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第47話 ギルマスざまぁ同盟(4)地域の在り方すら変える大提案

 俺の問いかけに、ライオットさんはピンと背筋を伸ばして居住まいを正してから、言った。


「ノースランドに独占的に商人ギルドを構える許可を、エスコルヌ女子爵に出していただきたい。それには親交のあるあなたに頼むのが一番手っ取り早いでしょう?」


 ま、当然そういう話だよな。

 ノースランドは小さな田舎町だから、ギルドがない。


 ゆえにまずは領主であるエスコルヌ女子爵の許可を得て(=税金を納めて)、ノースランドに商人ギルドを開設する権利を確保しなくてはならない。


 そして冒険者ギルドがノースランドに移転するとわかれば、よその地域の商人ギルドが首を突っ込んでくる可能性があった。

 彼らに先んじて権利を抑えておきたいというわけだ。

 今回の一件はその価値があるとライオットさんは見ているのだ。


「堂々と表で交渉しないのは、ギルド移転の密約がバレないように配慮してくれてるって理解でいいんだよな?」


「ええ。交渉が悪目立ちしてサー・ポーロ士爵にギルド移転を勘付かれてしまい、妨害工作などで計画が頓挫してしまえば元も子もありませんからね」


「ほんと、やることなすこと抜かりないなぁ」


「取る必要のないリスクは徹底的に、事前に排除しておくのが私の流儀なんです」

「同感だな。それは冒険者にも通じる考えだ」


「そういうわけですので、ぜひ我々とエスコルヌ女子爵の間に入って暗躍していただきたい」


「わざわざ暗躍とか言うなよな。子供の頃にいたずらして怒られたのを思い出すだろ?」


「ですがとてもワクワクするでしょう?」

「ああ、すごくワクワクしてる」


 俺とライオットさんはどちらからともなくクスリと笑い合った。


「もちろん見返りは用意します。まず冒険者ギルドに対してですが。引っ越しの際に大量の馬車が必要になるはずです。それを我々が全て手配いたしましょう」


「マジか? 武器防具や備品を運ぶ手段をどうしようかと思ってたんだが、商人ギルドが馬車を用意してくれるなら助かるよ」


 備品を買い替えるのは高くつくので、できるだけ持っていきたいが、大きな馬車を借りると高いんだよな。

 それが大量にとなるとかなりの金額になってしまう。


 それを全部、商人ギルドに費用負担してもらえるのは、貧乏ギルドにとっては本当にありがたかった。


「それと移転後もしばらくは、なにかと出費がかさむはずです。軌道に乗るまでは無利子・無担保で好きなだけ貸し付け致しましょう」


「おいおい。無利子・無担保って、返す気がなければ一生返さなくてもいいって意味だぞ? いいのか?」


 まさに破格の条件だ。


「そこは心配していませんよ。私がファンになったSランク冒険者フィブレ・ビレージは、借りたお金を返さずに持ち逃げするような卑しい人間ではありませんのでね」


 ああもう。

 ライオットさんは手練れの商人だけあって、こっちの懐に飛び込んでくるのが上手いなぁ。


「そうまで言われたら、断る理由はないな」


「ご納得いただけたようでなによりです。次にエスコルヌ女子爵に対してですが、街道の付け替えをお約束いたします」


「街道の付け替えを?」


「王都から伸びる街道は現在ポロムドーサを通っており、ノースランドには街道から細い道が伸びるだけとなっています」


「知ってるよ。だからノースランドはいつまで経っても田舎町のまま。大きな荷馬車はすれ違いもできない――なっ!? まさか街道の付け替えって――」


「ええ。我々は新たにノースランド経由の街道を整備します。これにより人と物の流れは大きく変わるでしょう。ポロムドーサを賑わわせてた大動脈はその力を大きく失い、代わりにノースランドへと流れ込みます」


「そんなことができるのか? 大工事だし、金もかかるぞ? 宿場だって新たに整備する必要がある。人手も必要だ」


「元々、この辺りの街道整備や宿場運営は、商人ギルドが資金を供出していました。その費用をそっくりそのままスライドするだけのことですよ。ノウハウもあります」


「――――」


「人手に関しても、新しい冒険者ギルドを建設し終えて暇になった土木ギルドの職人を募ることで、かなりの数を確保できるはずです」


「――――」


 あまりに壮大すぎる計画に、俺は思わず絶句した。


 ライオットさんは冒険者ギルド移転にかこつけて、この地域の在り方すら変えようとしているのだ――!


「先ほど未来への投資と言ったでしょう? 私は本気でこの件をチャンスととらえています。ゆえにあなたに味方するのです。資金面でのバックアップはお任せください。金に糸目は付けません。後でいくらでも回収できますから」


「ははっ、納得したよ」


「納得いただきありがとうございます。これはエスコルヌ女子爵にとっても悪い提案ではないと思います。先方に話を通していただけますね?」


「わかった。俺もあんたの言う新しい未来ってやつが見てみたい」


 俺は大きく一度頷うくと、右手を差し出した。

 ライオットさんが俺の右手を握る。


「交渉成立ですね。エスコルヌ女子爵との交渉を、よろしく頼みます」

「こちらこそ諸々よろしく頼むよライオットさん」


 俺とライオットさんはがっちりと握手をかわしたのだった。

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