魔法少女9.5
「器の小僧よ、貴様は何をしておるのだ?」
「おぇーーーー」
何って吐いてるんだよこの野郎!言わせんなよ恥ずかしい!きらきらとした物体が流れ落ちるが目の前の鬼は汚物を見る目で見るだけである。リアクションがすっごく薄い
ヤッホー皆さんどうも今俺はなぜか鬼の前にいまーす。いやホントに何を言ってるんだこいつみたいな目で見るのはやめてほしい、だってそうとしか言えないんだもん。
目の前にその気になったら俺のことをぺろって食べることができるんだろうなぁって思える存在感の違う鬼がいるんだ。格が違う、存在感が違う、種としての完成度が違う鬼がいるんだ。そりゃ吐くって…
ていうか意味が分からん、俺玄関を開けただけだぞ、なんでこんなことになってるんだ。普通に存在感だけで吐いちゃったよ…
「ここは貴様の魂の中とはいえ、いささか目の前で嘔吐されるのは気分が悪い、とっとと行け」
鬼がそう言ってヒュッっと手を振ると、一瞬の浮遊感とともに景色が移り変わった。あ、嘔吐はさすがに嫌だったんだ。ごめんね鬼さん気を付けるよ、できるかぎり…
「いや、でっか…」
気づくと目の前にでっかい門があった。ホントになんだよこれ、おそらくというか絶対に記憶がない期間にあったこと関連だろうなということはわかるがマジで俺はいったい何をしてたんだよ。
そういえばあの鬼はいなくなったのでいろいろ考えるくらいができるレベルの思考能力が戻ってきた。いやまぁまだ全然現状を呑み込めてないんだけどね!あー怖かったぁ
えーと今の俺の現状!目の前にでっかい門!右側にはなんもないただ広い空間!左側も何にもない空間、後ろには俺がたくさん…
「気持ち悪いわ」
なんで俺分身してるのぉ…怖いよぉ…しかも分身全員からそこはかとなく敵意みたいなのが出てるし、とりあえず後ろに行くのはだめだとわかったので、現状唯一のできることは一つ
恐る恐る門を触ってみた
「またっすか…」
再度浮遊感が来て景色が変わった。
と思ったらなぜか俺は半透明になっていた。それに浮いている。普通の民家の屋根くらいのところにふわふわと俺が浮いている。ていうか主婦の人と目が合ってる気がするけど完全にスルーされてる。
ヘイ、そこのおばさん洗濯物を干すよりも絶対俺に注目すべきだぜ!とか現実逃避をしていたが2分ほどして冷静になった。なんだよ2分前の俺何してるんだよ。なんで気づいてもらうために空中でタップダンス踊ってるんだよ。タップ音なんか空中でならねぇよ頭おかしいんか?
いやまぁあれだけアピールしてもおばさんが俺に気づかなかったということは人から俺のことは見えないってことに気づけたのでまぁ2分前の俺には目をつぶろう。仕方ない仕方ない
ただ、いったいどういうことだろう、ていうかここはどこだよ
そう考えそこらじゅうをなんとなーく気分でふわふわと移動していると、昔の俺の家があった。
「わぁ…」
おっかしいなぁこの家は両親が離婚したときに少したってから売って即解体されたはずじゃない?俺は半ばパニックになりながらも壁をすり抜け家の中に侵入してみる。
両親がいた。小さい小学生くらいの俺がいた。
幸せそうに、テレビを見て笑いあって…家族みんな仲がよさそうで
俺はその光景を見て吐いた。
また景色が変わった。俺はまだ半透明のままだ、頭ガガンガンする。痛い
次もまた俺の家だ。両親がけんかをしている。俺のテストの結果を見て言い合いをしている。
小学生の俺はただ茫然としている。そりゃそうだこの日は初めてテストでちょっとしたミスをして一問だけ間違えてしまったテストを両親に見せたんだっけ?
いつも通りの100点じゃなく95点の答案用紙、母はそれを見て俺をいきなり殴ってから俺が差し出したテストの答案用紙をビリビリに破いたんだ。そのあと父が帰ってきてから母がそのことを父に報告し父にも殴られた。
そんで両親のけんかが始まった。こんなところでミスをするなんてありえない、お前の育て方が悪い、お前の遺伝子のせいだ、私は悪くない悪いのはあんた、私はしっかりと塾にも通わせてる、じゃあどうしてこんな問題を間違うんだ、しらない私が知ってるわけないあんたのせいだ
小学生の俺は吐いていた。
両親はそれを見てまたこんなところで吐くなんてと俺を殴っていた。出て行けと言われ夜中の寒い外に放り出された。確か夜が明けるまで家に入れてくれなかったっけ?
また景色が変わった。
両親が離婚する日だ。父も母もそれぞれ違う配偶者を見つけ離婚した。俺は一人になった。両親は俺のことなんか気にしていなかった。道端に落ちてるゴミか何かを見る目で見た後、失敗したと言って出ていった。
また場面が変わった。
大雪の日だ。中学生の俺はこんな寒い日に薄着でしかもはだしで大きな川に来てたんだ。そうだ、ここで■■に初めて会ったんだ。
「ねぇ、君こんな寒いなか橋の上で何やってるの?」
「死ぬ準備」
「へぇ、そっかとりあえず殴るね!」
「は?」
中学生の俺は雪が降っていたある日とある橋の上できれいな女の子に殴られた。すごい威力だった。だって一発で気絶したんだもん
そうだった。懐かしいなぁ■■はこの時からめちゃくちゃで俺が死のうとするたびにぶん殴ってきて、俺を何とか生かせようとしてたっけ…完全にストーカーされてたもんなぁ夜は両親が出て行って一人になった俺の家に無理やり入り込んでずっと監視して朝になっても監視してトイレまでついてこようとしてたっけ?おかげで全く死ぬことができなかった。あぁ懐かしい
いやぁほんとこのころの■音は頭がおかしかった。
しかも俺が死のうとすることをやめないから■■は君が死んだら私も死ぬよ?とか脅しをかけてきたんだ。それでも俺は死のうとすることをやめなかったけど
場面が変わった。
山の中だ。
俺の後ろをひょいひょいとすごい身体能力を発揮して軽々とついてきている。俺は息を切らしてるのに
どうやら■■は俺にずっと話しかけているようだ。
私はこれが好き、私はあれも好き。私はこれが嫌い、あとあれも嫌い、友達にこんな子がいる、最近始まったアニメが面白いなどなど
まぁこの時の俺は完全に無視を貫いてたんだけど■音はそれでも笑顔で話しかけ続けていた。
で確かこのあたりで俺の感情が爆発したんだっけ?あぁやっぱりそうだった。
「…なんなんだよ!お前はなんで邪魔をするんだ!なんで死なせてくれないんだ!なんで!なんでだよ!」
頭をぐしゃぐしゃと血が出る勢いでかきむしりながら朱■に問いかけている。ていうか実際に血が出てるし、眼の隈だってひどい、明かに正気じゃない
あーこの後どうなるんだっけ
「うるさい!」
あ、殴られた、けどこの時の俺は■■に殴られなれていて気絶はしてない、その場に倒れた後むしゃくしゃした気持ちが我慢ができず朱音に襲い掛かったんだ。
「せいっ!」
まぁ一本背負いされたけど、いやぁ痛かったなぁあの一本背負い
しかもそのあといろいろ言ってたっけ
「死なれたら気分が悪い!死んでほしくない!友達になってほしい!元気になってほしい!笑ってほしい!ただそれだけ!ていうか私の目の前で死のうとする君が悪い!!!」
そうそう、これだこれ、絶対に人生に絶望して死のうとしてる人にかける言葉じゃないだろ、しかも自分の前で死ぬなって…どういうことだよって、朱音からついてきてるのに
「うるさいうるさいうるさい!ならおれのそばに来るなよ!俺に近寄るなよ!勝手に死ぬから!それでいいだろ!お願いだから死なせてくれよ!!」
泣きながら俺がそういっている。でも朱音はそんな俺を見てがははといった感じで笑っている。
「私は将来ヒーローになるの、わかる?ヒーローよ!なのに!今!男の子一人救えないなんて!ヒーロー失格よ!」
ドーン!と効果音が鳴ったかと思うくらい胸を張って朱音はそう答えた。
ははっ、懐かしいな、今こそ黒歴史だーーーとか言っているが昔の朱音はマジのマジでヒーローを目指してたんだった。
ほら見ろ、中学生の俺がまさかの返答過ぎて呆然としてるぞ
「だから!あんたは黙って私に救われなさい!!泣きたいなら私の胸を貸してやる!吐き出したい言葉があるなら私が全部聞いてあげる!だから!死ぬなんて言うな!ていうか絶対に死なせない!死なせたりするもんか!」
そう言って呆然としている俺をまた殴り飛ばした。
ここからまだまだいろいろあったんだけど今の俺を見て察してもらえると思う、元気に生きてます
さて、これが俺、三月 優が彼女に救われた理由、それと彼女に惚れた理由だ。
あぁ、思い出した。全部思い出した。
場面が変わった。
「記憶と魔力は戻ったか?小僧」
現れた瞬間ものすごい圧力が降ってきた。あ、鬼さんちーす!
「あぁ、戻ったぞありがとな鬼さん。 あんたが戻してくれたんだろ?」
俺はそう確信をもって目の前の鬼にそう告げた。
「…あぁ、そうだ貴様の魔力と記憶は確かに封印されたがこの封印は封印を行使したものが死んで初めて完璧に作用する封印だ。術者が生きておる今なら何とでもできるからな」
ほーん、よくわからんがやっぱりこの鬼のおかげだったか
「助かった、ありがとう」
俺はそう言って頭を下げた。正直この鬼はよくない存在だということは本能で理解している。だってこの鬼の俺を見る目が明らかに餌を見る目だもん…けど恩は恩だ。
だから全力で感謝を伝える。
「よいよい、貴様の魔力がなくなって困るのは我だからな、貴様の『魂の門』に少し細工をしただけだ。礼を言われるほどでもない、ほれもういけ、時間がないぞ器の小僧」
そういった鬼はまた腕を振った。
「あぁ、戻ってきたのか」
きょろきょろとあたりを見渡してみると俺が今住んでいる家の玄関だ。
さて、とりあえず師匠に電話をしてっと…
さぁ行こうか、今度は俺が
君を救う番だ




