第79話 三下と二枚目
質問というよりは、これはもう確認だな。
「違うと言ったら?」
「口封じのためにここにいる者は全員殺す」
「OK。俺がフィブレ・ビレージだ。間違いない」
「ならばお前を殺す。他の者も口封じで殺す」
リーダー暗殺者が、一瞬シノビに視線を向けた気がした。
そういやシノビの同郷って言ってたか。
2人は面識でもあるんだろうか。
ま、それは今はいい。
「どう答えても結局、全員殺されるんじゃねーか。俺はあんたに殺されるような恨みを買った覚えはないんだけどな?」
「オレがお前に恨みを抱いているように見えるか?」
「いいや、見えないね。サー・ポーロ士爵の刺客には見えるがな?」
「それは誘導尋問でもしているつもりか?」
「そりゃカマをかけるくらいはするだろ? お前らの雇い主が誰かは一番気になることなんだから」
「安心しろ。ここで死ぬお前らには関係のないことだ」
「いかにも悪役のセリフだな。三下に見えるから止めといたほうがいいぜ?」
「その三下に殺されるお前は、なんと言うんだろうな?」
「俺は二枚目って言うんだよ。覚えとけ」
「……」
ちょっと上手く言ってドヤ顔った俺に、暗殺者リーダーは冷たい視線を返してきた。
シノビもそうだけど、職人気質っていうのかな?
あんまり冗談が通じないよね。
「やれやれ、話し合いの余地はまったくなさそうだ。俺は平和主義なんだけどな。売られたケンカは買うしかないか」
「そんなくだらないセリフが、この世界へのお別れの言葉でいいのか?」
「そりゃ俺はお別れする気なんて、さらさらないからな」
「たいした自信だ」
「俺のことを調べたんだろ? 言っとくが俺の命は安くはねぇぜ? 『神童』フィブレをあまり舐めんなよ?」
「ではいったいいかほどの価値があるか、お前の命でもって試させてもらおう」
「ぬかせよ三下」
どうやら俺は舐められているらしい。
俺の中で猛烈な戦意が高まってきた。
いいね、血がたぎってきたぜ。
神経がピリピリとひりついてくる。
数的不利がなんだってんだ?
お前ら全員、本気でボコしてやるから覚悟しとけよ?
俺はリーダー暗殺者に狙いを定めた。
リーダー暗殺者も鋭い視線で俺を見据えている。
「2人とも、こいつの狙いは完全に俺だ。だから俺が注意を引き付ける。シノビはリーリアを守りながら、他の奴らに応戦だ。やれるな?」
俺は即座にそう判断し、指示を出す。
「少々難しいですが、主命とあらば、この身に替えてもリーリア殿は守り抜きましょう」
「少し違う。全員で生き残る、それが俺の命令だ」
「御意」
シノビがこくんとうなずいた。
シノビは顔を覆い隠す黒頭巾を被っているので目元しか見えないが、その目元がほんの少し緩んで苦笑したように見えた。
甘いと思われたのかもしれない。
だが俺たち3人は言わば、臨時結成されたパーティーだ。
俺はパーティーの仲間を絶対に見捨てたりはしない。
「フィブレさん、わたしは?」
リーリアが己の役割を尋ねてくる。
「リーリアは身を守ることを最優先だ。今日の相手は手強いが、シノビもいる。『神童』フィブレの秘書ならやれるよな?」
「なんとか頑張ってみます!」
短いやり取りで俺たちは役割分担を完了した。
お互いに相手の出方をうかがう、少しの静寂ののち。
俺たちと暗殺集団の戦闘が始まった。
「ゆくぞ」
まずはリーダー暗殺者が音もなく動き出し、単騎で俺へと向かってきた。
その手にはシノビと同じ、カタナと呼ばれる片刃の剣が握られており。
風のように軽やかな動きは、これまたシノビの動きとよく似ている。
リーダーってことは当然、こいつが一番の使い手なわけだろ?
まずは指揮官にして一番強い奴をつぶす。
対・集団戦闘の基本だ。
俺は戦意を高ぶらせながら迎え撃った――!




