表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

99/105

第99話 結構、根に持つタイプ?

「このようなものを、フィブレ様はいったいどこから手に入れたのでしょうか?」


「サー・ポーロ士爵のところにいた徴税責任者が、ついさっき持ってきたんだ。ノースランドで仕事を斡旋(あっせん)してもらう見返りとして、これを渡してきた。正義感から見過ごせなくて、サー・ポーロ士爵の執務室から、盗みだしてきたんだと」


「大事な話というのはそのことだったのですわね。たしかにこれは一大事ですわ」


「だろ?」


「ですが正義感に溢れる人間が、果たして仕事の斡旋などを求めるものでしょうか?」


「そこはまぁ建前というか……世の中を円滑に回すための潤滑油というか。一応、以前から何度かやりとりをしたことのある相手だし、俺としては彼は上手く使えば役に立つ人材だとは思ってはいる。官僚的なタイプというか」


 自分の考えとは違っても「上」の言うことには唯々諾々(いいだくだく)と従うタイプだと、俺は彼を評価していた。


 ゆえに『不正はするな、一発アウトだからな』とあれだけ言っておけば、新たな「上」の意向を正しく汲み取るはずだ。


「わかりました。まずはその方について、好待遇で採用いたしますわ。税務関連でそれなりの地位を用意しましょう。なにせ人手はまったく足りていませんしね。ですが――」


 エスコルヌ女子爵が恨めしそうに俺を見た。

 子供のように、頬をぷくーと膨らませる。


 美人なのでギャップも感じて、すごく可愛い。


「な、なんでしょう? なにか問題でも?」


「ですがやっぱり、お出迎えくらいはして欲しかったですわね。それが最大の問題です」


「それは本当にごめんってば……もしかして結構、根に持つタイプだったりします?」


「そこは『愛が深い』と仰ってくださいな」


「あははは……」


 俺が苦笑すると、エスコルヌ女子爵はふんわりと素敵な笑みを浮かべた。


「ふふっ、ごめんなさい。冗談ですわ。まさかの決定的証拠を前に動揺してしまい、つい話の腰を折ってしまいました。ええ、もう落ち着きましたわ。どうぞ話の続きを」


 前から思ってたけど、エスコルヌ女子爵って結構おちゃめな性格をしているよな。


「OK、了解。それでだ。彼に聞いた話や、筆跡を見比べたりと総合的に勘案して、俺はこれが本物だと思った。クラリスはどう思う?」


「細かいところまで貴族の書式に忠実に基づいた文書ですわね。サー・ポーロ士爵の貴族印も精緻極まりないですし、偽造とは思えません。ゆえにわたくしも、この契約書は本物だと思います」


 エスコルヌ女子爵が神妙に頷いた。


「やはり本物で間違いないか……」


 グッと手に力が入る。


「ですが少し疑問にも思いますわ」


「というと? やはり何か怪しい点が?」


 おっとと。

 万が一にでも騙されたら一大事だからな。


 俺の直感――よく当たるんだ――ではあの徴税責任者が嘘をついているとは思えないが、ここは念には念を入れて疑問点はクリアしておかないと。


「いえ、そうではなくて。このような確たる物証を、サー・ポーロ士爵はわざわざ残しておくでしょうか? 誰かに見られたら一大事です。それが少し気になったのです」


「なるほど、そういうことか」


「あまりに迂闊(うかつ)すぎはしませんか?」


 育ちのいいエスコルヌ女子爵の疑問はもっともだった。


 だが俺たち庶民(俺はもう立場的には貴族になってしまったが)では、ありそうかなと思える話だった。


「それに関しては多分、サー・ポーロ士爵が『書面で残すよう求められた』という方が正しいかな」


「と、言いますと?」


 エスコルヌ女子爵がこてんと小さく首をかしげた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ