魔法少女7
「師匠無理っすよこれ」
俺は今『魂の門』から一時離脱して師匠に愚痴の電話を入れている。
もうね、アホかと…難易度がおかしいだろ、と愚痴を入れているのだ。なんだよ無尽蔵に出てくる自分の分身(倒しても復活するしかも2倍の数になって&分身は自分よりちょい強い)を倒して門を開けろって…
「いや、そのすまないな、私も自分自身で潜ったことはなかったんだがそこまでひどいとは…」
師匠も俺の話を軽く聞いて軽く紹介してしまいすまないと謝罪を入れたうえでドン引きしていた。ですよねこれドン引きする内容ですよね?
「ただ、あそこは修行にはもってこいっすね、戦闘経験は馬鹿みたいに積めたんでかなり強くなったすよ、はじめは1mくらいしか進めなかったのに、最後には50mくらいまで進んでたんで」
ほんと、ほめてほしい、誰でもいいから、バカみたいに戦ったおかげでとっさの判断力?というか戦闘感?がすっごい伸びたし、火力も再生力も伸びた。某呪い漫画の反転ほにゃららと同じくらいの速度で腕とか生やせるし、分身たちも今の自分より強いと言っても攻撃一回当てれば消えるのでコツさえ覚えればかなり進めたのだ
「すごいな君、私なら早々にリタイアしていた気がするぞ」
とか何とか師匠は言っているがこの人はなんやかんやでリタイアせず挑み続けてそう。負けず嫌いっぽいし、こないだの戦闘訓練で俺が師匠にまぐれ当たりとはいえキックを当てた時なんか涙目で「当たってないもん!」とか言ってたし…あれ?師匠萌えじゃね?
「とりあえず、二日くらいこもってたみたいなんで一度出てきたんですよね。ずっとあそこにいたら頭おかしくなりそうだったんで」
「あぁそれがいいだろう、『魂の門』は自身があきらめなければ何度でも挑戦でき…二日?まさか二日間ずっとこもってたのか?」
「あ、はいそうっすよ」
あそこの休憩ゾーン(スタート地点)にはなぜか寝るところと食事するところとトイレが併設さてるので普通に生活できるんだよね、娯楽はないけど
「お、おう私は弟子君が怖くなったよ…高校生ってこんな精神性してないと厳しいの??」
「じゃ、休憩に付き合ってくれてありがとうございました師匠、久々に人としゃべれていい気分転換になったす!では!」
「あぁ、頑張ってくれ?」
そうして、俺は師匠との通話を切った。さて、いい感じで休息をとれたのでもう一度行こうか、『魂の門』に。え?入らないという選択肢はないのかって?はははそんなもんあるわけないでしょう、あそこをクリアしたら強くなれることが確定している、しかもいるだけで戦闘経験がつめるところだぞ、潜るに決まってるんだよなぁ時間ないし
「さ、行こうか」
俺はぱちんと両手で頬をたたき気合を入れたうえで、右手の親指を心臓の付近に置きこう告げた
「開門」
すーーと意識が溶けるような感覚の後、俺はいつもの休憩室のようなところに立っていた。
休憩室の奥にいる分身たちが「え?マジかよ戻ってきたよこいつ」といった感じの表情をしていたがさすがに気のせいだよね
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「チッ!!!!優君の魔力反応が消えた!!」
「ちょっと!朱音!落ち着いて!急に学校から抜け出したらまずいよ!!」
しょうがないじゃん!二日間くらい反応なかった優君の魔力が急に現れたんだから!確かに「お手洗い!!」だけ言って教室を抜け出すのはさすがにやばいかもしれないけどそんなことを言ってる場合じゃない。
私は少し、いやかなりイライラしながら、学校から追いかけてきた風ちゃんの方を向いて叫んだ
「風ちゃん!このあたりに優君がいるはず!感知できない!?」
「え、あーもうやってるけど完全に魔力反応が消えてるよー!一応消えた地点にはマーキングしておいたけど行ってみる?」
「ーーーナイス!!!風ちゃん!!さすがだよ!!」
私はそう言って風ちゃんに抱き着いた。
この子ほんとにすごい!私の大雑把な魔力探知ではそこまで細く感知できなかったので最後に優君がいた場所まで捕捉できる風ちゃんがいなかったらまた逃げられるところだった!
『魂の門』は使ったらその場で完全に消えるけど、退出するときは消えた地点にリスポーンするのだ!
なので次優君が出てきたら
「これで詰みだね!」
私がたぶんここ最近の中でも一番の笑顔でそう言うと風ちゃんはなぜか、後ずさった後「怖い…」と呟いていた。なんでだろう?
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「さて、と帰ってきたぞー我が地獄ー」
俺はそう言いながら休憩室にある椅子に座りにオレンジジュースを飲んでいた。
おいしい、なんでこの部屋に俺の好きなメーカーのオレンジジュースがあるんだろうとか少し疑問に思うこともあったがもう気にしないことにしている。
気にしても答えがわかるわけでもないので脳のリソースの無駄である。まぁ一応こういうことがあったなと忘れないようにしているのだが…今度朱音にでも聞いてみるか、師匠は知らなかったし
と無駄なことを考えオレンジジュースを飲み終わったので、準備体操を開始する。
いろいろとこの試練をクリアする方法を考えてきたんだ。絶対にクリアするぞー!
まず、一回目の挑戦だ、いやまぁホントは数百回目なんだけど、現実世界に戻ってこの試練をクリアするためにいろいろと考えたんだ、俺の分身は正直強い、今の俺より強い少しだけ強いただ脆い、すっっごく脆い、そこまで威力のない攻撃でも一撃で倒せるくらいには脆いんだ。
だから俺は前回の挑戦では走ることにした。それも全力で炎を出してタックルするような形で。タックル一発食らえば倒せるからなあの分身
するとどうなったか、50メートルまでは進めた。ただそれ以上はいけなかった。
理由は簡単俺の分身たちが対策をしてきたからだ。遠距離から炎の槍を投げてくる攻撃という対策を。
今までの俺は正面から殴り合いをずっとしていたので気づかなかったがどうやらあの分身は対策を考え実行するという知能をしっかりと持っているようである。
これに気づいたときはあまりの難易度のやばさに頭を抱えたよね…なのでタックルでずっと直進はできない、ならどうするかと考えたのだが脳筋な方法しか思い浮かばなかった。
そう、攻撃受けても全力で再生してダメージ無視してさらに分身の人数が増えないように攻撃せずに進み続けるというものである。これに対する分身たちの対処方法は俺を一撃で殺すことだがそれは無理だ。どれだけ火力を高めてもしょせん俺の分身である。攻撃力はカスである。
「じゃ、再生の炎を身にまとってっと」
軽く力を入れると俺の体に炎が巻き付いてきた。この2日ほどずっと戦い続けてきたので魔法の扱いはかなり習熟していると思う。というか俺の炎はどうやら敵を燃やすより回復、というか再生のほうに適正があるようなのだ。
師匠は不死鳥の炎みたいだなと言っていたので俺の中二心が爆発し奥の手の必殺技には不死鳥モチーフの技名を付けてしまったのは内緒である。
そういえば『魂の門』の中にいるときだけ全力で技名を叫んで必殺技を使っているのだが明らかに技名を叫んでいるときの方が威力が上がってるんだけどこれはいったいどういうことなんだろう…
っと思考が脱線してしまったがしょうがない。こういうことを考えておかないと頭おかしくなりそうだし、だって今も分身に全力で攻撃仕掛けられてるからね!!腹を貫かれたり腕を手刀で斬り飛ばされたり顔面を燃やされたりしてる、現在進行形でね。
攻撃された瞬間に再生しているから痛みは最低限だけどそれでもメンタルがゴリゴリ削れてる音がするぜ!
あっ!てめ!足は狙うな!足一本でも吹き飛べばバランス崩して歩けなくなるだろ!すぐ再生されるとしても転びそうになるんだよ!っておいコラそこの分身!かみちぎろうとするんじゃない!
そんなこんなでもう30分ほど歩いていると、魔力が半分を切ってきたので体の再生に対するリソースを魔力の再生に割いて魔力の回復に努める。俺の再生の炎はマジでこういったところに対してチートだと思う、なんだよ魔力を使って出した炎で魔力を回復って…
今再生の炎はえーと体7対魔力3の割合くらいかな?そのせいで体の負傷した部分の再生が遅くなり痛みがかなり増したけどまだ我慢できる、ずっと涙が止まらないけどしょうがない朱音のためだしこれくらいは我慢できる。多分あと一時間くらい我慢すれば門まで行けそうなので頑張ろう
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いい
魔力回復の速度が足らないことに気づいたので体の再生に対するリソースをぎりぎりのラインまで削って魔力を回復させているのだ、そのせいで再生までかなりのタイムラグが開き、気がおかしくなりそうな激痛が体全身から発せられている。
それでもこの痛みを我慢できないからという理由で魔力の回復をやめて体の再生にリソースを割くなんてありえない。理由?そんなの簡単だもうすぐ門の前だからである。
門の前にはボスがいる。巨大なボスがいる。多分大きさは6メートルくらいあると思う。ゴールである門が見えてきたと同時に門の前に立っているあの鬼が見えてきたのだ。門の前に仁王立ちし目を閉じ、ただ立っているだけだがあの血のようなくらい赤色をした体を見るだけで脳がアラートを鳴らす。身にまとっている装備だってそうだ、散々使い込まれたであろう傷が無数にあるのにあの毛皮鎧からは圧力しか感じない、あの皮いったい何の生物の皮だよくそ野郎
正直あれを見た瞬間今のこの脳筋回復作戦が通じないと気づいた。ここで豆知識だが俺が再生できてるのは脳を全力で守っているからである。
脳がなくなれば考えることができなくなり魔法を使うという行為ができなくなりそのまま再生できずに死ぬ。正直俺の分身は俺と同様に火力がかなり低いので脳を焼かれる、もしくはつぶされる前に回復できるのだが、あの鬼は違う。俺の分身じゃないし、全身からほとばしらせている魔力から見て直感だが100パーセント一撃で俺の防御を抜き俺を殺せる。それもパンチ一発で消滅レベルまで持っていける
歩いていたらただの的になる。となると戦闘するしかない、全力全開の戦闘だ。魔力は満タンにしておきたい、がたぶん勝てない。種としての格が違う。あいつが人間だったとしても俺はミジンコとかそのレベルだと思う、それくらい格が違う
だから全力で、俺の魔力すべてを一気に使い速度であの鬼を突破する、戦闘といってもそれしか勝ち目がないそれだけあの鬼は別物だ見ただけでわかる。挑んだら死ぬ
だから突破口を探せ、痛みを無視して頭を回せ考えろ考えろ!!!このペースならあと二分で奴の射程圏内に入る。自然とわかるんだ、たぶん奴がやろうと思えば俺が今いる場所も攻撃範囲なんだろうけどあの一定のラインを超えるまでは手を出さないと、俺の周りに群がるこの分身たちは再生の炎から攻撃用の炎に切り替えて俺の周りを焼き尽くすように燃やせば即倒せる、まぁ倒した瞬間に別の分身が攻撃してくるが一瞬間が開くので全力スプリントに移行することは可能だ。
なら作戦は決まった。
周りを燃やす、その後全魔力を使ってダッシュして門に触れる、師匠は門に触れればクリアと言っていたので勝ち目はあるんだ。1パーセントくらいの可能性は!覚悟を決めろ俺!やれ!行け!臆するな!
そうして覚悟を決め周りのやつを燃やし始める準備をしているとボシュッと音が鳴り周りから分身が消えた。
「は?」
常に激痛が走っていたので体に力を入れ続けていたせいか、急にストレスから解放され、その場に前に倒れこんでしまった。
まずいまずいまずい、すぐ立て!今すぐ立て!ここは!奴の射程圏な
「ほう、もうここまで来たか」
その言葉と同時にズンとした圧力が俺の体にのしかかった。
は、はははしゃべんのかいこの鬼さん…倒れた瞬間にすぐに立ち上がり前方をにらみつけると鬼が急に言葉を発した。というかなんだよこの魔力の圧は、空気が重い、汗が止まらない、俺はここで死ぬと体中の細胞が叫んでいる
「存外早かったものだな小僧、後数年はかかると踏んでおったのだが…我の直感もあてにはならんか」
鬼が言葉を発するたびに体が震える、言葉の一つ一つに俺の全魔力を超える魔力がこもっている。ふざけろよ、このくそ難易度が!!ちょっとでも勝算があると考えていた俺がバカだった。こいつたぶん俺が認識できない速度で俺を殺せるぞ!なんなんだよ!こいつは魔力が言葉に乗っているということすら気にしていない!本当にただ普通に話しているだけだ!それなのにその言葉には俺の全魔力を超える魔力がこもっている…無理すぎるだろうが!!
「む、すまんな小僧ほれ今魔力を弱めたぞ、これでしゃべれるであろう?」
弱めたといっても存在感が消えてねぇよこのバケモンが
「…おい。鬼さんよこれ難易度バグってねぇか?」
精一杯虚勢を張り笑顔を浮かべながら鬼に言葉を投げかける。笑顔といっても汗はだらだら、ひざはがくがくと笑っているので情けないにもほどがある、全力で見栄を張ってこれなので本当に笑えない
「ふむ?『魂の門』の第一門の試練はすべてこのようなものだと認識しているが…」
「うっそだろ…勝てる気がしねぇぞ…」
そう言いながら全力で体に魔力を回し門まで走る準備をする
「なんだ、やるのか?」
あっ、死んだ。奴が俺の方に一歩踏み出した瞬間頭に浮かべていたこいつを出し抜くためのアイデアがすべて無駄だと悟った。一瞬で頭が真っ白になった。鬼は俺を殺すために攻撃なんてする必要がないたぶん、息を吹きかけられれば俺は即死する。そんなレベルの格の違いが俺とこの鬼にはある。
「というか、小僧よ主は急いでいるのではないのか?我と戦うのもいいがまだ門を触っていないのだからここで死んだらまた初めからだぞ」
「…戦わなくていいのか?」
「ーーあぁ、そういうことか勘違いしていたのだな小僧、ここは第一門だぞ我を出し抜いて門に触るなどという試練にしてしまえば一生涯攻略できんだろうが、この第一門は分身に対処し我の興味を引くことができるかの試練だぞ」
なんだ、どういうことだ、いまだに降り注ぐえげつない圧力のせいでうまく頭が回らない、からからと情報がすり抜けていく
「喜べ、小僧貴様は見事、我の興味を引いたぞ、ーー我の器として精々成長してくれ」
鬼はそう言って一瞬で姿を消した。
「……っ、はぁ……はぁ……っ、ちょっと……待って……ふざけ…」
たぶんこの時点で俺の精神は限界だったのか、ものすごい荒い息を吐きながらその場に倒れこんだ。
「なんだよ、あの鬼…シャレになってねぇ」
つーか、あの鬼めいろいろと情報を落としていきやがったが今は門に触れることが先だ。
震える体に活を入れ、一度胃の中にあるものを吐き出し、すっきりとさせる。ここに来てからオレンジジュースしか飲んでいなかったからか吐しゃ物には胃液くらいしか含まれていなかった。
ほぼ死体、というかゾンビのような姿のまま俺は第一門まで歩き、門に触れた。
すると、門がゴゴゴッと音を立てて開いたと同時に俺は現実世界に戻っていた。んでその場で倒れこんだ。いろいろ限界です。いやホントに
「はあーーーーー、クリアしたけどなんか納得いかねぇ…」
そんな思いを吐き出しながら、門が開くと同時に習得した新しい魔法について考える。使い方は勝手に頭の中に流れてきたのでどんな魔法かすぐに分かった。だからこそ言える。
「これなら勝てるかも…」
そんな希望ともいえる魔法を得たことを師匠に報告しようとスマホに手を伸ばすと、コツ、コツ、コツと俺のすぐ近くから足音が聞こえた。
「優君、久しぶり」
朱音がすぐそばにいた。さっきまで膨大な魔力にあてられていたからか朱音の魔力に気づくことができなかった。
ただ唐突に表れた朱音はやっぱりきれいで、少し呆然としてしまった。
どうやら俺が『魂の門』に閉じこもっている間に夕方になったのか夕焼けに照らされる朱音は俺が一目ぼれをした時よりもずっときれいでずっとはかなくて、それで泣いていた。
ぽたぽたと涙を流している朱音を見て俺は立ち上がろうとしたがなぜか力が入らなかった。よく見ると俺の周りに魔法陣が展開されている。
いやな予感がして逃げようとしたけど朱音が俺の胸に飛び込んできたので反射的に抱えてしまった。
「ばいばい、大好きだよ」
朱音はそう言って俺の唇にキスをした。
そうして
俺の魔力、それと朱音と出会ってからの朱音に対する記憶だけが封印された。




