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第97話 2つの条件

『そう身構えることはないさ。1つは裁判などで証言が必要な時に、さっき言っていたことを証言してもらいたい』


『それくらいならお安い御用にございます! それでもう1つは?』


『こっちはもっと当たり前のことなんだが、不正はしないよう厳に己を律するように。間違っても、俺やエスコルヌ女子爵の名前を使って、虎の威を借る狐にはなるんじゃないぞ?』


『も、もちろんですとも!』


『あんたとはこれまでにも何度も話したことはあるし、数字に強く有能なことは知っている。だからそこさえ間違わなければ、俺たちは仲良くやれるはずだ』


『ええ、ええ。もちろんですとも』


『正直、ノースランドの役場は人口増加に対して役人がまったく足りて無くてな。今回はもう街全体がごっそり移転するようなもんだろ? 有能な役人は喉から手が出るほど欲しいんだよ』


『は、ははぁ! それはもう身を粉にして働かせていただきますれば!』


 正直、移転の話がここまでの規模になるとは思っていなかった。


 今は商人ギルドから役場に、事務や数字に強いスタッフを派遣してもらって急場をしのいでいるが。

 それでも全然足りておらず、エスコルヌ女子爵も頭を悩ませているのだ。


 大都市で徴税責任者をやっていた有能な役人の採用を、無下に断る理由はない。


『期待しているぞ。ただし何度も言うが、俺やエスコルヌ女子爵の名前を勝手に使うんじゃあないぞ。サー・ポーロ子爵と違って、俺もエスコルヌ女子爵も不正にはとことん厳しいからな?』


『も、もちろんですとも!』


『給料はそれなりに出す。だから不正だけはするなよ』


『こ、心得ておりますれば……』


 念押しに念押しを重ねるように言い含めて、俺は「暗殺の契約書」という物的証拠を手に入れたのだった。


 ま、これだけ言っておけば、しばらくは大丈夫だろう。

 エスコルヌ女子爵に取りなす際に、定期的に睨みをきかせるように伝えておこう。



 そして徴税責任者が屋敷から出て行くのとほぼ入れ替わりで、


「フィブレ様、お邪魔しますわね」


 エスコルヌ女子爵がやってきた。


 サー・ポーロ士爵&シグマと関係していた貴族との会談に出向いていたはずだが、もう帰ってきたらしい。


 手には紅茶とお菓子の載ったお盆を持っている。


「帰ってたのか。お帰りクラリス、お疲れ様」

(*)クラリスはエスコルヌ女子爵のファーストネームです。


「いつまで経ってもお出迎えしてくれなかったので、会いに来ちゃいました」


 ちょっと拗ねたように言うと、エスコルヌ女子爵は机の上に紅茶セットを置く。

 軽く口に含んで「とてもいいフレーバーですわ」と笑みを浮かべた。


「悪い、ちょっと重要な案件で話し込んでてさ。気付かなかった」

「重要な案件ですか?」


 エスコルヌ女子爵が優雅に小首をかしげた。


 絹糸のような美しい黒髪がさらりと流れる。


「その前に確認なんだけど、そっちの首尾は上手く行ったのか?」


「もちろんですわよ。お二方には全面協力を取り付けてきました。証言もしてくださるとのことですわ」


 エスコルヌ女子爵はえへんと満足げに胸を張った。

 大きな胸と谷間が強調される。


 最近、俺と二人きりの時に時々見せる可愛らしい仕草に、俺は大きな愛おしさを抱いていた。

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