第45話 ギルマスざまぁ同盟(2)商人ギルドのギルマス、ライオット
というのも、今日集まった4人のギルドマスターを改めて見れば、
■冒険者ギルド:俺(サー・ポーロ士爵と激しく対立中)
■武器防具ギルド:グラハム(冒険者ギルドと最も密接な関係にあるギルド)
■飲食ギルド:ミネア(サー・ポーロ士爵によって冒険者ギルドの飲食から締め出されていることに大きな不満を持っている)
■商人ギルド:ライオット(サー・ポーロ士爵と真っ向から対峙できる唯一の存在)
ほらな?
明らかに特定の意図が見え隠れしているだろう?
そんな俺の読み通り。
最初は高級料亭の絶品料理を堪能しつつ、キングウルフ討伐のお礼をされたりなど──あのクエストの依頼人は商人ギルドである──いわゆる世間話をしていたのだが。
それが落ち着いたタイミングでライオットさんが、ふと思いついたように、けれど鋭く切り出した。
「そういえば冒険者ギルド移転の計画は、上手く進んでいるようですね」
まさに単刀直入。
寄り合いの時から今に至るまでずっと柔らかい笑みを浮かべ続けるライオットさんだが、その瞳が鋭く光っているのを俺は見逃さなかった。
「急に何の話だ?」
一応すっとぼけてみたんだが、
「ノースランドを治めるエスコルヌ女子爵は、領民からも慕われる良い為政者と評判です。私も同じ評価です。ノースランドでなら今よりももっと自由に、ギルドの運営ができるでしょうね」
まったくもって効果はなし。
ライオットさんは「夏は暑い」とでも言うかのごとく、冒険者ギルド移転が自明の理であるかのように話し続ける。
これはあれだな、かなり正確に情報を掴まれているな。
そしてそれを隠す気もない。
ライオットさんからは腹を割って話そうという意志表示が、ひしひしと伝わってきた。
「2次会のメンツを見てもしやと思ってはいたが、やっぱり今日はそのための密会だったわけだ」
「ええ、まあ。話が早くて助かります」
「なるほど了解。これ以上とぼけるのは無理そうだな。だが話をする前に、まずは犯人探しをやるとするか」
「犯人探しですか?」
いぶかるライオットさんから、俺は隣に座るグラハムへと視線を移した。
「おいグラハム、たしかギルド移転の話は誰にも言わないって言ってたよな?」
移転の話を漏らした犯人はお前だグラハム!
しかしグラハムはムッとしたような顔を返してきた。
「はん! オレは何も言ってねぇっての。疑ってんじゃねーよ、バーカ」
「だったらなんでライオットさんにバレてるんだよ?」
「お前の顔に書いてあるんじゃないのか? 今から庭の池でも覗き込んで来たらどうだ? 今日は満月だからきっとよく見えるぞ」
「書いてねーっつーの!」
「オレも言ってねぇっつーの!」
などと俺とグラハムが仲良くじゃれ合っていると、ライオットさんが苦笑しながら言った。
「グラハムは無実ですよ。これは私が自ら導き出した結論です」
「ライオットさんが?」
「商人というのは、人のいるところならどこにでもいます。そして商人は、物とともに情報を運んでくるんです。商人ギルドのギルドマスターともなれば、それこそ情報はいくらでも上がってきますからね」
ライオットさんはそこで一呼吸、言葉を区切ると、証拠がこんなにもありますと言わんばかりに、右手の指を順々に立てていきながら続きを話していく。
「ノースランドに建設中の巨大な施設。サー・ポーロ士爵と折り合いの悪い冒険者ギルド。賃料が2倍に上がるという話。ノースランド魔獣襲撃事件における、エスコルヌ女子爵とあなたとの過去の繋がり」
「おいおい、まさかそんな昔の事件についてまで詳細を知っているのかよ」
「あの事件は元々、それなりに有名な事件ですからね。記録もたくさん残っています。加えて冒険者ギルドの動きが悪いことが、私に決定的な確信を与えてくれました」
「おっと、最後のはちょっと聞き捨てならないな。俺は普通通りの姿を見せようと、敢えて普通を演じているんだが?」
俺は少しムッとしながら、その指摘を行った。
が、しかし。
ライオットさんは顔色一つ変えずに、俺の問いに明快な答えを返してきた。




