魔法少女14
「魔力重点!炎月!!」
「ほっ!」
虎型の境界の獣を見つけた瞬間俺は両拳に炎を纏い、天ちゃんはそこら中にカードをぶん投げた。
「優君合わせて!」
「おっけー!ってきたぁ!?」
「グ■アアアアアア■アアアアアアアア!!」
虎型の境界の獣はまず初めにわかりやすい脅威(炎)を吹き出している俺に向かって駆け出してきた。ってはっやい!?俺の身長の3倍くらいある体躯からは予想できない速度で詰め寄りそのまま猫パンチを繰り出す。受け流す?迫りくる虎型の境界の獣の手がでかすぎて下手に流せば頭を怪我する可能性があるから無理!なら避ける!瞬時に体の力を抜きその場に倒れこむようにうつ伏せになる。
ブオンッ!と頭上からものすごく早いものが通り抜けた音がする。よっしゃ!ギリギリ避けられた!避けられたことに安堵しつつ即立ち上がり虎型の…めんどいから虎でいいや!虎に向かって炎を飛ばす。
「3!」
あぁそういうこと!了解天ちゃん!俺は天ちゃんのカウントダウンとともに天ちゃんの意図を理解し、右足に魔力をため始める。魔力をためながら炎を虎に飛ばすのはかなりしんどいけどしょうがない!頑張れ俺!
「2!」
虎ははじめは炎を避けていたが俺がずっと飛ばし続けるのを見てらちが明かないと直感で感じ取ったのか炎を体に浴びながらも突進してくる。
「1!」
またもやすごい速さで近距離まで肉薄されたが問題ない!魔力は完全にたまった!虎はお手をするように大きく手を振りかぶり俺を叩き潰そうとする。
「今!シフトっ!」
シュンッ!と音が鳴り俺は虎の真横に転移した。ははは!最高の場所だ!唸れ俺の右足!軸足をしっかりと地面に固定し奴の顔面めがけて蹴る!!
「鳳脚」
ボギュ!!という肉がつぶれる音とともに虎の頭は陥没し、さらに後方に向かって吹き飛んで行った。うーんクリーンヒット!!
「わぁ…いい蹴り持ってるじゃん」
「どうもっ」
わーいほめられたぜ
「…うん、境界の獣の活動停止を確認、討伐完了だね。いぇい!」
そう言って天ちゃんは俺に向かって手を上げ近づいてきたので俺も手を挙げる。
パチン!
というきれいな音を立て俺と天ちゃんはハイタッチした。いやぁ…サポートがある戦いってすばらしいね…ガチで助かるぜ
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「さて、優君戦闘お疲れ様だけどちょっと頭を貸してくれない?」
虎を倒した後、天ちゃんが出してくれた水を飲みながら休憩していると天ちゃんがそう声をかけてきたので俺は頭を天ちゃんの方に向ける。
「ちがう」
頭をペチンと叩かれた。
「真面目に?」
「真面目に!」
はい
「とりあえず俺が気になるのは二つ、境界以外に獣が出てきたこと、もう一つは虎を殺したのに奴の死体が消えていないということ、だね」
「うん、私も一緒」
俺は師匠にこう教わった。境界の獣は奴らの世界から俺たちの世界に侵攻する際、必ず境界を経由せねばならない。そのため魔法少女は境界の獣が境界から出てこないようにするために境界内で討伐しようとする。そして境界の獣は死ぬと光になって消える。これは俺も実際に見た現象であるので知っている。
のはずなのだがこの虎、普通に境界の外にいるし、死んでも死体が消えていないんだよね
そう普通に異常事態である。
「最近海外で境界から獣が出てきたなんて報告は上がってきていないはず…というか出てきてたら大ニュースになってる。」
「まぁうん、あんなのがいたらみんな動画とって拡散するもんね」
恐るべき現代社会、情報はすぐさま世界に出回るのだ
「さらに死体が消えない…一応昔の記録で境界の獣が境界から出てしまった時の討伐記録を見たことあるけどその時の記録には死体が残ったなんて記述はなかった。死体が残ったなら絶対に記録してるはずだし…」
うーん、なぜか俺の第六感がものすごくアラートを鳴らしてるんだけど、あー嫌な予感がするぅーー朱音とイチャイチャしたい…
「ーーーここまさか境界の獣の世界?」
俺は膝から崩れ落ちた。
10分後、そばにある岩に座り込んで呆然としている俺と天ちゃんがだだっ広い荒野に座り込んでいた。ちなみに空気はかなり重い
「どうしよう…」
「どうすんだこれ…」
状況はかなり悪いどころか絶望的である。
「天ちゃん、世界から世界の移動…要するに異世界転移する魔法とか使えたりする?」
「するわけないよ…一応向こうの世界には私の魔法陣がたくさん残っているから私が魔力を感知できれば転移することはできるけど…違う世界の魔力を感知とかできるわけない…」
「はは、やべぇ」
「優君、眼が死んでるよ」
「天ちゃんも目が澱んでるぞ」
すげぇな、美少女が目を澱ませてるところなんて初めて見たぜ…
「はぁ…ていうか魔法少女協会の懲罰部隊はどうやってこんな異世界転移なんか可能にしてるんだよ…」
「たしかに、転移魔法は魔法陣を入り口と出口になるように二つ用意しないと転移できないはずなのにしかも世界観の転移なんてどれだけの魔力が必要になるか…」
「うーん、とりあえずもう一度あの洞窟調べてみる?」
それくらいしか調査できることが残ってない気がする。
「…うん、念のため調べてみよーーーそうだ!!そうだよ優君!!あの洞窟に私たちは転移してきたんだ!てことはあそこには魔法陣が設置されてたってことだよ!!」
「え?どういうことだってばよ?」
「つまり!あの洞窟には異世界転移用の魔法陣が残ってる!」
「ーーー急いで戻る!!!」
「全速力で走るよ!!」
俺たちはダッシュで洞窟の中に戻っていった。洞窟内は天ちゃんのカードがまだ残っていたので明かりはしっかりついており安全に最奥まで走り抜けることができた。
「天ちゃん、魔法陣の痕跡とかある?俺にはさっぱりわかんないけど」
「うん、うん!!ある!あるよ優君!!ほとんど消えかかって入るけどある!待ってて!急いで私のカードに魔法陣そのものを転写するから!」
おぉ、すごいそんなことができるのか…ってこれもしかして天ちゃんが俺と一緒に転移してくれてなかったら詰んでたんじゃ…ぞわっときたぁ。一気に冷や汗が噴き出たぞ。しかしこれで確定した。完全に魔法少女協会は俺を殺しにかかってたということが。
「よし!できた!この魔法陣があれば向こうに帰れる!」
「マジか天ちゃん!君は最高だ!」
「けど…今すぐは無理かもしれない、とりあえず今から子の魔法陣を起動させるにはいくつかやらないといけないことがあるんだ」
「ほう」
「まず一つ目、この魔法陣と向こうにある私の魔法陣を接続すること、魔法陣の形式が違うから少し時間がかかるけどたぶんこれは何とかなる。次に必要なのは魔力、だいたい朱音10人分くらいの魔力を注げば起動できる。これは優君の魔力回復があるから即クリアできる。最後に場所だね、できれば魔力濃度が高いところで起動したい。周囲に魔力が満ちていいると魔法陣そのものも安定するから、今この周辺は私たちを転移させるために周囲の空気中の魔力を吸ったせいか魔力が薄い…だから移動は必須かも」
「なる…ほど、天ちゃん敵には最短何日でできそう?」
「…10日くれればできる」
「…」
「…」
がんばろう、まじで
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「優君!!!!!!!」
くっそ!やられた!優君と天ちゃんがさらわれた!戦い始めるときに魔法陣の反応がなかったから油断した!まさか転移魔法陣をあのばばあ本人に刻んでいるとは思ってもいなかった!私はすぐに近くにいる懲罰部隊の雑魚を掴んで尋問を開始する。
「あの転移魔法陣はどこにつながってる!!答えろ!!」
私がそう怒鳴るように聞くと懲罰部隊の人は首を振って知らないとしか答えない、ぐるりと周りを見渡してほかの雑魚どもを見るけど全員首を振るだけだ。
「涼!!」
「したいけど今は無理よ…魔力がないもの…」
涼ちゃんに呪いをかけてもらって尋問しようと思ったが涼ちゃんは魔力がすっからかんの為変身すらできていない。最後の魔力も優君の捕縛魔法解除に使ってしまってたからだ。
「あ゛ああああ゛!!!!」
私はイライラを発散するために全力で地面を殴りつける。ズガガガガガ!!という音とともに地面が陥没しそこら中にひびが入ったが気にしない。これくらいこの雑魚どもが隠蔽するからどうでもいい
「ふぅぅぅ…」
大きく息を吐き気持ちを落ち着かせる。焦っても優君は帰ってこないんだ、なら今私ができる最善を考えろ!優君には天ちゃんがついてくれてるんだ!天ちゃんなら信頼できる彼女なら絶対に優君を守ってくれる。
「ーー涼ちゃん、風ちゃん!魔法少女協会に向かうよ!」
「ふふ、それが一番の近道だもんね、いい答えよ朱音ちゃん」
「え、うん?」
風ちゃんはあんまりわかってなさそうだけど、涼ちゃんはすぐに理解してくれた。
「私は魔力が完全に回復するまで12時間くらいかかりそう、涼ちゃん風ちゃんは?」
「同じくらいよ、とりあえず東京行の新幹線のチケットを取っておくわね、専用通路は使えないだろうし」
確かにそうだ。魔法少女は魔法少女協会が管理している移動用通路を使って全国を転移できるが今回それを使うにはあまりにもリスクが高すぎる。
「ありがとう涼ちゃん!」
「それと今日はみんなでお泊りね、また襲われる可能性もゼロじゃないわ」
「確かに、なら風ちゃんの家がいいかな?」
「え、うんいいけど…どういうこと?」
「風ちゃんあとで説明するわ…」
予定と目標は決まった。ならあとは実行するだけだ。首を洗って待ってろ魔法少女協会、なんとしてでも優君と天ちゃんを転移させた先を吐かせるからな…




