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第27話 冒険者ギルド移転の提案(2)

「もぅ、フィブレ様ったら、真面目なお顔でご冗談がお上手ですわね」


 エスコルヌ女子爵は最初こそ、まともに取り合おうとしなかったのだが、


「これは冗談ではありません。俺は本気です」


「フィブレ様……?」


「俺は本気でこの提案をしています。ポロムドーサ冒険者ギルドを、ノースランドの街に移転させる気はありませんか?」


 俺が真剣な顔と声色でもう一度告げると、エスコルヌ女子爵はハッとしたような顔つきになった。


 美しさの中に芯の強さを感じさせる眼差しが、俺をジッと見返してくる。

 俺の真意を見抜こうとするかのように。


 その瞳を、俺も静かに見返し続けた。


 お互いにしばらく無言で見つめ合ってから、エスコルヌ女子爵は静かに口を開いた。


「移転する意思がおありなのですね?」

「はい、あります」


 俺は余計なことは言わずに端的に答える。

 その方がエスコルヌ女子爵にも、移転を決意した俺の意思がはっきりと伝わるはずだから。


「……そういえばサー・ポーロ士爵と冒険者ギルドの関係が上手くいっていないという噂を、耳にしたことがありましたわ。なんでもサー・ポーロ士爵はギルドの要望をまったく聞き入れてくれないのだとか」


 噂などと言ってはいるが、もちろんそれくらいの調べはついているのだろう。

 俺たちに訓練場の用地を提供する話を持ってくるにあたり、付随する周辺情報は当然、事前に調べたはずだ。


 なんならさっきポロっと口にした「冒険者ギルド本体を移転させてくれればいいのに」という言葉も、それらを踏まえたうえで、俺がこの結論に行きつくように誘導するべく、わざと言った可能性まであった。


 ……ま、さすがにそれは考えすぎか。


 俺は既に、エスコルヌ女子爵は信用に足る人物だと認識している。

 少なくとも俺への恩義を感じてくれているようだし、ここまで対等な提案を誠実に出してくれていた。


 その時点で、自分だけが全部ガメようとするウエメセのサー・ポーロ士爵とは正反対だ。


「実際に上手くいっていません。こちらの要望は聞く耳すら持ってもらえず、賃料は王都なみに高額です。さらに次の契約更新でそれを2倍に引き上げると、一方的に通告を受けました。今ですら、我々には自由もなければお金も残らないというのに」


「まさかそのような状況でしたとは。言ってくだされば、わたくし全力ご支援いたしますのに。他でもないフィブレ様のためなのですから」


「いやいや、さすがにそこまでの面倒を見ていただくわけにはいきませんよ」


 特別な計らいを次から次へと提案してくれるエスコルヌ女子爵に、俺は思わず苦笑した。


「ですがそうであれば、移転の話も一気に現実味を帯びてきますわね」


 エスコルヌ女子爵は、軽く握った右手を口元にやりながら思案顔でつぶやいた。


「冒険者ギルドの本施設と訓練場を併設できれば当然、我々は便利になります。またエスコルヌ女子爵もおっしゃっておられたように、大きな経済効果が見込めることでしょう。なにせ大所帯の冒険者ギルドがそっくりそのままやってくるのですから」


「当然、そうなりますわね。わたくしとしてもこの提案は願ったりかなったりですわ」


「建設費はなんとか用意してみせます。全額一括は無理ですが、冒険者ギルドは本来であれば結構な額の収入が見込める組織です。長期的には返済は十分に可能なはずです」


「ええ、ええ。そうでしょうとも」


「ではエスコルヌ女子爵に改めてお願い申し上げます。冒険者ギルドを完全移転させるための土地を、追加で譲ってはいただけませんでしょうか?」


 俺の言葉に、エスコルヌ女子爵は目を閉じてしばし黙考すると、ゆっくりと口を開いた。



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