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第25話 エスコルヌ女子爵(3)

「俺に恩義ですか? 失礼ですが、エスコルヌ女子爵とは初対面――のはずですよね?」


「初対面といえば初対面ですが。実は遠い過去に一度だけお会いしておりますの」


「大変申し訳ありません。ご不興を承知で申し上げるのですが、俺にそのような記憶はとんとないのです」


 必死に記憶をたどってみるが、どれだけ思い返してもそんな記憶は全くなかった。


 というか俺が会ってきた貴族なんてサー・ポーロ士爵の他にはせいぜい数人だ。

 だから貴族に会えば、忘れるなんてことはないはずなんだが……。


「ご安心ください、フィブレ様が覚えていないのも当然ですから」


 困惑しきりの俺に、エスコルヌ女子爵は小さく笑いながら言った。


「と、言いますと?」


「あれはまだわたくしが爵位を継ぐだいぶん前。幼い子供だった頃のことです。当時は隠居前の父がノースランドの領地を経営していたのですが、領内に大型の魔獣が複数体、出没したのです」


 その言葉に、俺の脳裏にとある記憶が蘇った。


「ノースランド大型魔獣事件ですか」


「フィブレ様はもちろんご存じですわよね。なにせ魔獣討伐メンバーのお一人だったのですから」


「そんなことまで、よくご存じで」


 強大な魔獣が複数種、ノースランドの街に現れるという極めて緊急性が高い危険な案件に、当時のポロムドーサ冒険者ギルドが誇る最強パーティが討伐に当たったのだが。


 そのうちの1人が当時、まだ10代半ばにしてS級冒険者となっていた俺だったのだ。


「それはもうよく存じておりますわ。あなたの──“神童”フィブレの活躍は今でも覚えておりますもの」


「え、ええ。まぁ……。ですがそれがどういう関係が?」


 当時の俺はかなり(控えめに言って)調子に乗っていたのもあって、当時のことを思い出すだけでなんともむず痒くなってくる俺だ。


「あの時、フィブレ様は先頭に立って魔獣と戦いましたよね? 複数の大型魔獣を相手に、一騎当千の大立ち回り! 鬼神のごとき強さとはまさにこのことでしょう! そしてバッタバッタと大型魔獣をなぎ倒していく中で、フィブレ様は子供を数名助けました」


「どうしてそこまで詳細にご存じで――あ、もしかして、その子供というのが――」


「はい。その時フィブレ様に助けられた子供の1人が、わたくしだったのです」


 当時の記憶に思いをはせるように、エスコルヌ女子爵はしっとりとした声色でつぶやいた。


「そういえば、助けた子供たちの中に領主の娘がいたと、晩餐会の時にチラッと聞いたような……」


 魔獣を討伐した後、先代エスコルヌ子爵が盛大な晩餐会を開いてくれたのだが。


 当時の俺は堅苦しい会がとにかく苦手だったため、少しだけ顔を出して美味しい晩餐をたらふく食べると、後は部屋に帰って朝までずっと寝ていたのだ。


「わたくし、フィブレ様に直接お会いして感謝の言葉を伝えたかったのですが、どうしてもお姿を見つけることができなかったのです」


「あー、いえ、その。実はあの時は少々込み入った事情で、席を外しておりまして……」


 真剣に感謝を伝えようとしていた相手に、「面倒だからサボって寝ていた」と答えるのがなんともバツが悪かった俺は、つい曖昧な言い訳を口にしてしまう。


「ふふっ、それは仕方がありませんわね。Sランク冒険者ともなれば、それこそ息を着く暇もないのでしょうし」


「え、ええ……まぁ……」


 すごくいい意味で勘違いさせてしまって、本当に申し訳ありません。

 ただ面倒くさくて寝ていただけでした。


「そういった恩義もありまして、今回フィブレ様がお困りになられているというお話を耳にしたわたくしは、なんとかご助力できればと思った次第なのです」


「それが理由なのですか? 個人的な恩義のみで、ここまで良くしてくれると?」


 俺はいろいろと耳の痛い昔話から、現代の話へと話題が変わったのを察知すると、これ幸いと話に乗っかった。

 俺は未来志向だからな!

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