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第82話 フィブレ、最強のSランク冒険者

「交渉は決裂だな」

 俺は頃合いと見計らって、2人の会話に割って入った。


「ハンゾウ様との話の邪魔をするとは、そんなに早く死にたいか?」


 暗殺者リーダーがわずかに目を細めて俺を睨みつける。


 今日イチの鋭い殺意を感じるが、俺も数々の死線を潜り抜けてきたんでね。

 慣れたものだ。


「お前らの関係とか俺は知らないし、興味もない。元はお仲間なのか知らないが、今は(たもと)を分かったんだろ? そして今はハンゾウ様はシノビで、俺の大切な部下だ。お前なんかには渡せねぇよ」


「む……っ」


「知ってるか、お前みたいに別れた相手をしつこく追い続けるヤツのことを、最近の流行り言葉でストーカーって言うんだぞ?」


「貴様――」


「さてと。互いに譲らない平行線の話なんて、いくらしても無駄で無意味だろ? お前は俺の首が欲しい。俺もお前をボコしたい。ぐだぐだ話してないでとっととケリを着けようぜ?」


「元よりそのつもりだ。言われるまでもないわ」


「ってわけでシノビ。改めてリーリアを頼んだぞ」


「御意」


 シノビがリーリアの元にするすると戻っていった。


「さぁ、続きをやろうぜ。未練ごと俺がこの場で断ち切ってやる」


 返事代わりとでも言わんばかりにシュリケンが2枚、立て続けに飛んできた。


 だが、

 キンキン!


 俺はそれをしっかりと見極めたうえで、剣ではじき返してみせた。


「なっ、さっきの今でまさかこうも早く対応するとは──!」


 シノビを盗った――わけでもないんだが――俺への怒り以外には、あまり感情を見せなかった暗殺者リーダーが、ここにきて初めてわずかな驚きを見せた。


「おいおい、俺は王国内に10人しかいないSランク冒険者だぞ? 言っとくが、俺はその中でもナンバーワンだからな? タネさえわかればこれくらい余裕だっての」


「むっ……!」


 実際に腕比べをした事はないんだが――何人かはケンカを売ってきたのでボコした――誰も倒せなかった暴れドラゴンを倒したのが俺である以上、俺が最強ってことで間違いないよな。


 それにシュリケンを投げるタイミングも、なんとなく分かってきたんだよな。

 

 基本は不意打ち。

 こちらの理外の場面で投げる。


 今のも話し終えて、俺が剣を構えようとした瞬間。

 俺が次の動作のために、頭のリソースを割くタイミングを狙ったものだ。


 それが狙いだとわかれば、逆にわかりやすいまであった。

 俺の中で暗殺者リーダーの戦闘スタイルが完全に理解された。


「もう全部わかった。悪いがお前は俺の敵じゃない。ここからはずっと俺のターンだ」


「抜かせ!」

「抜かせるんだよなぁ」


 俺は剣を構えると、一気呵成に切りかかった!


 さっきまでのシュリケンを警戒していつでも回避に移れるようにしていた時とは違い、鋭い踏み込みで圧倒していく!


 相手の戦闘スタイルを理解した以上、恐れる必要はない。


「おらおら、どうした!」

「ぐぅ――っ!」


 俺の攻撃の前に、暗殺者リーダーはもう防戦一方だった。

 俺の剣筋は、次第次第に暗殺者リーダーを追い詰めていく。


「はぁぁぁ!」

「くぅ――っ」


「そこっ!」

「ぐぅっ!?」


 俺の激しい攻撃の合間に、苦し紛れのシュリケンが飛んでくる。

 ねらいは俺の顔。


「よっと――」

 だが俺はそれを、首を軽く傾けるだけでかわしてみせた。


「な――っ?」


「もう見えてるっての。ははっ、シノビが警戒するからどんなもんかと思ったら、思った以上にたいしたことねぇな」


 おそらくシノビは暗殺者リーダーではなく、こいつが率いる集団戦闘力を危険視していたのだろう。


 俺も全員を相手にするとなると正直苦しいところだが、1対1ならもう負けない。


 と、


「くくっ、それはどうかな? シュリケンを封じたくらいで図に乗るなよ、こわっぱ」


 暗殺者リーダーが不適に笑いながら、己の足元に何か玉のようなものを投げた。


「なんだ?」


 その直後。


 ボン!

 破裂音がしたかと思うと、もうもうと煙が立ち込め始めたのだ。

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