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第34話 3人目の共犯者(1)

「詳細はまだ詰めている途中だが、結論としては2年後の賃貸契約の時に契約更改をせず、ノースランドに移転させるつもりだ」


 正確には1年と9カ月後くらいだが、ほぼ2年と言って構わないだろう。


「2年後……遠いような、でも意外と近いような……」


「多分あっという間だぞ。とは言っても、施設の建設はエスコルヌ女子爵が進めてくれるはずだ。俺たちはそれがある程度形になるまで、ひたすら猫を被って我慢だな」


「この件はもちろん極秘なんですよね?」


「ああ。極秘も極秘。俺、リーリア、エスコルヌ女子爵。この3人だけの秘密にする。絶対に口外無用だ」


 俺は名前を呼ぶごとに、指を1本ずつ立てて、最終的に3本の指を立てた。


「心得ました」


 リーリアは真剣な表情をしながら3本の指が立てられた俺の手を見ると、大きく1度うなずいた。


「当然だが、この件がサー・ポーロ士爵にバレると妨害を受けるだろう。もちろんどこかで気付かれるだろうが――」


「それは『遅ければ遅いほどいい』というわけですね」


「そういうこと。話が早くて助かるよ」


 さすがはシゴデキなリーリアだな。

 理解の早さがハンパない。


 さらにリーリアはこんな質問までしてくれる。


「エスコルヌ女子爵との連絡はどうするんですか? あまり頻繁だと怪しまれますよね? とは言えこれだけの大仕事ですから、連絡をしないわけにもいきません。いろんな問題や修正点が出てくるはずですから」


「新しい訓練場の打ち合わせと現地視察ってていで、ある程度は誤魔化せるはずだ。けど、それもあまりに回数が多いと怪しまれるだろうな」


 ギルドマスターである俺の行動は、どうしても外部に筒抜けになる。

 頻繁にノースランドに通っていれば、サー・ポーロ士爵の耳にすぐに入ってしまうだろう。


 最近でもキングウルフ討伐依頼の内容――相場の3倍という高額だったことも含めて――サー・ポーロ士爵は詳細に把握していた(金のことには本当にガメツイ……)。


「ですよね。そこからサー・ポーロ士爵が不審に思って、搬入資材の量や建設の規模が大きすぎることを調べられたら、ギルドが移転しようとしてることがバレてしまいます」


「建設現場の様子だけは、何をどうやったって誤魔化せないからな。だからこそ、そもそも気付かれないようにしないといけないわけだけど」


「何か対策はあるんですか?」


「まず建設の規模については、エスコルヌ女子爵がついでに別の施設を建設するって話でいくことになった」


「はぁ……」

 リーリアが若干微妙そうな返事をした。


「ああうん、リーリアの言いたいことはわかるぞ。まとめて工事をするのは、どう考えても変だもんな」


「はい。普通は順番に作りますよね。同時進行だと人手が大変なことになっちゃいますから。職人を集めるだけでも一苦労です」


「それでも何も理由がないよりはマシなんだ。行商人が見ているからな」


「……なるほど、そういうことですか。王都からポロムドーサへと行商に来る行商人の何割かは、少し寄り道にはなりますが、街道を外れてノースランドにも立ち寄ります。つまり彼らの目を欺きたいわけですね?」


「そういうこと。商売で各地を回る目の肥えた行商人が見れば、これが訓練場じゃなくもっと大掛かりな建設――つまりギルド本体が入るような大型施設の建設だと即バレする。だからどんな理由でもいいから、とりあえずそれっぽい建前だけは用意しておかないといけないんだ」


「次善の策ということですね。納得できました」


 リーリアがこくんとうなずいた。


「ま、できればもうちょい、話にリアリティを持たせたいところではあるのも確かなんだ。リーリアも何かいいアイデアがあったら教えてくれよな」


「かしこまりました」

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