第66話 忙しい日々はめくるめく
冒険者ギルド移転を公式に発表してからは、怒涛のごとき忙しい日々が始まった。
ギルド移転の総責任者である俺は秘書のリーリアを時に引き連れ、時に仕事を任せて別行動で。
ポロムドーサとノースランドを行ったり来たりしながら、毎日朝から晩までへとへとになるまで働いている。
たとえばノースランドの新・冒険者ギルドの荷受け場にて。
「うわっ、スゲー量の木箱だぜ。これ全部、ポロムドーサから持ってきた備品とかなんやらが入ってるんだろ?」
「ああ、そうだぞ。箱に記号と数字が書いてあるだろ? 同じように部屋にも数字と記号を割り振ってあるから、まずは対応する部屋に木箱を片っ端から運んでいってくれ」
「なんも書いてない箱もあるぜ? こいつはどうすんだ?」
「それは後から仕分けするヤツだな。何も書いていない箱は、いったんエントランスに運んでくれ」
「了解っす」
「さあ、この後もまだまだたくさん来るぞ。荷物が滞留しないように手っ取り早く片付けていこう!」
「「「「おうっ!」」」」
今日も朝からノースランドで、運び込まれた大量の備品を荷解きするチームにアレコレ指示を出し、適正な場所に配置させる指揮を執ったかと思えば。
作業のちょっとした合間に、
「ねぇフィブレ、今ちょっといいかい?」
飲食ギルドのギルドマスター・ミネアに話しかけられる。
「ああ大丈夫だぞ。どうしたミネア、なにかトラブルか?」
「そういうんじゃないんだけどね。食材を食堂の調理場まで運び入れる導線なんだけど。こっちの経路を使わせてもらえないかね? この館内見取り図の、ここの通路なんだけど」
「どれどれ……? うちは構わないけど、それだと食堂まで少し遠回りになるんじゃないか? 理由を聞かせてくれるか?」
「こっちの方が途中のドアが少ないのさ。しかも物置や倉庫ばかりで人の出入りも少ないだろうから、食材を載せた台車が通りやすいんだよ」
「なるほど了解、そういう理由な。特に問題ないだろうからそれでいこう」
「それと──」
飲食ギルドのギルドマスター・ミネアと、冒険者ギルドの食堂に出店する店の確認や契約。
施設の図面を見ながら調理場の内外の導線の再修正。
問題が起きた時の相談窓口の話や、時間を作って、店主たちとの面談なんかをもろもろこなす。
また、食事休憩中もしっかりとは休めない。
午後の作業工程を頭の中で整理しながらサンドイッチを頬張っていると、見知った顔が声をかけてきた。
商人ギルドのギルドマスター・ライオットさんの部下だ。
「お食事中に申し訳ありません。ライオット様より来週の輸送計画書を預かって参りました。ご確認を願います」
「悪い、食べながらでいいか?」
「もちろんです。お食事のお邪魔してしまい申し訳ありません」
「いやいや、この輸送計画書がないと、まだ整備前の道が目詰まりを起こすからな。そこのチェックは最優先事項さ」
「ありがとうございます。そう言っていただけると気も楽になります」
ライオットさんの部下が持ってきた今後の輸送計画書(めっちゃ細かいが、めっちゃわかりやすい)に急いで目を通すと、OKのサインをしたためて返した。
「オッケー、何にも問題はない。この通りで頼むよ」
「かしこまりました。では控えをどうぞ」
内容が全く同じ、複写の書類が手渡される。
これでいったい何をしているかというと、ポロムドーサとノースランドで同じ輸送計画書に基づいて、荷馬車の発着の管理を行っているのだ。
まず、いつ何が届くかがわかっていれば、受け入れ側は管理がしやすい。
そしてもう一つ。
街道が未整備のノースランドへの道は細い。
しかしいくつか道幅の広い区間がある。
この緻密な輸送計画書通りに馬車を運行することで、大型馬車がその道幅の広い区画で、上手くすれ違えるようになるのだ。
ほんと、商人ってのはあれこれ思いつくもんだな。
「ライオットさんにありがとうと伝えておいてくれるかな。輸送計画書のおかげでスムーズに移転作業が運んでるってさ」
「たしかに承りました」
ってな感じで、俺はおちおち食事も取ってはいられなかった。
さらには追加で上がってきたいろんな要望や計画を取りまとめて、エスコルヌ女子爵と会談して改善策を検討したりと。
俺は毎日毎日、日が暮れるまで――日が暮れた後も働きづめだった。
「ま、それもこれも明確なゴールが見えているから、やりがいしか感じないんだがな」




