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第52話 エスコルヌ・エスコート(1)

 月日が経つのは早いもので、密約を結んでから1年半が過ぎた。

 逆に言えば、サー・ポーロ士爵と結んだポロムドーサでの契約が切れるまで、あともう3カ月である。


 その間、ノースランドでの冒険者ギルド新施設の建築は、極めて順調に進んでいた。

 それはつまりいい加減、移転の密約を隠すのが難しくなりつつあるということでもあった。


 俺も今まさにエスコルヌ女子爵直々に案内してもらって、実際にこの目で、完成しつつある建物を見て思ったのだが、


「これはもう、とても訓練場や温泉施設などでは言い訳できないですね。あまりに巨大すぎる施設です」


「ええ。ここまで完成してしまうと、どんな言い訳も通じませんわね」


 俺はエスコルヌ女子爵と顔を見合わせると、どちらからともなく小さく苦笑した。


「建設用の足場が見当たりませんが、建物自体はもう完成しているのですか?」


「外側はもう完成しておりますわよ。今は扉や棚を取り付けたりといった、内装の作業に取り掛かっておりますの。せっかくですし中もご覧になりますか? おおむね内装まで完成しているエリアもあるそうですわよ」


「職人の方の邪魔にならない範囲で、ぜひ見学させていただければと」


 今まで俺はサー・ポーロ士爵に勘付かれないように、なるべく新ギルド施設への立ち入りは避けてきた。


 だが事がここまで進んでしまえば、隠す隠さないの段階は過ぎてしまっている。

 ならばもう、見れるものは全部見ておきたい。


「かしこまりました。それではわたくしがフィブレ様を、存分にエスコートさせていただきますわね」


 エスコルヌ女子爵は声を弾ませて言うと、俺の腕を取って歩き出した。


「ええっと」

「エスコートするのですから、腕を組むのは当然ですわよね?」


 困惑する俺とは対照的に、エスコルヌ女子爵はどこか嬉しそうだ。


 さらにエスコルヌ女子爵はいたずら娘のような小悪魔な笑みを浮かべると、俺の腕をキュッと自分の方へと引き寄せた。


 俺の腕が、エスコルヌ女子爵の豊かな胸にふよんと触れる。

 女性特有の得も言われぬ柔らかさに、俺は動揺を禁じえなかった。


「なんと申しますか、これでは男女が逆な気がするのですが」


「わたくし、そういうことは気にしない性格ですの。あら、もしかしてフィブレ様はわたくしにエスコートされるのはお嫌でしたか?」


「まさか、そんな。身に余る光栄です」


「ふふっ、では問題ありませんわね。わたくし、フィブレ様とこうして腕を組んで歩く日が来るのを楽しみにしておりましたの」


「俺とですか?」


「ええ。ですので張り切ってエスコートさせていただきますわ」


 エスコルヌ女子爵はこれ見よがしにもう一度、俺の腕を自分の胸へと押し付けた。 


 ふよん。

 ふよん。


 柔らかい感触が俺の腕に何度も当たる。


「ええっと……」


「ふふっ、どうかされましたかフィブレ様? 思うところがありましたら、なんなりとお申し付けくださいな。わたくし、フィブレ様の言うことでしたらなんでもお聞きしますわ」


「あまり男をからかうのは、その、よろしくないかと」


「あら、わたくしからかってなどいませんわよ?」


 そう言いながら、しかしエスコルヌ女子爵はまた、


 ふよん。

 ふよふよふよん。


 俺の腕をことさら胸に押し付けるように、抱きかかえてくるのだ。


「ええっと……」


「わたくし、殿方をからかって遊ぶようなふしだらな女ではありませんわ。これはフィブレ様への本気のアピールですから」


 あまり色恋沙汰に聡くない俺も、ここまでストレートに好意を向けられると、いろいろと理解してしまった。



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