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第44話 ギルマスざまぁ同盟(1)寄り合いと、二次会

 その日も、俺はギルドマスターの定期寄り合いに参加していた。


「今日はイノシシ肉のステーキか。もぐもぐ……美味い! プロが調理するとここまで臭みが消せるんだな。あのクサイことで有名なイノシシ肉が、まるで牛肉のようだよ」


 俺はいつものように飲食ギルド提供の美味い飯に舌鼓を打ちながら。


「知ってるかフィブレ。サー・ポーロ士爵は、今度はカエル税を作るらしいぜ」


「カエル税? なんだその珍妙な名前の税は? っていうかなぜカエル?」


「サー・ポーロ士爵の屋敷の池にカエルが住み着いて鳴き声がうるさいから、水面を叩いてカエルどもを静かにさせるんだと」


「はぁ……?」


「いやいや、マジな話だっての。カエル係に選ばれた奴は一晩、夜通しで池を叩き続けるか、労役を免除してもらう代わりに金を払わないといけなくなるらしい。だからカエル税だ」


「夏になったら池でカエルが鳴くのは、当たり前だろ? むしろ風物詩じゃないか」


「オレに言うなっての。ほんともう、めちゃくちゃだぜ」


 などと、すっかり仲良くなった他のギルドマスターたちと情報交換をする。

 ちなみにこのカエル税、本当に検討されているらしい。


 なんつーか世も末だ。


 それはさておき。

 充実した時間を過ごし、そろそろ寄り合いも終わりというところで、武器防具ギルドのギルドマスター・グラハムが、俺を2次会に誘ってきた。


「おーい、フィブレ。今から内輪で2次会行くんだけどよ。お前も来いよ? 奢ってやるぞー」


 ビールジョッキ片手に、気安いノリで声をかけてきたグラハムに、俺はこの後の予定を数秒思い描いてから、首を縦に振った。


「この後は特に何もないし、いいぜ。なにせグラハムの奢りだしな」


 リーリアには遅くなるかもと言ってある。

 予定の時間までに戻らなければ、俺なしで適当にやっておいてくれるはずだ。


「じゃあ締めの挨拶が終わったら行くぞ」

「どこに連れてってくれるんだ?」


「それは着いてのお楽しみだ」

「もったいぶるなぁ。ま、奢りならどこでもいいけどさ」


 タダより旨い飯はない。

 というわけで、俺は二次会に参加することになった。


 締めの挨拶の後に集まったメンバーは、


・俺

・グラハム

・飲食ギルドマスターのミネア

・商人ギルドマスターのライオット


 の4人。

 かなり珍しい組み合わせだ。


 俺たち4人は連れ立って移動する。


 しかし飲み屋にでも行くのかと思ったら、連れていかれたのはまさかの高級料亭。

 しかも一番奥の完全個室、いわゆるVIPルームに通される。


 俺はあまりこういう店には詳しくないんだが、おそらく1人あたり金貨10枚は最低でもかかるはずだ。


「おいおいグラハム、この店はさすがに高すぎるだろ。奢るって言ってたけど、大丈夫なのか? 無駄遣いしてると、出来のいい入り婿に叱られるぞ?」


 グラハムには甘えっぱなしの俺も、さすがに心配になってくる。

 なんだかんだで世話になってるグラハムに、変な無理はさせたくなかった。


 しかしグラハムはあっけらかんと言った。


「それなら心配はいらねぇよ。なにせ今日は俺じゃなくて、ライオットさんの奢りだからな」


「ライオットさんの?」


 俺が向かいに座った中年紳士に目を向けると、


「ええ、今日は私が無理を言って皆さんをお招きしましたので、そこはどうぞご心配なく。皆さんの分は、私が全て持ちますので」


 仕立てはいいが華美ではない上品な服に身を包んだライオットさんが、にこやかな顔で首肯した。


 別に無理なんて言われてない──どころかグラハムに適当に誘われただけなのだが、今のはただの飾り文句だろうから気にする必要はないだろう。


 しかし高級料亭でこの余裕ぶり。

 さすが商人ギルドのギルドマスターは金持ってんなぁ。


 そんな感想を抱きつつも、同時に俺はライオットさんがこの場をセッティングした理由にも、薄々感づいていた。


 十中八九、冒険者ギルド移転の密約についてだ。

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