魔法少女21
「状況は!?」
かすかに聞こえる爆発音を聞きながら軍服のようなどこか威圧感を与える服を着た20代後半ほどの女がそこかしこで必死に連絡を取り合っている職員に半ば怒鳴るように声をかける。
「報告します!現在守衛隊及び魔法使い部隊の一部と襲撃犯四名が交戦中!」
「被害は?」
「ーー過半数が戦闘不能です…」
職員がよこした報告を聞き軍服を着た女…魔法少女協会戦闘部隊及び魔法使い部隊長官 御剣 剣理は被害状況の深刻さを改めて認識する
「直ちに応援を送れ!現在協会に滞在している…上位ランカーの魔法少女にも応援を要請しろ!」
「了解!弓の魔法少女、星の魔法少女、大地の魔法少女に応援を要請します!」
「長官!使い魔現着しました!映像出ます!」
一人の職員がそう報告したのち指令室の中央のモニターに映像が流れ始める。そして暴れまわっている侵入者4人の姿を確認した。
「敵影確認!侵入者は…朱雀いえ焔の魔法少女、空の魔法少女、呪いの魔法少女、氷の魔法少女です!」
「なっ!?朱雀だと!?なぜ朱雀が協会を襲う…」
「長官!守衛部隊全滅を確認!魔法使い部隊残存戦力残りわずかです!」
「何とか持たせろ!応援を要請した魔法少女たちはどうなっている!」
「すでに出撃しています!残り2分で現着予定!」
「相手が朱雀では弓、星、大地でも荷が重い!私も出撃する!ここは任せたぞ!」
「了解!ご武運を!」
御剣 剣理はそう言い残しすぐさま襲撃地点へと移動を開始した。
「いったい何が起きているのだ…」
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「…」
眼を閉じていても感じるまばゆい光が収まりしっかりと自身の脚が床を踏みしめている感触が伝わってきたので俺は少しづつ瞼を開けていく。すると目の前には天ちゃんがいた。少し視線をずらすと天ちゃんの腕にはシロと契約した証である紋章が刻まれていたのでしっかりとシロたちも転移できたことが分かり少し安堵する。
「お、ペーパーナイフもちゃんとある」
腰に手を当てるとベルトに吊り下げていた我が愛剣の存在も確認できた。
「…成功したみたいだね」
俺が自身のチェックをしていると天ちゃんがまだ少し涙を流した跡がある大きな瞳で俺を見てそう声をかけてきた。
「そう…だね、お疲れ様天ちゃん」
「うん、優君こそお疲れ様」
俺たちは日本に無事に帰ってきた。
「で、天ちゃん…ここってさ」
「あ、うん私の部屋だよ?一番思考率が高い転移先はやっぱり私が一番長く過ごしていた場所だから…」
俺はその言葉を聞きぐるりと部屋を見渡す。すげぇめちゃくちゃ女の子の部屋だ…朱音の部屋に比べるとすっごく女の子女の子してる…そうして興味深そうに部屋の内装を見ていた俺にものすごく弱いパンチが飛んできた。ぽすっと俺の肩にあたった拳の持ち主の顔を見ると顔を真っ赤にしていた。
「…見すぎ」
「うっす」
これは俺が悪い
「あと靴脱いで」
「うっす」
室外から転移してきた俺たちは普通に外靴を履いていたので部屋がこれ以上汚れないように靴を脱ぐ
「って、そうだ早く朱音たちに連絡を取らないと!」
「うっす…天ちゃんスマホの充電器貸してくんない?モバイルバッテリーでもいいけど」
「うん、ちょっと待っててね」
ガサゴソと充電ケーブルを探す天ちゃんを見ながら現在の時刻が分かるものを探す。お、あったあったデジタル時計をこの時計ちゃんと日付と湿度が分かる時計だ…って
「は?」
「え、何どうしたの優君?」
「日付が…」
「日付が?」
デジタル時計の日付の部分を指さす。
「転移してから一日しか経ってない…」
「ん?」
「…」
「「なんでぇ!?」」
俺と天ちゃんはそう絶叫した。
「ととととととりあえずおちつこう」
「そそそそうだね!」
「俺たちは向こうの世界で数日間過ごした。これは間違いない」
「うん、そうだね」
「ということは…」
「ということは?」
「どういうことだ?」
あ、天ちゃんがずっこけてベッドに倒れこんだ。
「予想だけどいい?」
ベッドに倒れこんだまま天ちゃんは自身の予想を放し始める。
「世界によって時間の流れる速さが違う、のかもしれない…おそらく」
「…ありえそう」
「ほかにもいくつか仮説は立てられるけどこの説が一番しっくりくる気がする」
「かもね…ま細かいことは置いておこうよ、正直ラッキーだし」
俺の場合朱音を助けるために学校さぼってバイトもさぼっていろいろしてたので結構まずいのだ。転移してからこっちでは一日しか経っていないのならかなり助かる。
「だね…両親への言い訳とかもしやすいし…」
そうして天ちゃんと話しているとスマートフォンの充電が0パーセントから3パーセントくらいになったので朱音と連絡を取るために連絡アプリを起動する。
「とりあえず、朱音に電話かけるよ」
「うん、じゃあ私は…お風呂入ってくる!」
「あ、はい行ってらっしゃい?」
天ちゃんはそう言って猛ダッシュで収納ボックスから着替え一式を取りドアを開けお風呂場にダダダっと走っていった。ちなみに収納ボックスから出したときにばっちり俺にも見えていたのだがそんなことを一切気にすることなく天ちゃんはお風呂に入る準備をしていたので本当に女の子として限界だったのかもしれない。ちなみに出した下着の色はピンクの花柄の奴だった。
「がう」
「はい、クロさんごめんなさい」
紋章から聞こえた非難するようなクロの声が聞こえたので素直に反省する。でも!みえちゃったものは!しょうがないと思います!
そんなことを考えつつ俺は朱音に電話をかけた。
「ん?つながらない?」
呼び出し音はしっかりとなっているが一向に朱音が電話に出ることがない、とりあえず一度電話を切り朱音から何かメッセージが来ているか確認する。すると数件メッセージが届いていたので読んでみる。
「やっべ」
俺はすぐに立ち上がり天ちゃんのもとに向かう、やばいやばいやばい!!朱音さんがやばい!
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優君
絶対に助けに行くから…
協会襲撃して転移先を聞き出すから
待ってて、大好きだよ
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俺の彼女がでかい組織にカチコミに行ってる!!止めなきゃまずい!転移先で天ちゃんからいろいろ聞いてるんだ。魔法少女協会の規模のでかさは!日本だけじゃなく世界中に支部があることも俺は知ってるんだ、そんな組織と正面からやりあったら大変だ!
「天ちゃん!朱音がやばい!」
天ちゃんの魔力をたどりバン!と勢いよく扉を開ける。
「へ…?」
「…」
そこには黒色のパンツを脱ごうとパンツに手をかけているすでに上半身がすっぽんぽんの天ちゃんがいた。徐俺は数秒間停止しその光景を目に焼き付けた後バタンとドアを閉めた。
「っすぅーーーー」
やらかした。「がう…」紋章からクロのバカだこの人って感じの諦めが混じった声が聞こえる。でもまぁやらかしたことは仕方ない、しっかりと脳内フォルダに保存しておこう。いやぁ…きれいな形でしたね…
そうして脳内映像を保存していると数秒後ゆっくりと扉が開いた。しっかりと服を着なおした天ちゃんが真っ赤にした顔で俺を見ている。とりあえず土下座するか…そうして土下座の体制に移行していると天ちゃんが口を開いた。
「…責任、取ってもらうから」
バタン、またも扉が絞められた。
「え」
え?
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【襲撃開始数時間前】
優君と天ちゃんが協会の奴らに転移させられてから12時間ほど経った。あれから私と風ちゃん、涼ちゃんは魔法少女協会がある東京に向かう準備をしていた。
「魔力量は?」
「ぜんっかい!」
「回復済みよ」
二人からしっかりと返事が返ってくる。私も回復済み、フェイスみたいな化け物が出てこない限りずっと戦っていられるはずだ。なんたって私の魔力量は世界一だって協会から判定を受けているんだ。それもあって魔力切れなんて今まで起こしたことない。今回の戦いは例外中の例外だった。
「じゃあ、出発しようか」
二人に声をかけあらかじめ呼んでいた駅まで行くためのタクシーに乗り込もうとすると、タクシーの前に誰かが立ちふさがった。
「少し時間をいただきたい、よろしいか朱雀殿」
少し魔力を体にまといいつでも応戦できるようにしながら声の主を確認する。
「…?小学生の女の子?」
ランドセルを背負ったものすごくかわいらしい小学生がいた。え?だれ?
「おそらく私のことは知らんと思うから自己紹介させていただく」
「あ、うん」
私がそう返事をしていると涼ちゃんはタクシーの運転手さんに声をかけ少し待っててくださいとお願いしているのが見えた。風ちゃんはなんだなんだ?と興味深そうに女の子を見ている。
「私は青野 瑠華小学5年。氷の魔法少女をしている」
「お、おう…」
この子普通に魔法少女だって言い放ったよ…タクシーの運転手さんもいるんだけど…あ、涼ちゃんがタクシーの運転手さんの耳をふさいでる。運転手さんは美人な涼ちゃんに唐突に耳を防がれびっくりしているがなんか嬉しそうである。大丈夫?それ、運転手さんに変な性癖目覚めない?
「そして、三月 優の師匠でもある」
「ーーへぇ…」
おっと、魔力がかなりあふれちゃった。隣にいる風ちゃんが怖がってる。
「今回、弟子が魔法少女協会に襲われているのを遠くからだが確認した。そして転移魔法陣で転移させられていることも知っている。あの時は救援に入れず申し訳なかった。だが今回は弟子のためあなた方に同行したい、おそらく協会に行くのであろう?」
「ふーん、証拠は?優君の師匠だっていう」
「証拠になるかはわからないがこれを見てほしい」
女の子、いや青野 瑠華ちゃんはそう言って私にスマホを渡してきた。なんだろうと思い画面をのぞいてみると変顔をしてピースをしている優君と同じく少し恥ずかしそうにしながら変な顔をしている瑠華ちゃんが写っていた。
「ごめんね、信じるよ、後優君を助けたら叱っておくね?」
「?なぜ叱るのかはわからないが信じていただけて幸いだ」
あのバカ彼氏はこんなかわいい子に何をやらせてるのかな?
「うーん?朱音ぇ~よくわかんないけどその子仲間になったの?」
「そうだよ~天ちゃん、いろいろ聞きたいこともあるしとりあえず車に乗ろっか?あ、瑠華ちゃんは準備大丈夫?」
「あぁ、心配無用だ。昨日のうちに私の師匠に手伝ってもらって東京行の新幹線のチケットもとってある」
「いいね…じゃ、いこっか」
私たちはタクシーに乗り込み駅に向かって出発した。
「朱音ちゃん、とりあえず運転手の人には暗示かけておいたから色々お話しても大丈夫よ」
「おっけー、涼ちゃんありがとね」
タクシーに乗り込んだ私たちは涼ちゃんの暗示が終わるのを確認し話し始めた。
「とりあえず、私たちも自己紹介しよっか?」
「そうね、じゃあ私から…大学生をしてる涼風 涼呪いの魔法少女よ、よろしくね」
「次は私!高校二年音羽 風!空の魔法少女って呼ばれてるよ!よろしくね!」
「最後は私かな?柊 朱音焔の魔法少女それと優君の彼女です。よろしくね」
三人がそろって自己紹介をする。こうした自己紹介は魔法少女をするうえでかなり重要だったりする。基本的には魔法少女には○○の魔法少女みたいな感じで自身の使う魔法をわかりやすくした通り名が協会からもらうことができるのだ。この通り名が結構大事で初めて協力する魔法少女がいても自己紹介一発でどんな魔法を使うかなんとなーく想像できるため連携を取りやすい、そのため魔法少女に会うと自己紹介をするっていうのが恒例行事だったりする。
「よろしくお願いする。あなたたちの情報はかなり有名だからしってはいるのだがな」
瑠華ちゃんはそう言いながら苦笑いをしている。あははまぁ私たちめちゃくちゃ強いからね…そのせいでフェイスの討伐とかいう役目を回されたんだけど…
「そうだ、瑠華ちゃん私あなたにお礼を言わないといけないんだった…」
危ない危ない、お礼は大事だ。しっかり言わないと…
「お礼?」
「うんお礼だよ、あなたが優君を強くしてくれたから私たちは助かったんだもん、だからお礼、助けてくれてありがとね」
私のありがとうに続いて涼ちゃんと風ちゃんも続いてありがとう、とお礼を言っていく
「いや、私は何もしていない…弟子君が頑張ったからだよ」
「ふふ、それはそうだけどね…瑠華ちゃんがいないと優君はたぶん途方に暮れてただろうし」
瑠華ちゃんは年上に感謝を伝えられ瑠華ちゃんは恥ずかしそうにしている、超かわいい…妹にしたい…
「しかし…あなた方が懲罰部隊に襲われているとき私は何もできなかったのだ…お礼を言われると申し訳なくなる」
ありゃりゃ、うーんあの時はしょうがないと思うけどなぁ、近くに瑠華ちゃんの魔力なんてなかったしほんとに遠くで見ていたんだと思う、確か氷の魔法少女の師匠はあの銃の魔法少女だったはずだしあの堅物ちゃんが理由を確かめず懲罰部隊と戦うことを許すとも思えない、うん…やっぱりしょうがないよ
「でも今助けに来てくれたじゃん?それでいいんじゃないの?」
風ちゃんが何を気にすることが?といったあっけらかんな感じで瑠華ちゃんに声をかける。うんうんその通りだよ。瑠華ちゃんが気にすることじゃないよ、実際あれは私のミスだし。まさか自爆覚悟で転移魔法を用意しているとは思ってもみなかった。
あぁ思い出すだけで自分の無能さに腹が立つ
おそらくあの転移魔法は術者は安全な場所に転移しているはずだ。比較的近くで見ていた涼ちゃんが術者のばばあの足元には自爆用魔法陣のほかにもう一つ魔法陣があったって言ってたし、自分だけ協会に転移するためのセーフティーか何かだろう。無駄にきちんと用意してきやがって…
でも優君は天ちゃんと一緒に転移したんだ。天ちゃんと一緒なら安心できる。戦闘力、サポート能力、魔法の応用力、頭の良さ、どれをとっても天ちゃんは超一流だ。
しかも天ちゃんは男の子にほんとに興味がない、まーじでない、いまだに初恋すらまだの超おこちゃまだ。あんなにかわいいのに…という私も優君が初恋だったりするので強くは言えないけどね
その点を加味しても信頼できる。だから今私がやることは優君の心配じゃない、協会をどうやって痛めつけるかだ。
まっててね二人とも、必ず助けに行くからね!




