはうれしい、ほんとうにうれしい。けどだめだ。優君は幸せにならなきゃだめだ。私を、こんなバカな私を救ってくれた彼だけは、幸せにならなきゃそんなの嘘だ。
だから記憶を消した。優君と私のつながりをすべて消した。
私だってこんなことしたくなかったよ、好きな人の記憶を消すなんてしたくなかったよ、でもあの化け物に勝てたとしても、細い希望の糸を手繰り寄せて勝てたとしてもその次また同じような敵が来たらどうするの?勝てばいいだけじゃんとか言われるかもしれないけどまたこんな心配をして優君を不幸にするかもしれない恐怖と戦わないといけないの?
耐えられないよ…
私は弱いんだ、ごめんね優君…
そんなことを考えてまた泣いてしまった私を天ちゃんは優しく抱きしめて一緒に泣いてくれた。
私はいい友達をもったなぁ…
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リリリリリ、リリリリリ
「んあ…?」
いつもの目覚ましが鳴り俺はのそのそとうっすい布団の中から這い出てスマホのアラームを止める。体を起こし体を伸ばすことで固まった体を動かす、ゴキゴキ!っと体から音が鳴ったのでびっくりした。えぇ、何こわい俺そんなに寝てたのか?
そう思いスマホで日付を確認すると意味の分からない日付だった。ん???どういう?え??明らかに俺が知ってる日付から数日飛んでるんだけど?怖い…俺何日寝てたんだこれ?
「ってことは学校はどうなってるんだ…これ…」
そう思い学校から連絡が来てるかどうか確認すると連絡が来ていない、その代わり友人たちからこう連絡が来ていた。
朱音ちゃんから聞いたけどインフルなんだって?お大事に!!と
朱音?
朱音って誰だろう?ちゃん付けされてるってことは女の子なんだろうけど、俺の記憶には学校にそんな女の子はいないしな…ただインフルエンザ扱いで休むことになってるなら都合がいい…のか?
いやいやいやよくないよくない!!こわいこわいこわい、ほんとに何だこれ!?病院?病院に行った方がいいのか!?どの病院に行ったらいいの!?
と、あまりの恐怖からかスマホを使いおんなじ症状になったことがある人がいるのかを調べていたらピンポーンとインターホンが鳴った。
「はーい!」
と適当に返事をして玄関を開けるとそこには師匠がいた。
「む、弟子君ここにいたのか3日前から連絡が急に取れなくなったせいで心配しいたぞ、朱雀たちの戦いは今日だというのに大丈夫なのか?」
いつも通り長い髪を下ろしたお人形さんみたいなきれいな顔から心配したぞという感覚が伝わってくる。
「いやーすいません師匠、俺なぜかここ最近の記憶がなくて…」
俺がそういうと師匠は驚愕したような表情を見せ、すぐに俺の左胸に手を置いてきた。なんだろう?と俺が疑問に思っていると、師匠は愕然とした表情を見せた後
「そうか…そうなったか…」
そう言って、とても悲しそうな表情を見せた。
「すまんな弟子君、こうなっては私はかかわることができない、本当にすまない」
「え、あハイ?」
師匠はそう言い残し肩を落としたまま用事ができたと言い去っていった。
何だったんだ?また謎が増えたぞ…
って、あれ師匠ってなんの師匠何だっけ…
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「ご武運を」
境界の監視をしてくれるヌイがそう声をかけてきた。相変わらずこのヌイは私のとこのヨンと違って堅苦しいなぁ
「ありがと」
私はそう言ってうしろを見る。後ろには覚悟を決めたみんながいる。
「風ちゃん」
「はーーい!!」
「天ちゃん」
「うん」
「涼ちゃん」
「はいはーい」
一人ずつ仲間の名前を呼ぶとみんな返事をしてくれる。私の大事な仲間だ。誰一人死なせたくない仲間だ。
「じゃ、いこっか?」
笑顔で皆にそういう、笑え私、ニヒルに笑え、みんなの心に火を灯すのが私の役目だ。気を張れ、頑張れ、虚勢を張れ、信じろ、憂いはもうない、あとはやるだけだ。
いつも通り私は拳を前に出す。
「いこーーか!!」
風ちゃんが元気にそういって私の拳に合わせるように拳を前に出す。
「頑張ろう!」
天ちゃんがむん!と気合を入れて拳を前に出す。
「ふふっ」
涼ちゃんがニコニコとしながらゆっくりと拳を前に出す
四人で円になって拳を突き合わせるのはいつからかな?かなり前から始まった私たちのルーティーンだ。
「set open red magical girl dress!!」
「天空を支配する私!!」
「狡猾!」
「呪詛をあなたに!」
その言葉とともに私たちは魔法少女に変身して境界に入った。
境界に入れたことを確認した瞬間天ちゃんが魔法を行使する。境界内部に入って一秒もたっていないので魔法を当てるべき対象を視認できていないが風ちゃんのことだ必ず当てられる。この子天才だし
「天爆ぅううううううう!!!!」
風ちゃんがそう叫ぶと同時にかなり遠くの方で空間が爆発した。風ちゃんが即発動できる中でも一番の火力を持った魔法だ。余波がすごい、ありえないくらいの熱波が境界に入ったばかりの私たちを襲う。が気にせずに私は詠唱を始める!
「火 南 朱 天之四霊の一柱たる炎帝 猛き焔を我に捧げろ!纏え!集え!!」
私は火力こそ凄いけど詠唱に時間がかかるのが難点である。ただ詠唱が完成すれば私の炎はすべてを燃やす!!
魔力を回せ、今私ができる最高の魔法を作れ!奴を!一撃で消し炭にできる魔法を!!
「呪ノ榴弾」
私が魔力をためている間にも仲間はあの化け物を攻撃している。風ちゃんの天爆のおかげでどの方向にいるのかが分かったので涼ちゃんが攻撃を開始する。
涼ちゃんの魔法は呪いの魔法だ、あのバカでかい榴弾の中にはえげつない量の呪いが込められている。当たれば呪われ呪いに耐性がないと即死するレベルの呪いが込められた榴弾がえーとたぶん100発くらい?すごい速度で飛んでいく。
「誘導するよ!!天の道!!」
さらに風ちゃんが空間そのものを操って100発すべてが奴に直撃するように誘導する。があの化け物が「■ァぃぃぃ■!!!」と叫ぶと奴にあたる前にすべて手前で爆発する。あれは風ちゃんの魔法!?あんの化け物め!前回に比べて私たちの魔法をかなり使いこなしてる!
ていうか風ちゃんの攻撃からほとんど時間がたっていないんだよ!ちょっとはひるんでてもいいでしょ!何発かは当たってよ!
よく見ると風ちゃんの魔法は直撃していたはずなのに奴を形成する顔面の一割も破壊できていないんだ。くっそ、やっぱり前回私たちみんなの魔力を吸い取っていたせいで防御面がバカみたいに強化されてる!ていうかよく見ちゃった製で気分が悪い!!あいつは5メートルくらいの大きさの黒いねちょねちょした物体に意味が分からない量の顔がくっついている化け物なんだ!本当に気持ち悪い!!
けど!私の詠唱の第一段階が終わった!!
「顕現しなさい!!終局 朱天ノ斧!!」
ここからは斧に魔力をためる!!私のありったけを!!
「集え!集え!集え!朱雀の焔よ一点に集え!!」
「涼ちゃん!!残りの魔力はどれくらい!?」
「残り八割よ!!」
風ちゃんと涼ちゃんがそう声を掛け合う、くそもう2割も吸い取られたのか!境界に入った瞬間から魔力を吸われていたとしてもそんなに時間はたってないのに!
「朱音!私はあと6割!!急いで!!」
私の目の前から座り込んだ天ちゃんがそう声をかけてくる。
「うん!!」
そう返事をして私はさらに集中する。今だけだ、今だけなんだこんな大技に使える魔力をためることができるのは!
今回の私たちの勝ち筋はこれしかないんだ!風ちゃん涼ちゃんが時間稼ぎ兼、奴をできる限り削る、天ちゃんが私の周りの空間を遮断して魔力を吸収されないようにする、そして私がその時間を利用して魔力をため一撃で焼却する。
だけど想定より天ちゃんの魔力の減りが早い!あの顔の化け物が天ちゃんの魔力を吸い取ることにリソースを割いているんだ!ただでさえ空間を遮断する魔法は難易度が高く燃費も悪いのに!それにお気づいた風ちゃんがさらに仕掛ける
「こんのぉ!!こっちを見ろぉぉ!!天爆ぅうう!!」
ズガガガガガガガガガ!!!と音を立て風ちゃんの魔法が炸裂する。風ちゃんの魔法は空間そのものに作用するため避けるとか無理なはずなんだけど、奴は風ちゃんの魔力を前回の戦いで吸収しているため風ちゃんとおんなじ魔法を使える。だから爆破点をずらされてる、普段の天爆は敵の体の中心にある空間が爆発するのに明らかに位置をずらされてる。
本当にやりづらい!!
「呪ノ藁人形」
断続的に爆発する奴を呪いの対象として設定し終わった涼ちゃんの次の魔法が発動する。いつの間にか握っていたものすごく根源的な恐怖を煽る藁人形に真っ黒な杭を刺すと奴の無数にある顔の一部から杭が生える。
「ぎゃ■ああああああああああ■ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ■ああああああああああああああ」
うるっさい!!!きいてはいるんだろうけどほんとにうるさい!あときもい!
「天捻!!」
痛みで悶えている間に好機と見た風ちゃんがさらに攻撃を仕掛ける。空間を捻じり、奴の一部を捻じり切る魔法だ。ぶちゅっと音を立て奴の顔がねじれたがすぐに元に戻りそうになる。やっぱり風ちゃんの魔法は食らったらまずいと本能で理解しているのか全力で抵抗してくる、がもう十分だ。
魔力が溜まった
「終焉 朱天ノ斧」
完成した。私の最大火力!完成した瞬間天ちゃんが私のために張っていた結界が燃える。さらに周囲の空間すらも燃えていく、魔力も空気も概念さえもすべてを燃やし尽くす斧、それが私の切り札、あとはこれをあの化け物にあてるだけ!!
「天ちゃん!!」
「わかってる!」
私が天ちゃんに声をかけると天ちゃんはものすごい速さで奴に接近する。それを見て奴も攻撃を仕掛けようとするが、風ちゃんの「天捻」と涼ちゃんの「呪ノ藁人形」がそれを妨害する。
その隙を見逃す天ちゃんじゃない、天ちゃんの魔法が発動する。
「シフト!」
その言葉と同時に私の目の前に奴が転移してくる。さっすが天ちゃん完璧だよ!!!
「■ああああlうぇrl!!!」
あぁ、慌ててももう遅いよ
「獄」
私はそう言って斧を振り下ろし、奴を燃やし、焼却した。
やった!倒した!これでハッピーエンドだね!!




