第60話 説明会 ~冒険者ギルドは一丸となる~
これまでのうっ憤を全て晴らした俺は、帰る途中で有名なお菓子屋さんに寄ってリーリア好みのスイーツを購入すると、意気揚々と冒険者ギルドに帰還した。
「お帰りなさいフィブレさん!」
「ただいまリーリア。はいこれお土産、フロイン堂のリーフパイだ」
「わっ、今日もありがとうございます~! それで首尾はどうでしたか? って、その顔を見れば聞くまでもなさそうですね♪」
「ああ、全て上手く行ったよ。積年の恨みつらみを全部ぶちかましてきてやった」
「サー・ポーロ士爵はどんな顔をしてましたか?」
「最初はあーだこーだ言って、そんなのは無理だの、ブラフは止めろだのなんだの言ってたけど。俺が全部理論立てて言い返したら、途中からあんぐりと口を開けてポカーンとしてたよ」
「あーん、すっごく見たかったですぅ!」
普段は滅多に他人の悪口を言わないリーリアだが、ことサー・ポーロ士爵に対してはかなり容赦がない。
リーリアは俺のすぐ近くで、ずっと理不尽な想いをし続けてきたんで、それもまた当然だろう。
「俺も見せてやりたかったよ。ってわけで、見れなかったリーリアには、今から俺が今日のことを一から十まで話してあげよう」
「でしたらお茶を入れてきますね。リーフパイでお茶しながら、あますとこなく聞かせてください」
「任せとけ」
俺はリーリアに、今日の定例協議の一部始終を面白おかしく語って聞かせた。
その後、一息つくと、俺はリーリアとともに冒険者ギルドのエントランスへと向かった。
実は今日この時間に、可能な限り集まるようにとギルドメンバーに伝えてあったのだ。
それはつまりギルド移転の発表と、その説明会を行うということだ。
そのため、今日のクエストは朝から全て受付を停止している。
俺たちがエントランスに到着すると、遠征中のパーティや泊まりのクエストをやっている者たちを除いた、250人を超える冒険者やギルド職員たちが集まっていた。
ざわめきが埋め尽くす中、俺は一番前まで行ってスピーチ台に上ると、まずは注意を集める。
「みんな、聞いてくれ! 今から今後のポロムドーサ冒険者ギルドに関する、とても大事なことを言う!」
俺の一言で冒険者たちはすぐに静かになる。
それを見渡しながら俺は告げた。
「今日サー・ポーロ士爵との定例協議があり、そこで俺は冒険者ギルドをノースランドへと移転することを伝えてきた!」
その言葉に、一度静かになったエントランスが盛大にざわついた。
「移転って急にそんなことを言われてもよぉ!」
「ノースランドは田舎だぜ? とてもじゃないがギルドメンバーとその家族全員が生活なんてできないだろ? 俺も何度か行ったことがあるが、ろくに店もないんだぞ!」
抗議や説明を求める声に、俺は順を追って説明していく。
「俺たちだけじゃない! 商人ギルドや飲食ギルド、武器防具ギルドなどを中心に多くのギルドが一緒に移転する。そこは問題ない。全ての施設は完成しているし、街道も新たに整備することが決定している」
「おおっ! 商人ギルドが味方なのかよ! そいつは心強いぜ!」
「飲食ギルドってことはミネアさんだろ? ノースランドだろうがどこだろうがミネアさんが行くなら俺は一生ついてくっての!」
「ほとんど町ごと移転ってことか!」
「こいつはすげーや!」
やはり最強ギルドの商人ギルドが味方なことの心強さと、ミネアというカリスマの存在は大きいな。
……グラハムの名前が全くあがらなかったことについては、聞かなかったことにしておいてやろう。
俺は優しいからな。
「でも相談くらいあってもよかっただろー!」
「そうだぜ! 水臭いだろー!」
「それについては申し訳ないと思っている。だがこの件は、どうしても外に漏らすわけにはいかなかったんだ。サー・ポーロ士爵から妨害を受けたくなかったからな」
「でもよぉ!」
「さすがに急すぎないかー!」
「俺たちを信用してくれよ-!」
「そうは言っても、みんな知ってたら酔っぱらったら、すぐにしゃべっちゃうだろ? ぶっちゃけ俺でもしゃべると思うし」
俺が苦笑しながら言うと、説明を求めていたギルドメンバーたちはバツが悪そうに眼を逸らして静かになった。
どうやらみんな、思い当たる節がありまくりらしい。
「そういうわけだから、今日から移転の準備に取り掛かる。半月くらいはかかるだろうが、その間にクエストに出られない費用は全てギルドの方で負担する。生活の心配はしないでいいぞ」
「おおっ! マジかぁ!」
「この太っ腹! やっぱりうちのギルマスは最高だぜ!」
俺の提案に、冒険者たちがいっせいに沸き立つ。
ブオ~! ブオ~!
どこからか法螺貝の音も聞こえてきた。
どこからかっていうか、吹いてるのはシノビなんだけど。
法螺貝も吹けるとかほんと器用だよなぁ。
そして実を言うと、この費用の半分は今まで地道に積み上げてきた積立金を利用するんだが、残りの半分は商人ギルドが援助してくれることになっていた。
だがライオットさんから、
『求心力を高めるためにも、全てフィブレさんの差配ということにしておきましょう』
と言われている。
俺もその意見には賛成だった。
サー・ポーロ士爵が切り崩し工作や妨害工作を行ってくることが予想されるので、ギルドマスターである俺の求心力を高めておくことには、大きな意味があるからだ。
もちろん援助してくれるライオットさんと商人ギルドには、心から感謝をしている。
もちろん向こうには向こうの思惑もあるんだろうが、俺たち冒険者ギルドが助けられているのは紛れもない事実だからな。
施されたら施し返す。
移転が上手く行ったあかつきには、なにかしらの形で恩を返そう。
それはさておき。
その後も説明会はつつがなく続き、今日から冒険者ギルドは一丸となって――いや、他のギルドも巻き込んだ巨大なうねりとなって――移転への行動を開始した。




