第73話 冒険者ギルドの悪評をばらまかれた・・・
最近、うち(ポロムドーサ冒険者ギルド)の悪評が、ポロムドーサの街で流れていた。
噂の出所は主に街で売られているニュースペーパーと、衛兵やチンピラといったサー・ポーロ士爵の息のかかった連中だ。
(衛兵に関してはサー・ポーロ士爵の意図に背くとクビにされるので、仕方ない面もあるが。
彼らにも生活や守りたい家族がある。
もちろん、賄賂をもらったり仲間に有利な口利きをしたりと、サー・ポーロ士爵のやり方にずっぽり染まっているろくでなし連中も少なくないが……)
それはそれとして、どんな噂が流されているかというと。
いわく。
『冒険者ギルドは荒くれ無法者の巣窟。反社のクズたちが居なくなってむしろ清々するのは、自分だけではないはずだ』
『ギルドマスターのフィブレ・ビレージは金の亡者として知られている。口を開けば値下げしろ値下げしろと、金の話しかしてこないのは有名な話である』
『家主というサー・ポーロ士爵への大恩を、移転という仇で返すような卑劣な人間には、誰もついて行かないだろう。結果は目に見えている』
『冒険者ギルドをノースランドへ移転? あんな人よりもイノシシの方が多いような片田舎に? 採算が取れるわけがない。下手の考え休むに似たりとはこのことだ』
『お願いですから戻らせてくださいと、後で泣きついてくるのは目に見えている。哀れと言う他がない』
『ノースランドの市民も、冒険者ギルドなどに来られてはいい迷惑だろう』
『なんか変だな?』
といった具合だ。
今日はその対策をリーリアと考えようと、いつものギルマス執務室でミーティングの時間を設けたのだが。
「ぶっちゃけですけど、ギルドの悪い噂なんて、街の人は誰も信じていませんよね」
ここ一週間ほどのニュースペーパーの該当記事を、改めて全て読み終えた真面目ちゃんなリーリアが、顔をあげて苦笑するように言った。
「ニュースペーパーは元からサー・ポーロ士爵の息がかかった御用新聞だったからな。ことサー・ポーロ士爵に関しては提灯記事しか書かないので、誰も当てにはしないだろうよ」
ちなみに俺は途中で読むのがあほらしくなったので、リーリアが読み終わるまでクロスワードを解いて遊んでいた。
「この記事って、サー・ポーロ士爵が書かせているんですよね?」
「そうだろうなぁ。ま、ニュースペーパーが何を書こうが、誰も信じはしないが」
もちろん、サー・ポーロ士爵絡みでない記事はいたって普通だ。
なので仕方なしに書いている──書かされているのは、俺も理解している。
「サー・ポーロ士爵に関しては報道の自由はありませんもんね」
「全て事前に検閲されるらしいからな。領主に対してはある程度、忖度があって仕方ないものとはいえ、さすがにこれはなぁ」
「サー・ポーロ士爵のやり方は度が過ぎていますよ」
例えば先だってカエル税が導入された時のことだ。
『夏にカエルが鳴くのは風物詩でもある』と一言やんわりと意見(というか感想だな、これは)を書いたニュースペーパーがあったんだが。
サー・ポーロ士爵はなんと市民扇動罪の容疑で、関係者を片っ端からしょっぴいたのだ。
(しょっぴいただけで、さすがに刑罰にはかけなかったんだが、「見せしめ」の効果は絶大で、今はちょっとした感想すらも書いてはいけない空気感になっていた)
とまぁ一事が万事そんな対応をされるので、このポロムドーサでサー・ポーロ士爵のことを少しでも悪く書くニュースペーパーは存在しなかった。
「ここだけの話、ニュースペーパーギルドもノースランドへの移転を考えているみたいだぞ」
俺は先日のギルドマスターの寄り合いで仕入れた最新の極秘情報をリーリアに教えてあげた。
「それはもう、当然そうなりますよねぇ。さもありなんです。嘘を書かされているんですから」
「さてと。そういうわけで対策会議はしなくても良さそうだし、明後日の打ち合わせでもするか。とりあえず一緒にノースランドに行くから、綺麗めの服を用意しておいてくれ」
「エスコルヌ女子爵との会談に一緒に出ればいいんですよね?」




