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第36話 ◇サー・ポーロ士爵 SIDE◇「最初に聞こえた破滅の足音」

◇サー・ポーロ士爵 SIDE◇


 フィブレとエスコルヌ女子爵との間でギルド移転の密約が結ばれ、その身が破滅に向かい始めたとも露知らず。


 サー・ポーロ士爵は今日も今日とて金勘定と、捕らぬ狸の皮算用に(いそ)しんでいた。


「やはり商人ギルドから搾り取るのは、これ以上は難しいかのぅ。あまり取り立てすぎると、奴らはポロムドーサでの商売そのものを捨てかねん。商人どもは身軽じゃからの。まったく、ままならぬ」


 執務室で商人ギルドへの新・課税案をあれこれ検討しながら、サー・ポーロ士爵はやれやれとため息をついた。


「商人ギルドは大きな拠点も必要とせんし、儲けがないとなればこの街での商売を放棄することもできる。個人単位で活動し、金にがめつく、目端の利くヤツも多い。まったく薄汚い奴らじゃ、奴ら一般商人どもはのぅ」


 商人ギルドは、儲けている金額の割に収める税額が少ないことを、サー・ポーロ士爵は憂いていた。


 が、しょせんは親から引き継いだだけの御用商人上がりということもあり、サー・ポーロ士爵は特に妙案を思いつきはしなかった。


「この街での商売が儲からんと思えば、数日後には隣町で平気な顔で商売をしよる。なにより街へ物資を運んでくるのは奴ら商人じゃからのぅ。これ以上は強気には出れんか」


 自分のことを棚に上げて、金にがめついと商人たちを批判するサー・ポーロ士爵。


 かつて御用商人という特別な地位にあったサー・ポーロ士爵は、一般商人たちの互助組織である商人ギルドを、完全に見下していた。


 御用商人だった当時、サー・ポーロ士爵も商人ギルドには一応、所属してはいたのだが。

 寄り合いや集会などには、ほとんど顔を出したことはなかった。


 なぜか?


 下々の一般商人と、貴族との商売を主に行う栄えある御用商人。

 言ってみれば商人における貴族階級、それが御用商人なのだ。

 一般商人とは身分が違うというのが、サー・ポーロ士爵の考えだった。


(ちなみに他の町と比べて、ポロムドーサでの商売は既にかなり旨味がない状態であり。何か大きな「事件」でもあれば一気に流動化する。そんな状況にあった)


 サー・ポーロ士爵は商人ギルドへの新たな課税を早々に諦め、頭を別のことへと切り替える。

 別というのはもちろん、冒険者ギルドについてである。


「その点、冒険者ギルドはポロムドーサから動きようがないからのぅ。図体がでかいだけのデクノボウよ。いくらでもむしり取れるわ。クックック……」


 次の契約からは賃料が2倍になる。

 それを考えただけで笑いが止まらないサー・ポーロ士爵である。


「もし()を上げればギルドマスターの地位は、ワシの息子の物となる。つまりワシの物じゃ。そして2倍の賃料を払うのならば、ワシの懐はおおいに潤う。どっちに転んでもワシは得しかせんわけじゃ」


 そろそろ金庫を1つ増やさんといけんなぁ、などと。

 サー・ポーロ士爵の頭の中は既に一面、黄金色に染まっていた。


「よそから取れん分は、冒険者ギルドから徹底的に搾り取ってやるわ。ククク……」


 サー・ポーロ士爵は高級なイスにふんぞり返りながら、下卑た笑い声をあげ続けたのだった。



 そしてこれから少しした頃。


 冒険者ギルドの訓練場の移転先がノースランドに決まったと聞いても、サー・ポーロ士爵は特に気にも留めはしなかった。


 たかが訓練場がよそに移ったくらいで何が変わるのだと、うそぶいていた。


 訓練をするのにわざわざ隣町まで行かなければならないのは大変よのぅ(大爆笑)ってなものだった。


 それが最初に聞こえた破滅の足音だったとも知らずに、サー・ポーロ士爵は「変わらぬ日々」をヌクヌクと過ごしていた――


◇サー・ポーロ士爵 SIDE END◇

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