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第48話 ギルマスざまぁ同盟(5)ミネアとの大勝負(前)

 と、そこでここまで静かに聞きに徹していたミネア――飲食ギルドのギルドマスターが、右手を小さくあげて注目を自分に集めると、


「さーて、おおまかな話はまとまったみたいさね」


 自信に満ちた笑みを浮かべながら、話に入ってきた。


 ミネアはぱっと見ハタチくらいの愛らしい童顔で、柔らかな茶髪が印象的な見目麗しい女性だ。

 しかし聞いた話によると、もう40前後だとかなんとか。


 自信に満ちたその顔にはしわ一つなく、年をとっても若々しい姿から「美魔女」と崇められている。


 さらには情熱的できっぷのいい性格から「肝っ玉姉さん」などとも呼ばれ、多くの人間から慕われていた。


 その人望は飲食ギルド内にとどまらず、各方面に草の根のように広がっており。

 こと影響力という点だけみれば、ライオットさんをも凌ぐ力を持っていた。


 ちなみにミネアの本当の年齢は誰も知らない。

 一説には超希少種族で、長命なことで知られる有名なエルフの血が入っているとも噂されているが、その真相はミネアのみぞ知る。


 それはさておき。


 ミネアは俺たちの視線が自分へと集まったのを確認してから、その二つ名が示す通りハキハキとしゃべり始めた。


「さっきの話には、アタイら飲食ギルドも基本的には賛成だよ。サー・ポーロ士爵が飲食ギルドの権限を無視して、冒険者ギルドの周辺に出店規制をかけたりと、やりたい放題することにずっと頭に来ていたからね」


 怒りを体現するように、ミネアはそこで言葉をいったん区切ると、右手でグーパンを作ると左の手の平にバチンと打ち付けた。


 パチンじゃなくてバチンである。

 かなりお怒りの様子だ。


「なによりポロムドーサは何をするにも税金が高すぎる。元々、飲食は人件費割合が高くて利ザヤが低い。今のままじゃ、多くの店が早晩つぶれちまう。だからアタイらにとってもこの話は渡りに船さね。商人ギルドが全面支援してくれるのなら、なおさらだよ」


 飲食ギルドも味方してくれるとわかり、俺はホッとしたのだが、


「基本的には?」

 その言い方が少し引っかかった。


「この件のボスはフィブレ、アンタだ。つまりね、アタイはボスであるアンタの覚悟を見たいのさ。アタイが着いていくに値するって覚悟を、見せてくれないかい? アタイはね、自分が本気で信じようと思った相手しか信じないことにしているんだ」


「覚悟、か」


 ミネアの言うことはもっともだった。


 俺はギルド移転とそれに付随する大まかな流れこそ作ったものの。

 この一世一代の大勝負についていきたいと思わせるだけの覚悟・信念・決意といった確固たる強い意志を、まだ示せてはいなかった。


「何かないかい? できれば今この場で、示せるものだとありがたいんだけどねぇ」


「そうだな……」


 そこでふと俺は、ポケットに入っているものに気が付いた。

 最近ゾロ目を出すのにはまって、それこそ暇さえあれば練習しているサイコロ×2だ。

 ちょうどいい、こいつを使うか。


 俺はポケットから2個のサイコロを取り出すと、机の上に置いた。


「だったらこれでどうだ? 2個のサイコロを2人で順番に振りあう。2個の合計で勝負する。もちろん俺がミネアよりも大きい目を出してみせる」


「わお! 実にシンプルな提案さね。こんな大事なことを、サイコロの出目で決めてしまう。いいじゃないかい。しかも一発勝負なのがいいねぇ。オーケイ、その賭け乗ったよ」


 ミネアがニヤリと不敵に微笑んだ。


「決まりだな。どっちが先にサイコロを振る?」


「アタイが先に振るさね。アタイは何でも一番が好きなのさ」


 ミネアはまたもや不適に微笑むと、サイコロを無造作に掴んで、ひょいっと机の上に転がした。


 すると出たのは6と5。

 合計はなんと11だ。


「おいおいミネア、そりゃねーだろ! 最大で12なんだぞ? なのに11を出すとか、それもう勝ったも同然じゃねーか!」


 俺がライオットさんと真面目な話をしている間もずっと、我関せずで高い酒をガブガブ飲みながら成り行きを見守っていたグラハムが、思わずと言った様子で口を挟んでくる。


「ふふーん。悪いけどアタイは昔から賭け事が得意なのさ。特にこういう一発勝負にはめっぽう強くてね」


 さすがは飲食ギルドをまとめる肝っ玉姉さん。

 勝負どころの豪運がハンパない。

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