第21話 クエストの目的を語り聞かせるギルマスな俺
◇
無事に討伐クエストを終えた俺たちは、行きしに馬車を止めた街道脇へと向かった。
緊張感に包まれていた行きとは違い、クエスト完了後ということもあって、面々にはまったく緊張感はない。
俺とリーリアも並んで歩きながら絶賛、世間話中だ。
「やっぱり身体を動かすのはいいなぁ。正直、俺はデスクワークよりも前線でバリバリクエストをこなす方が向いてるよ」
「そんなこと言わないでください。フィブレさんくらいの実績がないと、みんな言うこと聞いてくれないんですから」
「わかってるさ。冒険者の界隈ってのはとかく、ランクと実績がモノを言うからな」
冒険者の世界じゃ、冒険者としての格が何よりモノを言う。
誰も事務能力なんてものに目を向けはしない。
それがこの業界を支配する絶対の価値観だ。
だがそれも仕方のないことだった。
命を懸けてクエストをこなす冒険者の気持ちをわかってやれるのは、唯一冒険者だけなのだから。
現場の苦労も、命を張る危険も知らないやつの下には、誰も付きたがらないのは当然だろう。
「そうなんですよねぇ」
「ま、そういう意味じゃSランクで、ドラゴン討伐の実績がある俺がギルドマスターをやるのは当然の流れだよな」
なんて話をしていると、
「フィブレさんがさ、一瞬でキングウルフを何体もまとめて仕留めてただろ? ボス・キングウルフを倒したのもフィブレさんだ。俺たちはパーティで1体ずつ囲んで、少しずつ数を減らしただけ。もしかして俺たち、いらなかったんじゃないか?」
「あー、俺もちょっと思った」
「俺も実は――」
今回参加した3つのパーティのうちの1つの面々が、こんな会話をしているのが聞こえてきた。
「フィブレさん。少しまずいかもです」
「わかってる。耳にした以上は、訂正して納得させてやらないとな」
俺はリーリアから離れると、さっきの会話をしていたパーティの所へと行って、話しかけた。
「さっきの話だが、ちょっと違うぞ」
「あ、フィブレさん――でも」
反論したげなパーティリーダーを、俺は両手で「どうどう」と制すると、言った。
「まぁ聞いてくれ。今回のクエストの目的は、人里で家畜を食べることを知ったキングウルフの群れに属する個体を、全滅させることだよな?」
「はい。そうですけど……」
「ぶっちゃけ俺一人じゃ、1体も逃がさずに全滅させるのは難しかった。だからこそ、今回の討伐隊を編成したんだ。目的はあくまで全滅させることだからな」
「あー、それはたしかに……」
「クエストってのは1人の力じゃままならないことが多い。だから俺たちはパーティや討伐隊を組む。今回もメンバー全員の力があってこそのクエスト成功なのさ。なにせ全滅させることが必須条件だからな」
「あ――」
「だから胸を張って言ってやれ。『俺はAランク魔獣キングウルフの群れを全滅させたんだ。どうだ、すごいだろ!』ってな」
柄にもなく真面目に語ってしまった俺は、最後は少しだけ茶化し気味に言うと、パーティリーダーの背中をポンポンと軽くたたいてやる。
「そ、そうだよな! 俺たち、キングウルフを討伐したんだもんな!」
「そうさ。言っとくが、キングウルフはそうは遭遇しないレアな魔獣だ。討伐実績としては、なかなかのモンだからな?」
「あ、ああ! ですよね!」
ふぅ。
上手くいった。
すっかり元気になってくれたみたいだ。
「ま、そうは言っても俺のドラゴン討伐実績ほどじゃないがな?」
「あのですね、フィブレさん。さすがにドラゴン討伐なんて芸当は、フィブレさんにしかできませんよ。命がいくつあっても足りません」
「だよなぁ。俺ってすごいよなぁ。あの時もさ、Sランク冒険者たちが集まってたってのに、みんなドラゴンにビビってやがるんだよ。そんな中、俺だけは違ってな――」
すっかり元気になったパーティメンバーたちに、俺の一番の武勇伝を熱く語って聞かせてから、俺はリーリアの隣へと戻ったのだった。
「お疲れ様でした。さすがはフィブレさんですね。すっかりギルドマスターが板についてます」
「ま、こういうメンタルケアって意外と大事だからな。俺も慣れたもんよ。せっかくいい仕事をしてくれたんだ。自信にしてもらわないとだし」
この経験を糧に、ゆくゆくはAランクパーティになってくれたら、冒険者ギルドとしてもありがたいわけだし。
――なんて、管理職らしいことを思う俺である。
「最後はずっと、自慢話をしていただけでしたけどね? フィブレさんのドラゴン討伐の話、うちのギルドのメンバーなら100回は聞かされてますからね?」
「暴れドラゴン討伐なんて誰にもできないことをやったんだ。自慢くらいはするだろ」
自信満々に答えた俺に、
「ふふふ、それはそうです」
リーリアがくすくすと楽しそうに笑った。
ともあれ。
こうして俺たちは、キングウルフ討伐クエストを完遂したのだった。




