表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/62

第61話 ◇サー・ポーロ士爵 SIDE◇ 怒鳴り込んできたドラ息子のシグマ

◇サー・ポーロ士爵 SIDE◇


 フィブレとの定例協議にて三行半が突き付けられた日の夕刻。


「なんとかせねばならぬぞ……! 冒険者ギルドの奴らめ、ワシの大切なポロムドーサの街ををつぶす気でおる……!」


 焦燥と呆然と屈辱からいくらか立ち直ったサー・ポーロ士爵は、憎々し気に独り言をつぶやきながら、執務室で今後の対策について必死に考えを巡らせていた。


 するとドタドタと足音が聞こえてきて、とある人物が怒鳴り込んできた。

 ドラ息子のシグマである。


「おい親父! どうなってんだよこれは!」


「シグマか。ワシは今、たてこんでおる。後にせい」


「何が後にせいだ! 冒険者ギルドが、いやギルド連中が軒並みごっそりノースランドに移転するって話で、街は持ちきりだぞ!」


 ドラ息子シグマの顔はりんごのように赤く、体中から濃密なアルコールの匂いが漂っている。

 今日もろくに働きもせずに、真昼間から出来の悪い貴族の子弟たちと女を侍らせ、酒を飲み歩いていたのが手に取るように見て取れた。


「そのことか」


 サー・ポーロ士爵は息子の素行の悪さに溜め息をついたのだが。

 ドラ息子のシグマは血走った目で怒鳴ってきた。


「だからそのことか、じゃねぇだろ! いったい何がどうなってんだよ!? 納得いく説明をしてもらうぜ!」


「実はのぅ──」


 あまりの声のでかさにサー・ポーロ士爵は思わず眉をひそめながら、定例協議であったことをかいつまんで話し始めた。


……

…………


「なんだそりゃ!? こっそりとそんな計画を進めていたとは、あの野郎! 舐めくさりやがって! そんで、どうすんだよ親父?」


「ここまで事が進んでしまえば、もはや妨害工作もできることが限られてくる。機運というものが醸成されてしまっておるからの。大河のごとき大きな流れができてしまっておるのじゃ」


「はぁ? じゃあなんだ? このままいいようにやられるのを、指をくわえて見てろってのかよ?」


「そうは言っておらぬ。いくつか対抗策を考えたのじゃが、まずは冒険者ギルド本部に抗議文を送る。このような非道が行われておると、貴族の威光を存分に使って上部団体に訴えかけることで、奴らに圧力を──」


「そんな悠長なこと言ってられねーだろ! 事は一刻を争うんだぞ! 冒険者ギルドの上がりが消えたらシャレになんねぇっての! 今すぐにでも翻意させねえとダメだろうが!」


「わかっておる。ここはいったんワシに任せて――」


「親父に任せてたからこうなったんだろうが!」

「む、むぐ……」


 サー・ポーロ士爵はその一言で完全に黙らされてしまった。


 たとえ何を言っても。

 たとえ相手がドラ息子のシグマであっても。


 事ここに至っては「移転されてしまった」という結果以上に重い意味を持つものはありはしないからだ。

 言うなればサー・ポーロ士爵は敗軍の将だった。


「冒険者ギルドがいなくなりゃ、でかい上がりがごっそりなくなる。代わりに残るのはボロくてでかいだけの、ろくに借り手もいない使い勝手の悪い建物(はこ)だけだぞ!」


「そんなことは言われんでもわかっておる」


「しかも他のギルドまで一緒ときた! 商人ギルド、飲食ギルドは構成員が多いから特にヤバい。町に金が回らなくなるぞ? 下手すりゃこの町は終わりだ!」


 焦燥していたところをドラ息子のシグマにあーだこーだと正論パンチで詰められてしまい、ついにサー・ポーロ士爵は切れてしまった。


「わかっておると言っておるじゃろう! じゃからワシなりに手を打つと言っておるのじゃ!」


 大きく声を荒らげてしまう。


 サー・ポーロ士爵とドラ息子のシグマの親子はしばしの間、無言でにらみ合った。

 しばらくして、ドラ息子のシグマが先に口を開いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ