第33話「えええええええええぇぇぇぇぇぇっっっっっ!!!」
リーリアに起こしてもらった俺は、ギルドマスター執務室にて早速、エスコルヌ女子爵と交わしたギルド移転の密約についてリーリアに伝えることにした。
「まずは心に留め置いてほしいんだが、とにかく驚かずに聞いて欲しい」
「はい、わかりました」
リーリアがこくんとうなずく。
俺は念押しするように言った。
「本当に驚かないでくれよな?」
「はい、驚かないように努力します。どうぞ何でも言ってください」
「じゃあ言うからな? 本当に驚かないでくれよな?」
「わかりました。どうぞ」
これでもかと念押ししてから、俺はリーリアに告げた。
「端的に言うとだな。冒険者ギルドをポロムドーサからノースランドに移転する密約を、エスコルヌ女子爵と交わしてきた」
「ふえ? ギルド移転……? 密約……? ……え? あの、え………………??」
リーリアは俺の言葉の意味を理解しようと数秒固まってから、
「ええええええええええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!」
それはもうものすごい大音声の叫び声を上げた。
「ちょ、おいこらリーリア! 声が大きいってば! 驚くなって言っただろ! しー! しー!」
俺はリーリアの口元を慌てて抑えながら、小声で注意を促した。
「す、すみません! あれだけ驚くなと言われたのに、つい叫んじゃいました」
「ああいや、リーリアの気持ちはよくわかるよ。そりゃ驚くよな。驚くなって方が無理だよな。でもとりあえずいったん、落ち着いてくれ」
驚きでガチガチに強張ったリーリアの肩を軽く揉んであげると、リーリアは気持ちを落ち着けるように「ふぅぅぅ……」と大きく息を吐いた。
「どうだ、落ち着いたか?」
「はい、少しは落ち着きました。でも本当なんですかそれ? エスコルヌ女子爵とギルド移転の密約をしたって」
リーリアが声量を落として尋ねてくる。
「ああ、本当だ。しかも費用は全部向こう持ち。な? いい話だろ?」
俺も同じように声量を落として答える。
ギルドマスターの執務室は壁が厚く、隙間もないので、防音効果が高い。
声を潜めるだけで完全な密室になってくれるのだ。
秘密の話をするにはうってつけだった。
不満の多いこの冒険者ギルド施設で、俺が数少なくいいところとして胸を張って上げられるポイントだ。
「それはもちろんいいお話だと思いますけど。でもギルド本体をそっくりそのまま移転するなんて、あまりに途方もない話でにわかには信じられませんよ」
「普通はそうだろうな。俺だって急に聞かされたら、とても信じられないだろうし」
こんなもん、リーリアでなくたって誰だって驚く。
「それも費用は全部向こう持ちなんですよね? なんだか話が美味しすぎませんか? 大丈夫なんですかこの話?」
そして頭のいいリーリアが不安を感じるのも、もっともだ。
だけどそれについては、俺はもうエスコルヌ女子爵を完全に信用&信頼していた。
「利害関係が一致したのと、俺が過去にエスコルヌ女子爵を助けたことがあったのが大きかったかな」
「ノースランド……フィブレさんが助けた……ノースランド大型魔獣事件ですか?」
リーリアは軽く握った右手を手元に当てながら小さくつぶやくと、その答えを自ら導き出してみせた。
「さすがリーリア、正解だ。あの時助けた子供の一人がエスコルヌ女子爵だったんだよ」
「なるほど。それでその時の恩を返すつもりで、こんな良い提案をしてくれたというわけですね?」
「ああ。でも一番は俺の直感が、この人なら信じられると告げていることだ」
「フィブレさんの直感は当たりますもんね。でしたらもう納得せざるを得ません。これはいわゆるゲームチェンジャーというやつです」
リーリアが真剣な顔でこくりと頷いた。




