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第54話 緊急シノビ速報

 とまぁ新施設が順調に完成しつつあることが、隠しきれない大きな一点としてまずあって。


 さらにもう一つ、俺がサー・ポーロ士爵との契約更新をひたすら引き延ばしていることも、バレそうな大きな理由の一つだった。


 サー・ポーロ士爵には、どちらが先に折れるかのチキンレースを俺が仕掛けていると勘違いするように仕向けてはいたんだが、それももう限界だ。


(もちろん何を言われようが、賃料をタダにしてくれようが、もはや契約更新するつもりはさらさらない)


 ライオットさんがポロムドーサへと情報を持ち込む商人の口を止めてくれているおかげで、かなり長いこと隠し通せてきたが。

 ここまで建物が出来上がってしまえば、サー・ポーロ士爵の知るところとなる日もそう遠くはないはずだった。


 巨大施設の完成と、いつまで経っても契約を結ぼうとしない俺の頑なな姿勢。

 この2つが合わされば、馬鹿でも気付く。


 そしてこれはついさっきのことなのだが、さらにもう一つ、気になる情報がシノビよりもたらされていた。


 以下、回想──



 壊れてしまった備品の机を、俺がいつものように裏庭でニコイチして修理していると。


『ギルマス。折り入って火急の報告があり参上しました』


 シノビがいつの間にか俺の背後に音もなく立っていた。


『うぉっ!? びっくりしたぁ!』


 ビックリしすぎて思わず手から落としたトンカチを、シノビが苦も無く空中キャッチする。


『どうぞ』

『さ、サンキュー……すごい反射神経だな』


『反射神経には自信がありますゆえ。それより例の件なのですが』

『密約の話か』


 俺は小声で言うと、誰にも聞かれていないか周囲をチラチラと確認する。

 OK、誰もいないな。


 俺が視線をシノビに戻すと、シノビは報告を始めた。


『サー・ポーロ士爵の息子が、キツネ狩りの最中にノースランドに立ち寄り、慌てた様子で立ち去りました。恐らくは勘づかれたかと』


『――そうか』


 俺はいろんなことを噛み締めるように小さく頷いた。


 シノビが珍しく緊急に伝えたいことがあるって話だったが、なるほど。

 これは緊急中の緊急案件だ。


『口を封じても良かったのですが、あれでも領主貴族の息子ゆえ、自重しました』


『……そ、そうか』


 シノビの淡々とした物言いに、俺の背中を冷たい汗が流れ落ちる。

 頷いた声が震えていたのは、俺の気のせいではないだろう。


 当然だが、口を封じるとは殺すという意味である。


『封じた方がよかったですか?』


『とりあえず犯罪者以外を殺すのは、やめてくれ。うちは極めて合法的な組織なんだ』


 俺が一言付け加えると、


『主命とあらば』

 素直な言葉が返ってくる。


『頼むよ』

『御意。もしもの時は難癖――いえ、正当な理由を付けることとしましょう』


『…………』

『どうぞご安心を』


 い、今のはきっとシノビなりの小粋なジョークに違いない。

 意外とお茶目なところもあるんだなぁ!


 だから大丈夫のはずだ──と思う、思いたい、思っていいはず。

 俺はシノビを信頼しているからな!


『っていうか、なんでドラ息子のシグマの状況までシノビが事細かに知っているんだ?』


『たまたまです』


『そうか、たまたまか……』


 どんなたまたまだよと、ツッコミたくなる気持ちをグッと堪えた俺を尻目に、


『それでは私はこれにて』


 伝えることは伝えたと言わんばかりに、シノビは端的に言い残すと、音もなく立ち去って行った。

 その途中で通用口のオンボロ扉を開けて閉めたのだが。


『開け閉めするたびにキィキィ音を立てるこのボロいドアを、どうやってあんなに静かに動かせるんだろ?』


 俺も試しにドアをゆっくり慎重に開けてみたのだが、当たり前のようにキィ~と嫌な音がゆっくりと鳴ったのは言うまでもない。


『さすがシノビだな……』


 俺はただただ感心すると、今後のことを思案しつつ、修繕作業を再開した。


 ──以上、回想終わり。


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