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第39話 武器防具ギルドのギルマス、グラハム


 同時に俺は、対外的な活動にも積極的に参加していた。


 密約が漏れていないか。

 サー・ポーロ士爵が異変を察知して、なにか行動を起こしてはいないか。


 そういった情報を、どんな些細なことでも構わないから手に入れるためだ。


 特に重要視していたのは、各種ギルドのギルドマスターが集まる「ギルマス寄り合い」に参加して、情報交換をすることだった。


 ギルマスはそれぞれ独自の繋がり、いわゆる情報網を持っている。


 その中でも最強ギルドと名高い商人ギルドのギルマス・ライオットさんは、サー・ポーロ士爵の動向にもかなり詳しかったりするので、情報交換の場に出ておいて損はなかった。


 寄り合いが始まってすぐ、まずは腹ごなしとばかりに、料理人ギルド謹製の激うま唐揚げ――こいつの前じゃ冒険者ギルドの食堂メシなんて豚の餌に思えてくる――を俺が全力で「討伐」していると、


「おーいフィブレ、最近の調子はどうだ?」


 冒険者よりもガタイのいいムキムキのおっさんが、でかいビールジョッキ片手に。フランクに声をかけてきた。


 冒険者ギルドと数多くの取引をしている武器防具ギルドのギルドマスター、グラハムだ。


 俺が駆け出し冒険者だった頃から武器防具の面倒を見てくれたおっさんで、ギルマスの中でも一番関係の深い、いわゆる勝手知ったる仲だった。


「なんも変わらないよ。相変わらず収支は火の車だ。そっちはどうだ?」


「うちもさ。まったく、領主がサー・ポーロ士爵になってから税金が高すぎて、やってらんねえぜ。新しい税金も次々できるしよぉ」


 グラハムは怒りをぶつけるかのように、7割ほど残っていたビールジョッキを一気飲みで空っぽにすると、「ぷはぁ!」と恨みを込めたかのように息を吐いた。


「それで何か用か? 俺は今、唐揚げを討伐するのに忙しいんだが?」


 マジで美味いんで、いくつかリーリアに持って帰ってあげよう。

 きっと喜ぶだろう。


「いやなに、冒険者ギルドが探していた訓練場の候補地が見つかって、建設が始まったって聞いてな。ノースランドだったか」


「ああ、その件な」


 俺はグラハムなら99.99%信頼できるとは思ったものの、万が一の可能性を考慮して、少しだけ意識の警戒レベルを引き上げた。


「その件な、じゃないだろ? ノースランドは小さな町で、武器防具ギルドがない。ってことは俺らが支店を出す必要があるだろ? だったら話くらいくれてもいいじゃねーか」


「近々、話に行こうと思ってたんだよ。俺もここ最近は忙しくてさ。どうしても時間がなかったんだ」


「忙しい、ねぇ」


「なんだよ。訓練場を移転するんだから忙しいに決まってるだろ? それとは別に、普段の業務も普通にこなしてるんだぞ」


 と、そこでグラハムはチラリと左右を確認すると、声量をグッと落として俺にだけ聞こえるように言った。


「どうもかなり大規模な工事らしいじゃないか」


「訓練場は古今東西、広さがいるものさ。工事の規模が大きくなって当然だ」


 俺もグラハムに合わせるように、声を落として答える。


「ふぅん」

「なんだよ?」


「知ってるか? 工事に使う工具は、武器防具ギルドがほとんど全部作ってるんだ」


「あれ? そういうのは金物ギルドが作っているんじゃないのか?」


「あそこが作ってるのは鍋とかフライパンといった生活用品全般さ。あとは釘も向こうか。ま、包丁やらナイフやら、被っているのも少なくないが」


「へえ、厳密にはそんか区分けだったのか」


「で、だ。それがつい先日、うちのギルドが管理してる在庫という在庫がごっそり、職人ギルドに買われたんだよ。それはもうすごい量が一気にだ」


「嬉しい悲鳴じゃないか。良かったなグラハム。今年の冬は安心して越せるぞ」


 俺はあえて茶化すように答えたのだが、グラハムは乗ってこない。

 声量を落とした真剣な声色で言葉を続ける。


「それが全部ノースランドの建設工事用らしいときた。あれだけの工具、とても訓練場を作るだけに必要な分量とは思えないぜ? しかも追加の発注も入ってる」


 なるほど。

 こういうところからも、勘付くヤツは勘付くわけだ。


 だが勘付いたのが旧知のグラハムだったのはラッキーだったか。

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